AutoCADオペレーター(CAD利用検定1級)の加藤美絵子さんにインタビュー
CAD利用検定1級の有資格者で、AutoCADオペレーターとして15年も活躍されている加藤美絵子さんは、さらなるスキルアップを目指すために“派遣社員”という働き方を選び、今なお3DCADスキルの修練に余念がない。
AutoCADオペレーターが建設現場で重宝がられるための心構えや、AutoCADオペレーターが派遣で働くメリット、女性ならではの建設業の苦労、建設AutoCADオペレーターの仕事の魅力などについて、加藤美絵子さんに話を伺った。
建設AutoCADオペが語る実際の職場環境と、「3DCAD」への期待
―― AutoCADオペレーターとして、加藤さんは現在どんな現場で働いていますか?
加藤 某工場内の配管めっき基礎工事の現場事務所で働いています。AutoCADオペレーターとしては、設計図の修正や、出来形図・鋼矢板図・レベル測定図の作成等の仕事をしています。
現場事務の業務では、Excelによる産廃管理・搬入打設・重機車両台数・流動化処理土・ガソリン請求書等の資料作成とファイリングなどですね。
―― 今、お仕事で苦労していることはありますか?
加藤 今の現場事務所は、工場内での勤務なので、工場独自の規律がたくさんあります。その規律の内容が、現場事務所に伝わっていない部分も多く、規律違反にならないように行動することに気苦労しました。それから、現場事務所への通勤時間が、自宅の最寄り駅からバスで片道約1時間半も掛かることが大変ですね。
◎AutoCADオペレーター加藤さんの「一日のスケジュール」
6時 | 起床 |
6時50分 | 自宅出発 |
8時20分 | 現場到着 |
8時30分 | 勤務開始 |
17時30分 | 勤務終了 |
19時30分 | 自宅到着 |
―― 今の職場の雰囲気はどうですか?
加藤 今の現場事務所がある工場は、工業地帯の真ん中にあり、かなり古くさびれています。トラックの往来も多い場所で、お世辞にも職場環境が良いとは言えません。でも、現場の雰囲気は暖かみがあって良い感じです。
所長が誰に対しても親切で、ユーモアもあるので、楽しく仕事ができています。これまでの経験からも、人望のある所長の現場は、働きやすくてAutoCADの仕事も捗ります。
現場の施工管理技士さんや作業員さんは、厳しい暑さや寒さの中で、懸命に仕事をこなしていて、メリハリのしっかりした現場です。
―― そんな働きやすい現場も、もうすぐ終わるそうですが、次の配属先の現場は決まっていますか?
加藤 はい。次はスーパーゼネコンの本社内で、工事技術提案書を作るプロジェクトの一員として仕事をする予定です。業務内容はCADオペと計画書作成等です。3DCADも使用するので、今から楽しみです。これから建設関連のCADオペ業務は、3DCADが主流になると考えているので、3DCADの知識を身につけ、図面読解力を磨いていきたいと思います。職場環境も久しぶりにオフィスになるので楽しみです。
女性AutoCADオペレーターは活躍できる?女性ならではの「建設CADオペの苦労」とは?
―― ところで、加藤さんが建設業に入った理由は何ですか?
加藤 私が初めて就職したのは大手電機メーカーで、その後、派遣社員としてOAオペレーターや一般事務として仕事をしていました。派遣先が偶然、建設会社になったのをキッカケに、建設業界に身を置くことになりました。
―― 建設業界でAutoCADオペレーターとして働くようになった時、建設業界に抵抗はありませんでしたか?
加藤 オフィス勤務から急にプレハブの現場事務所で働くことになったので、正直なところ不安もありました。土木の工事現場では、ほとんど女性は私一人だったので、それも不安材料でした。しかし、建設現場はオフィスより少人数体制で、建築物や構造物を一致団結して作り上げて行く雰囲気があって、そんな雰囲気が大好きになりました。
実際の建設現場を見学して、図面づくりに役立てたり、請求書や施工計画書を作成・ファイリングしたり、お弁当の手配、備品管理などなど、少しでも施工管理技士の皆さんのお役に立てる仕事ができると嬉しいものです。
―― 建設業界におけるAutoCADオペレーターのお仕事で、特に苦労したことはありますか?
加藤 最初のほうは土木用語の読み方や意味、業者の名前などを覚えるのに苦労したので、正しい読み方や意味をノートに書いて、間違えないように注意しました。一番苦労したのは、工事がなかなか設計図通りには進まず、たびたび設計・計画に変更があるため、修正が必要になることです。しかし、それは現場の実際の動きを感じながら図面を描いていく、ということを意味します。現場にもよりますが、建設現場を実際に見た上で、現場サイドと息を合わせながら、具体的なイメージを持って、図面を描くことができる点は、建設のCADオペレーターならではの醍醐味だと思っています。
―― 建設のAutoCADオペレーターのお仕事で、気を遣っていることは何ですか?
加藤 当然のことなのですが、AutoCADオペレーターは、期限を守って指示通りに、正確な図を仕上げることが求められます。そのためには指揮命令者や周囲の施工管理技士や職人の方とのコミュニケーションが不可欠ですので、AutoCADスキルの上達もさることながら、現場では上手くコミュニケーションを図るように心掛けています。「NLPマスタープラクテショナー(米国NLP TM協会認定)」という心理学に基づいたコミュニケーションに関する資格も取得しました。
―― コミュニケーションの資格ですか、現場ではコミュニケーションがとても重要なので役立ちそうですね。他にもAutoCADオペレーターのお仕事で、役立っている資格はありますか?
加藤 CAD利用検定1級の資格ですかね。現場での実務経験も大切ですが、やはり資格があると、働く現場の選択肢も拡がりますし、転職にも有利になると思います。
建設AutoCADオペレーターが「派遣」で働くメリットとは?
―― 今、AutoCADスキルを持った派遣社員さんは、多くの建設現場で引く手あまただと思いますが、加藤さんが派遣という働き方を選んだ理由はありますか?
加藤 派遣の最大のメリットは、自分のスキルアップにつながる仕事を、自分で選べる点ですね。私は派遣社員だからこそ、AutoCADオペレーターとしてスキルアップし、コミュニケーション能力も上がったと思っています。
これまでに経験した現場も、橋梁、河川、港湾、線路、トンネル、プラント、道路など様々。それぞれ派遣先の企業も違うので、色々な職場環境を経験できたことで、コミュニケーション能力も向上したと思っています。
―― 派遣会社によっては派遣先を選べなかったり、給与が上がりにくかったりすると思いますが、派遣会社の間を転職することはありますか?
加藤 スキルアップしたのに給料アップしない時は転職を考えます。給与面はもちろんですが、一つの現場で派遣契約が終了した後、どれほど魅力的な次の派遣先候補の現場を挙げてくれるかも、派遣会社を選ぶ際の基準です。
ちなみに今の派遣会社に入った理由は、前の派遣先の現場で仲良くなった施工管理技士の方に紹介されたからです。コミュニケーションが転職にも役立った形です(笑)
―― 派遣社員としてAutoCADスキルを磨いていくコツなどはありますか?
加藤 派遣社員は、現場での仕事ぶりが派遣先の所長に認められないと、契約を打ち切られてしまう可能性もあります。だからAutoCADスキルも向上しやすいのですが、派遣先ではコミュニケーション能力もかなり重要になってきます。
例えば、CADスキルが低くても、所長に気に入られたという理由で、その所長が担当する現場にいつも呼ばれる、なんていう派遣のCADオペレーターも実際にいます。
―― AutoCADオペレーターはコミュニケーション能力も必要ですね。これから派遣社員として働こうとしているCADオペレーターの方々に、アドバイスやメッセージはありますか?
加藤 派遣が初めて、建設業界が初めて、AutoCADオペ業務が初めて、何でも最初は不安です。でも、派遣という働き方のメリットは、嫌な現場だったら、次の現場に行けば良いし、気に入った現場ならそこで継続的に働けば良い、というふうに、自分に合う仕事かどうか働きながら見極めていけることです。スキルアップすれば、現場での評価も上がり、給与も上がります。正社員とは違うメリットがあります。様々な仕事にチャレンジしながら自分に合った働き方、会社、職場を見つけていって欲しいと思います。
―― ありがとうございます。最後に加藤さんご自身の、AutoCADオペレーターとしての心構えや将来のビジョンをお教えください。
加藤 現場では、与えられた仕事だけでなく、今何を求められているかを意識しながら動くことを心がけています。常に現場の業務が円滑に進むように細やかな配慮ができるCADオペレーターになりたいと思っています。
将来的にCADオペレーターは、図面の読解力も必要になってくると思いますので、私もこれから必要になる3DCADと図面の読解力を勉強し、もっと建設現場の皆さんのお役に立ちたいと思っています。