中田 祐利花(なかた・ゆりか)さん(JFEエンジニアリング株式会社 社会インフラ本部 橋梁事業部 建設部 第一工事室)

中田 祐利花(なかた・ゆりか)さん(JFEエンジニアリング株式会社 社会インフラ本部 橋梁事業部 建設部 第一工事室)

“マイルドな雰囲気が好き” 入社3年目のドボジョが語る「仕事の喜び」とは?

今日もひたむきに現場と向き合う1人のドボジョ

千葉県浦安市内のJR舞浜駅北口前(東京ディズニーランドの反対側)では現在、歩道橋架橋工事が行われている。

北口前にはすでに舞浜歩道橋があるが、駅を利用する人や自転車の通行量が多く、特に通勤・通学時間帯には現在の歩道橋が非常に混雑してしまい、通行に支障をきたしているところであった。

また、地元からの改善要望もあり、このたび、国が新たな並行歩道橋の整備に着手した。

この歩道橋架設現場には、ドボジョがいる。JFEエンジニアリング株式会社(本社:東京都千代田区)の中田祐利花さんだ。

当然面識はなく、入社3年目という情報しかなかったが、橋梁メーカーの現場で働いているということは、「きっと骨のある女性に違いない」と勝手な思い込みを抱きつつ、いろいろ話を聞いてきた。

取材には、現場所長の片山博司さんにも加わってもらった。

「橋の施工をやってみたい」 きっかけは大学院での研究

――土木の世界に入った理由は?

中田さん なんとなく大きな構造物が好きだったので、大学は土木学科に進みましたが、とくに具体的になにをしたいというのはありませんでした。

ただ、在学中に東日本大震災が起きたので、地震工学を含め、「土木の世界でなにかやってみたい」という気持ちではいました。

――なんとなく土木学科に入った感じ?

中田さん そうですね。祖父が建築会社をやっていたので、それもあってなんとなく土木学科に進みました。

――研究室とかは?

中田さん 大学院ではメタルの橋の耐荷力の基準を推定する研究をやりました。この研究をやったこととで、「橋の施工をやってみたい」と思うようになりました。

――なぜ施工に興味を持ったのですか?

中田さん 就活当初は、大学の研究を続けたかったので、研究所で研究職に就きたいと考えていました。研究することは今でも好きですが、「施工しやすい技術」の研究には、「実際に施工を経験する必要があるな」という思いがあり、橋梁メーカーを志望するようになりました。

JFEエンジでは、施工だけでなく、設計、研究など、さまざまな業務に挑戦でき、スキルアップにつながると思い、入社を決意しました。

――新築と改築どちらがやりたいというのはありました?

中田さん 新しく橋を架ける仕事もやりたい気持ちはありますが、どちらかと言えば、維持管理に興味がありました。

入社3年目で6現場、まだまだ勉強の日々

――入社後はどんな感じですか?

中田さん 今入社3年目ですが、現在の現場が6現場目です。入社1年目から会社の方針もあり、多くの現場を経験したので、3年目としては多いかと思います。

――どんな現場に行きましたか?

中田さん 新設橋梁の架設現場が多かったのですが、架設工法はそれぞれ異なっていました。地上からクレーンで橋桁を架ける工法、橋桁を架ける場所の前後で繋いで少しずつ送り出す工法、繋いだ橋桁をドーリー(自走多軸台車)に載せてリフトアップする工法の現場に行きました。

短期間しかいなかったので、それぞれの現場で、ちょっとだけ作業に関わった程度でしたが。

――場所は関東近辺とか?

中田さん いえ、最初の現場は岐阜県の大垣市内の現場でした。仮設物を返却する際の運搬管理を担当しました。その後は名古屋や静岡の現場を回りました。

――最初の現場はどうでした?

中田さん 最初は、自分がなにをすれば良いのかわからない状態でした。わからないことは先輩や職人さんに教えてもらいながら、一つひとつ仕事を覚えていきました。みんな優しい人ばかりで、良くしていただきました。

――今の現場はいつから?

中田さん 2019年10月半ばからです。追加工事を含めて、現場が終わるのは2020年5月末の予定ですが、私は最後まで担当する予定です。

――まだまだ勉強中という感じですか?

中田さん そうですね。常に新しいことが続いている感じです。会社は、3年目くらいから現場代理人を任せられる人材に成長してほしいと考えているようです。

住民の方々に喜んでもらえることが嬉しい

――これまでの仕事を振り返ってどうですか?

中田さん これまでは、工事の途中から現場に入ることが多かったのですが、今の現場は、工事の最初の段階から入っています。機材の準備や架設の計画など初めて担当する仕事が多く、一番印象に残っているのは、大きなクレ-ンを使った架設の計画でした。

工程に影響する作業だったので「失敗が許されない」というプレッシャーも大きく、ハラハラ、ドキドキしながら作業しました(笑)。クレーンに吊るワイヤーの計算もわからなかったので、上司に教わりながら、なんとかやり遂げました。

――嬉しかったことは?

中田さん 周辺の住民の方々が喜んでくれることですね。以前に担当した現場で、災害で落ちた橋の復旧工事があったのですが、橋が通れないので、地元の住民の方々は2時間ぐらい迂回していました。工事していると、住民の方々からスゴく感謝されたことがあります。

今の現場でも、架設作業をしていると、通行人の方々から「歩道橋ができたら便利になるね〜」と声をかけられることがけっこうあります。工事の騒音などで苦情を言われることもある一方、喜んでもらえると、ホッコリします(笑)。

架設中の歩道橋。既設歩道橋と並行する。その直上を走るのは首都高速湾岸線(今年3月上旬時点)。

――ツラかったことは?

中田さん 最初に派遣された現場で、なにもわからなかった頃ですね。仕事がわかならいのでツラい、というほかにも、6月から現場に入ったのですが、ものスゴく暑くて、位置決めのための鉄板への墨出し作業をしているときなんかは「焼け死んじゃうかも」と思いました(笑)。

――休みはどう過ごしていますか。

中田さん 土日が休みなので、東京に戻って友達と遊んだり、現地まで友達に来てもらって観光したり、たまには家でゴロゴロしたりして、有意義に過ごしています。

徐々に”自分で考えてやること”が増えてきた

――中田さんを含め、部下の育成で気をつけていることはありますか。

片山さん 仕事は基本的に若い社員に任せることにしています。私が「これやれ、あれやれ」と言うのは簡単ですが、それだと、ただのロボットになってしまいます。

それでは、せっかく現場に来ているのにもったいないです。若い社員が自分で考えてやらないと身につかないし、自分で考えてやれば記憶に残るので。

現場所長の片山博司さん(社会インフラ本部建設部工事室総括スタッフ)と中田さん

「わからないことがあったら聞きなさい」というスタンスでやっています。もちろんチェックはしますが、基本的にはお任せです。とりたてて指導育成している感覚はないです。

この現場は、私以外は入社2〜4年目が3名という若手ばかりの現場です。中田さんは3年目なので、全体管理などを担当してもらっています。

中田さん 1年目はなにもわからない状態だったので、自分で考えてやるということは少なかったですが、2年目ぐらいから、徐々に自分で考えてやることが増えました。

前の現場の所長さんも「自分で考えてやりなさい」という方だったので、やりやすかったです。

――この現場は週休2日ですか?

片山さん そうです。職人さんも週休2日です。働き方改革も含め、全体工程の管理を把握しておくことで仕事のペースを確保しています。

あとは、ムダな仕事を省くことを心がけています。そういうことをちゃんとやっていけば、週5日でも現場は回っていきます。

まずは施工をマスター、最終的には維持管理系の設計を

――身につけたいスキル、これからやりたい仕事はありますか?

中田さん まずは施工の仕事をマスターしたいです。その後は設計もやってみたいです。仕事の規模にはあまりこだわりはありません。最終的には維持管理系の設計の仕事をやれたら良いなと思っています。

――片山所長に言いたいことは?

中田さん 自家栽培の野菜を現場に持って来て、スープなどを作ってくださることもあります。アットホームな現場づくり、ありがとうございます(笑)。

――JFEエンジという会社の魅力は?

中田さん 1年目の社員には3か月毎に違う現場を経験させようという考えには共感を覚えます。毎月1回、若手社員を集めて研修を行っており、スキルアップする機会を与えてもらって、有難いなと思っています。会社や現場の雰囲気もマイルドなので、私は好きです。

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