「ボクだけに優しく、他のオッサンは血まみれ」にする親方と、危機一髪で逃げたウブな見習い職人

190センチ、100キロ、クマのような親方

私が建設業界に入ったときは、ブラック企業なんて言葉は存在しなかった。

そもそも労働環境がブラックなのは当たり前。ましてや建設業であればなおのこと。建設業界は、よしもとの某芸人が不倫の真偽を間接的に表現したオフホワイトですらホワイトに見えるほどだ。

私が建設業界で働き始めたとき、職人の見習いのようなことをしていた。その時の親方が色んな意味でヤバいやつだった。体はデカくて身長は190センチ、体重は100キロは余裕であるような人。見た感じは熊そのものだった。

この親方は初対面の時はにこやかに「おう、よろしくな」と言ってきた。「見た目のわりに結構照れ屋なのかな」と思った。

だが、この親方のヤバさは時を重ねるごとにより強く感じることになるのだった。


血だらけのおっさん

ある朝、会社の事務所に行くと、一緒に現場に行くおっさんが血だらけになっていた。そのおっさんも血だらけなのに現場に行こうとしてる時点でどうかしているんだが。

私はどうしていいか分からず、「大丈夫ですか?どうしたらいいですか?」と聞いた。

だが、本人は「大丈夫。こんなこと過去にもあったんだ」と答えた。

「ちなみに、その血はどうしたんですか?」と聞いてみた。人間、パニックになると変に冷静なことを聞くもんである。

すると、おっさんは「親方にやられた」というのだ。

親方はどうもおっさんの遅刻癖が治らないことに痺れを切らして、ぶっ飛ばしたらしい。ヤバい世界である。ブラックどころか、暴力が蔓延していた。

まぁ、40代後半なのに遅刻癖が治らない、そのおっさんもおっさんでやばいのだが。


親方の秘密

なんだかんだで、私は親方にぶっ飛ばされることもなく数か月が経った。

ある時、でかい現場が出てきたので、親方が過去に一緒に修行し独立した仲間たちと現場を施工することになった。

親方の仲間たちはすごくフレンドリーで、親方のように人をぶっ飛ばしたりするような人たちではなかった。それだけで安心だった。

そんなある日、親方が別のエリアで仕事してるときに、親方の仲間の一人から恐ろしいことを言われた。

「大丈夫か?お前、アイツと○○○してないよな?」

そんな言葉、冗談ですら言わない言葉である。

自分もさすがに「えっ?」と聞くと、「アイツ、前からそういう噂があんだよ。気に入った男の子を狙うって。気をつけろよ」。

気を付けるって言ったって何ができんだよと思いつつも、思い返すとそういう言動があった。20代前半の私は背筋が凍ったのを今でも覚えている。

しばらく悩んだが、一か月後に辞めることにした。まさにプリズンブレイク状態である。

あの親方は、今も元気にしているのだろうか。

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長い間、建設業界で働いてきました。閉ざされてあまり多くの人に伝わらない建設業界の実態をお伝えしたいと思います。
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