左から土木写真部・熊本支部長の阿部成二さん、八代白百合学園高校3年の池邉奈央さん、同3年の伊藤愛子さん、土木写真部・福岡支部長の松永昭吾さん

現役JKと土木写真部が禁断コラボ! “被写体”としての土木の魅力とは?

現役JKが撮る土木写真

以前、土木写真部を率いる岡部章さんについて書いた。この土木写真部が、熊本県八代市で第7回目となる写真展「NO DOBOKU,NO LIFE.Ⅶ 〜熊本の誇れる土木構造物~」を市立図書館で開催(8月16日〜9月21日)している。

今回の写真展では、地元八代白百合学園高校の写真部と禁断のコラボを敢行。ふだん土木と縁のないであろう女子高生による土木構造物の写真が並んでいる。

彼女らの目に土木構造物はどのように見えているのか。JK(女子高生)が撮る写真の被写体としてアリなのか?

土木写真部・福岡支部長の松永昭吾さん(株式会社共同技術コンサルタント)、熊本支部長の阿部成二さん(国土交通省九州地方整備局立野ダム工事事務所)が、八代白百合学園高校3年の池邉奈央さん、伊藤愛子さんと対談した。

土木を知ってもらうには、資料より写真を見せたほうがいい

大石(施工の神様ライター)

今回、土木写真展で八代白百合学園とコラボした経緯は?

阿部さん(土木写真部・熊本支部長)

もともとは土木学科のある工業高校や大学の学生さんをターゲットにして、リクルーティングを含め、いろいろとアプローチをしていました。ただ、「こういう仕事をしています」という話だけでは伝わらない部分がありました。

そんなとき、土木写真部という存在を知り、共感を覚えたので、写真という切り口でなにかやってみようと考えました。

建設業界は、土木が生活の安心安全を支えているという事実について、国民の方々にあまりご理解いただけけていないところがあります。そういうところをもっと知ってもらいたいという思いがありました。

そこで、関係資料をお見せしながらご説明するより、土木に関する写真を見ていただき、いろいろと感じていただくほうが有効ではないかと考えたわけです。

写真を見た人がなんらかの感動を覚えれば、被写体である土木構造物に対する理解、愛着も深まるのではないか。これをきっかけにして、土木自体への興味も深めていってもらえるのではないかと考えました。

大石(施工の神様ライター)

池邉さんと伊藤さんは、土木構造物の写真を撮ったことはありましたか?

池邉さん

私が写真を始めたのは高校で写真部に入部してからですが、当初から身の回りにあるモノとして、土木構造物などの写真は撮っていました。

伊藤さん

私もそうです。

大石(施工の神様ライター)

今回の展示では何を撮ったんですか?

池邉さん

私は、競技場で鷹匠さんが害鳥対策をやっているところを撮りました。

伊藤さん

私は熊本城の復興の現場です。

風景としての土木構造物というアングル

大石(施工の神様ライター)

土木構造物の被写体としての魅力は?

池邉さん

私の場合、まちを歩いて被写体を探すことが多いのですが、そこで働いている人を含めたその場の環境、雰囲気、歴史などをすべてを一枚の写真に入れることを心がけています。

そういうものがうまく入ったと感じる土木写真が撮れたときに、一番喜びを感じます。

池邉奈央さんの作品

松永さん(土木写真部・福岡支部長)

まちで写真を撮ると、土木構造物はどうしても入っちゃうよね? 土木構造物は、写真を撮ると自然に入っちゃうモノということかな?

池邉さん

はい、そうです。まちの写真を撮ると、土木が写り込んでる(笑)。

大石(施工の神様ライター)

伊藤さんは?

伊藤さん

私は、モデルを用意して撮ることが多いです。今回、長崎県川棚の魚雷発射試験場跡で撮ったのですが、モデルを入れました。

伊藤愛子さんの作品

松永さん(土木写真部・福岡支部長)

人も暮らしもなくなっているところにモデルさんを置くって良いですね。

伊藤さん

作り込むのが楽しいです。

松永さん(土木写真部・福岡支部長)

大きなクレーンだけの写真とかは撮らない?

伊藤さん

撮ります。

松永さん(土木写真部・福岡支部長)

僕なんかは「ザ・土木」という写真という感じがするんだけど。

阿部さん(土木写真部・熊本支部長)

そこがわれわれとはちょっと違うんでしょうね。僕なんかが土木構造物を撮ると、その機能美を撮ろうとするんですよね。機能美が最も現れるアングルで、「どうだ!」という風に。

でも、学生の皆さんにとっては、土木構造物は背景の一つなんだよね。背景としての土木構造物が持ついろいろな情報を活かして、一枚の写真で物語をつくろうという考えがあるような気がします。学生さんの写真には、ある種の余裕感があるように思います。

松永さん(土木写真部・福岡支部長)

ふだんはどういうのを撮ってるんですか?

池邉さん

私は自然を撮るのが好きです。空や雲、緑とか。川辺に降りて、下から水の流れる感じを撮ったりしています。

同じ写真愛好家同士、意気投合して話し込む

大石(施工の神様ライター)

学生さんの写真を見てどう感じましたか?

阿部さん(土木写真部・熊本支部長)

さっきもちょっと言いましたが、僕らが良いと思うのとは違う視点、ポイントで撮っていると感じました。たんに土木構造物だけを撮るのではなく、暮らしや自然を含めたトータルな風景を撮っていると思うんです。

これは僕らにはなかった感覚です。逆に、そういう写真の方が心地よく感じました。「立ち止まってよく見てみよう」という気になる。「みなさん、さすがだなあ」と感心しました。

土木の人間の立場から言うと、背景に写った土木構造物にちょっと興味を持ってもらった上で、今の調子で撮り続けていってもらえれば良いなと思っています。土木の魅力を伝える代弁者になってもらえればという思いがあります。

池邉さん

写真を撮るときに、土木構造物が入ってしまって、「この部分は良いけど、ここは入って欲しくない」と思うことはあります。

阿部さん(土木写真部・熊本支部長)

それは僕もある。

池邉さん

ただ、このパーツがないと、構造物全体が成り立たないしと思って、「やっぱり入れないと」と思い直すことはあります。


JKに工事現場はどう見えているか

松永さん(土木写真部・福岡支部長)

工事現場の写真を撮りたいと思わない? 人いっぱいいるんだけど。

伊藤さん

思います。

松永さん(土木写真部・福岡支部長)

立野ダムの現場って、いろいろなモノが動いているので、面白いと思うよ。

阿部さん(土木写真部・熊本支部長)

じゃあ撮りましょう。決まりですね(笑)。

池邉さん

はい。

伊藤さん

はい。

松永さん(土木写真部・福岡支部長)

僕らが撮るダム現場の写真とどう違うのかすごく楽しみです。たぶん全然違うと思う。

阿部さん(土木写真部・熊本支部長)

ダムの現場ではけっこう大きな機械が動いていたりしていて、僕らはそっちを撮るんだけど、そこじゃないかもね。

僕らはなんにも感じない工事の道具とか、看板を撮るかもしれませんね。若い人にダムの現場はどう映るのかは、見てみたいです。

大石(施工の神様ライター)

立野ダムの現場には女性の技術者がいるんだけど、建設現場で女性が働いているって知ってた?

池邉さん

知らないです。

伊藤さん

知らないです。

大石(施工の神様ライター)

建設現場で働く女性は、被写体としてどうですか?

池邉さん

スゴく魅力を感じます。「撮りたい」って思いますね。

阿部さん(土木写真部・熊本支部長)

ぜひ撮ってください(笑)。

写真を通じて土木をちょっとでも元気に

大石(施工の神様ライター)

土木写真展の今後の展開は?

阿部さん(土木写真部・熊本支部長)

写真部のある高校はいっぱいあると思いますので、積極的にコラボしたいという思いはあります。

写真というツールを使った新しい情報発信によって、土木の世界がちょっとでも元気になれば良いですね。志の高いリクルーティングにもつながれば最高ですよね。

大石(施工の神様ライター)

これからも土木の写真を撮りたい?

池邉さん

撮りたいです。

大石(施工の神様ライター)

例えばどんな写真?

池邉さん

高速道路の下、橋脚を撮りたいです。

松永さん(土木写真部・福岡支部長)

高架下ばっか撮ってる写真家もいるよ。

池邉さん

え、そうなんですか?

伊藤さん

私は工事中の現場を撮りたいです。「働く姿コンテスト」という全国の高校生コンテストがあるので、そこに出せる写真を撮れればと思っています。

大石(施工の神様ライター)

土木写真部は部員を募集中らしいんですが、どうですか?

池邉さん

(笑)。ふつうに生活していたら撮れないところの写真を撮るのはスゴく楽しいことだと思うので。

伊藤さん

(笑)。

阿部さん(土木写真部・熊本支部長)

土木写真部は、自分の撮りたい写真が撮れる集まりですので、ぜひ!
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基本的には従順ですが、たまに噛みつきます。
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