図面書きでは、施工管理技士試験を受験できない
新年が明けて少しすれば、1級土木施工管理技士試験の受験申込時期がやってくる。2020年度は2月末から受験申込書の販売開始、3月中旬から下旬の間に申し込みとなるようである。早い人はもう準備を始めているだろう。
ところで、試験を受験するには業務経歴が必要である。施工管理技士にふさわしいと思われる役割・業務内容を用意しておかなければならない。ゼネコン勤務の技術者であれば現場で工程管理や品質管理などに日常的に関わるため、施工管理技士受験に必要な業務経歴は十分に用意できるはずである。
ところが、派遣のCADオペレーターとなるとそうはいかない。たんなる図面書きでは経歴とみなされないからだ。
以前問い合わせたことがあるのだが、施工図作成業務も経験に入るようで、工程管理や品質管理に関わる図面作図であれば経験とみなしてよいと聞いたことがある。ということは、上司や同僚から指示されているだけでは経験とならない点に注意が必要である。
ところが、そんなただの図面書きとして現場事務所に勤務していたあるCADオペレーターが1級土木施工管理技士を受験し、合格したのだ。
「たんなる図面書き」が現場の品質管理に従事
この人はもともと土木は素人で、その現場事務所が初めての土木の仕事であった。CADや図面に関する知識はあり図面も読めるのだが、土木の基礎知識はゼロ。なので、最初はたんなる図面書きとして現場に勤務していた。
ところが、この現場の一部職員(ゼネコン社員)は、とても無責任なヤツだった。現場で作業を見ることはするものの、検査資料や立会資料は自分で用意せず。そのため何を検査するのか、基準値は、といったことをまったく理解せずに監督員の立会を受けていた。立会に必要な資料や検査結果の資料はさきほど紹介したCADオペさんがすべて引き受けていたのである。
このCADオペさんは、出来高測定に必要となる図面や出来高測定の結果も作図していた。さらに、現場からの問い合わせにも回答ができるようになっていた。
掘削の床付け高さについて指示を出したり、擁壁の寸法について図面との差異を確認したり。さらにはどの工事がどこまで進んでいて、あとどれくらいの数量が残っているのかまでも把握し、問い合わせに回答したり指示を出すようになっていた。
ゼネコン職員よりも早く1級土木施工管理技士に!
このCADオペさんが現場に来て何年か過ぎたころ、現場所長がCADオペさんに土木施工管理技士の受験を勧めた。
CADオペさんは遠慮していたが、現場での業務経験年数が所定の年数に達していることを確認の上、モノは試しということで受験を申し込んだようである。本人は合格するとは思っていなかったようだったが、学科試験は合格。その後の実地試験も合格を果たし、1級土木施工管理技士となった。
一方、同時期に配属されてきたゼネコン職員は不合格となった。それも何回か連続で不合格となったとのこと。少し意外だったが、その職員はいつも無責任なことばかりしていたので、当然といえば当然だった。
CADオペさんは、図面書きをしながらも進捗管理の資料をまとめたり出来高測定に必要な図面をまとめたり、あるいは資料を基に出来高計測に必要な情報を現場の職員に伝達したりアドバイスをするようになっていた。知らず知らずのうちに、施工管理に必要な知識やスキルが身についていたのである。
施工管理技士は、先々の工程を見据えながら必要な資料をまとめたり情報を整理し、計画を立てて職長や作業員に伝え、所定の品質が確保されていることを確認しつつ進捗を見ることが仕事である。
しかし、一部では工程管理や品質管理を怠り、職長と化しているゼネコン職員がいる。計画を立てるわけでもなく、工程管理をするでもなく、ただ上から指示をされるのを待ち、指示が来たら職長や作業員に伝えるだけ。
一方で、今回紹介したCADオペレーターのように責任をもって仕事に取り組み、研鑽を積む方もいる。私はこういう方をいつも尊敬し、見習っている。