電気保安業界で働くために必要な二つの条件
電気保安業界の入門編ということで、前回は電気保安業界の超高齢化についてお話しました。今回は「生涯働ける電気保安業界で仕事をするためにはどうすればいいのか」についてお話いたします。
電気保安業界で働く際に必要な条件ですが、二つ必要になります。
一つは、「電気主任技術者免状」。そしてもう一つは、「実務経歴」です。
この二つの条件をクリアーすれば、保安業務従事者か電気管理技術者として働くことが許されます。
電気の資格でも難関な部類に入る「電気主任技術者」と、条件をクリアーしている職場でしか実績にならない「実務経歴」。この二つがとても厄介なため、従事している人がとても少ないのが電気保安業界の特徴です。
中でも、特に厄介なのが「実務経歴」なんです。
電験一種よりも厄介な実務経歴
実務経歴の話の前に、電気主任技術者の合格率を知ってますか?
一番簡単な第三種電気主任技術者(電験三種)で、年度によりますが10%前後になります。
最難関の第一種電気主任技術者(電験一種)ですと、一番低いときで1.5%という年度がありました。
この合格率の低さよりも厄介と表現した「実務経歴」とはどういうものなのでしょうか?
この実務経歴というのは、簡単に言うと500V以上の工事、維持、運用を監督指導する業務を、
- 第三種電気主任技術者(電験三種)では5年以上
- 第二種電気主任技術者(電験二種)では4年以上
- 第一種電気主任技術者(電験一種)では3年以上
の経験を積むと、実務経歴として認められます。
このように、実務経歴の条件を書き出すと、意外と簡単に見えるのですが・・・。問題は、”実務経歴の実績を積める職場がものすごく少ない”のです。
ちなみに、業務経歴は下記のとおり、”工事”か”維持・運用”で積むことになります。
1.工事で実績を積む
一般的な電気工事では実務経歴は積めません。500V以上となると、必然的に高圧以上の工事となります。
電力会社の送電線などの工事ばかりしているのなら良いのですが、高圧の工事となると通常はスポットばかりの工事ばかりだと思います。
ですので、こうした工事を合計日数を1,800日以上やりましたという実績(電験三種の場合)と、その実績を認めてもらえるための書類を提出するのはほぼ不可能に近いです。
2.維持、運用で実績を積む
日本には高圧で受電している一般用電気工作物は、数十万台あると言われています。
そのほとんどが、わたくしたちのような外部委託で維持、運用している所がほとんどのため、主任技術者を立てて維持、運用している事業所は少ないです。そのため、そもそも実務経歴を積める職場が多くないんです。
どこで実務経歴の実績を積めばいいのか?
それでは、”どこで”実務経歴の実績を積めばよいのでしょうか?
1.電力会社
何といっても、電力会社に勤めるのが一番手っ取り早いです。
主任技術者の資格も認定で取れますし、何よりも高圧以上の工事から発電所を代表とする維持、運営をしているので、実務経歴を積むにはもってこいなのが電力会社となります。
2.電気保安法人
電気主任技術者の資格を取得して、電気保安法人などで実績を積むのもメジャーとなっています。
特に、保安協会でお客様の設備を外部委託して、維持をするというのも実務経歴として認められますので、これも王道かなと思います。
3.大規模工場での専任の電気主任技術者
こちらも実務経歴を積むことはできるのですが、上記から比べると圧倒的に少ないかなと思いますし、大規模工場ですと、希望通りに電気の部署に配属されない場合も多いと聞きますので、上記の二つから比べると少ないのかなと思います。
4.太陽光発電所などの再エネ関連施設
こちらは、近年一気に増えてきた感じがあります。おかげで、業界で第二種と第一種主任技術者不足がかなり問題となりました。
しかし、こちらも大規模な発電所であっても少人数で見ているなど、実務経歴を積めるような場所ではないかなと思います。
・・・このように私たち電気保安業界は、ルールを知らないといつまでも携わることができません。
その一方で、そのハードルの高さ故、一度資格や実務経験を取得してさえしまえば、一生涯にわたって働くことのできる業界です。