「前設管試掘工事」とは何か?
水やガスを各家庭に供給する「水道管」や「ガス管」は、月日と共に劣化していく。地下に埋めてある管は、当然、新設管に取り換える必要が出てくる。
しかし、いきなり管を掘り起こしても、障害物や新設管の妨げになる既設管が出てきた場合、設計を見直す必要が出てくる。
そうならないため、事前に試掘工事を行って、既存の管の位置や深さを調査することを「前設管試掘工事」と言う。
試掘工事が敬遠される理由
この試掘工事は、施工管理業務や道路舗装版の本復旧など、手間が多い割にはデメリットが多いので、工事を請け負う業者が少ないのが現状だ。
具体的なデメリットとしては、管が図面通りに出てこなかった場合、予定よりも工事が長引いてしまうことが挙げられる。
また、万が一、管を裂いてしまった場合、多大な損害を被ってしまうこともある。さらに業務停止のおそれもあるし、工事保険に入っていたとしても利益がなくなる場合もある。
試掘工事で予定箇所に管が出ない!
試掘工事では、バックホーを使って掘削を進めていくのだが、管を裂かないように相当な神経を使う。しかも、試掘工事に用いられる図面は、昔のデータによるものが多い。
図面上では、管径のセンターから土の被りや、道路の側線までの距離を使って位置を示していても、その後に道路舗装版の工事などが行われていた場合、路面の位置がずれてしまうため、管の位置が正確に分からない事がよくある。
実際、試掘工事で「予定箇所に管が出ない」という事態は頻発する。そして、こうした試掘工事においても、確実に利益を出さなければならないのが悩みだ。
そこで、利益を出すために、必ず実践すべきルールがある。
試掘工事の作業効率をアップさせる「たった一つの方法」
試掘工事で必ず実践すべき事とは、ガスや水道など、それぞれの管の専門担当者を、工事に立会させる事だ。
土木施工管理技士はよく水道管の試掘調査を請負うが、正直、水道やガスは担当者がついてくれていた方が早く施工が進む。
例えば、水道の管の位置をベテランの専門担当者はマンホールなどの位置から、あり得ないと思われる箇所を消去法で消していって、試掘場所を何箇所かに絞ってくれる。
試掘工事の経験者であれば、これがいかに助かることか分かると思う。通常、予定の掘削深に近づいてきたら、バックホーの爪で管を裂いてしまうのを防ぐため、手堀で管を探していくので、試掘箇所を絞ってもらえば、作業員の負担も減り、尚且つ作業の効率も上がるというわけだ。
NTT配線の管をピンポイントで見つける方法
ガスや水道管以外に、NTTの配線が通っている場所もある。これを切ってしまうと厄介で、何億円という損害が出る。
かといって、こういった配線系の管は、掘削深がかなり深いところに設置してあるので、慎重に作業しすぎても莫大な時間を使ってしまう。
しかしNTTの担当者は、ピンポイントで配線の場所を探せる探知機を持っている。そういった機械を使って位置を示してくれることによって、安全に試掘を進めることが出来る。
土木施工管理技士に違った視点でアドバイス
やはり専門の担当者は、その分野に関してかなり的確なアドバイスをしてくれる。
ガス管などはクッション材を必ず敷いているので、スコップを使って探っている時でもクッションが出てきたら「その辺で出るよ」などのアドバイスをくれる。
水道の場合だと、昔の水道管の設置はクッション材を使用してないことも多いらしく、ガス管などが一本出れば、そこから設計上問題ないであろう試掘場所を示してくれる。
土工の専門である土木施工管理技士にとっては、普段とは違った施工方法やアドバイスも聞けるので非常に勉強になる。
試掘工事の掘削を必要最小限に抑える
長年、色々な現場を経験した業者の施工者なら、試掘工事でも難なくこなしてしまうかもしれない。しかし私の経験上、専門の担当者がいたほうが、作業効率が格段に上がり、デメリットを最小限に抑えられることは確かだ。
試掘工事は管を探し出すことが目的なので、必要最小限の掘削で済めば、それだけ本復旧や仮復旧にかかる材料代も抑えることが出来る。考え方は人それぞれだろうが、専門家の力を借りたほうが、確実に利益の出る工事にできると私は確信している。