「現場監督は、お客様の夢を”一緒に楽しみながら”形にしていく仕事」

悩める若手技術者へ。現場監督は「お客様の夢を”一緒に楽しみながら”形にしていく仕事」

試練や困難を経験したからこそ伝えたいこと

悩み多き若手現場監督に向けて、私の経験をもとに何か少しでも力になれればと思い、執筆することにしました。

私は大学卒業後、中小規模ゼネコンの現場監督を7年間経験し、その後ハウスメーカーの現場監督に転職をしました。現在も、年間40棟ほどの新築工事のお手伝いをしています。

思い返せば、ゼネコン時代。右も左も分からない入社当時は、現場に出ればたくさんの試練が待ち受けていました。

先輩が間違えた納まりを是正するために、砕り機でRCを壊してはコンクリートガラを土嚢に詰め、何十袋も階段を伝って運び下ろしたり、足場が必要だと言われれば、現場にストックされている枠組み足場とアンチで、必要な高さまで組んだりもしました。

夜になれば、現場事務所で慣れない施工図面を朝まで描くなんてこともしばしば。これが現場監督の仕事なのか…。自問自答の中、その時はただがむしゃらに突き進んでいました。

そんな中、1級建築施工管理技士の資格に合格したことをきっかけに、自分のステップアップも兼ねて転職の道を志しました。運が良かったのか、業界では大手と言われるハウスメーカーに転職することになりました。

「これであの重いガラ運びから解放される…」と安堵のため息をついたのも束の間、待っていたのは更なる困難でした。


「お客様は怖い」 私もそう思っていました

転職した後、私はすぐに気づいてしまいます。「全くお門違いな場所に来てしまった」と。今までの仕事の相手は建物そのものでしたが、これからの相手は施主という人間であり、必然的にコミュニケーション能力が問われる場所に来てしまったからです。

もともと世間話をすることさえも苦手意識のある口下手人間だったので、工事の説明や、不安を解消させ安心させるなどという経験もなければ、スキルも持ち合わせていません。しかし、この会社に転職した以上、前途多難な道を覚悟するしかありませんでした。

あれから十数年。今は、伸び伸びと現場監督をしています。お客様からのクレームもほぼ無いに等しいです。もっと言えば、仕事が楽しくて仕方がありません。あの困難な時代から、ようやく幕が開けたとさえ思います。今は人生に価値を感じ、生きがいを手にしているのです。

では、あの口下手人間だった私に一体どんな変化があり、どうして生きがいを感じるほど楽しく仕事をすることができるようになったのか経験をもとにお伝えします。

ハウスメーカーの現場監督に多い悩みとして、お客様からのクレームがあげられます。特に、若手の現場監督は心の内で「お客様は怖い」と思ってはいないでしょうか。私もそうだったのでよく分かります。お客様と接していると、知らず知らずのうちにお客様に対してこう思うようになります。「何かミスをすれば不満を言うし、時には大声で怒鳴るからなるべくなら会いたくない」と。

その思いが強くなってくると、今度は相手に怒られないことばかりに意識が集中していきます。でも、なぜかまたお客様からのクレームが発生し、さらに深みにはまっていくのです。これが「お客様は怖い」につながっていき、ますます悪循環を引き起こします。

以前は私もそうでしたが、今は違います。ある時期から、「お客様は怖くない」という考え方を理解することができるようになったからです。「家づくりがどんなに楽しいかを施主に教えてあげたい」と、そう思うようになったのは自邸を建てた頃でした。

毎日のように、仕事終わりには建設中の自邸を見に行きました。仕事中にいつも見ている他人の家と仕様は同じでも、感覚がまるで違いました。その時、自分の中で“家づくりに対する考え方”に変化があったことを今でも覚えています。

さらに、それは自分一人の考え方の変化だけではなく、周りにも影響するということも分かりました。それまで慢性的に抱えていたクレームが一気になくなり、仕事が順調に回り出したのです。「これだ!!」と稲妻が走りました。お客様を怖がるのではなく、家づくりの楽しさを教えてあげたいという気持ちがあれば、うまくいくということに気づいた瞬間でした。


一緒に楽しみながら、施主の夢を形にしていく

そもそもクレームの発生原因は、現場監督の立ち位置にあると言えます。お客様から見て、あなたはどの位置に立つべき役割の人間かということを知らなければなりません。

なぜなら、本来、現場監督はお客様に頼られる立場だからです。頼られる立場の人間が、怒られないようにとネガティブ思考で仕事をしていれば、お客様の期待には追いつけません。いずれ不満が溜まり怒られてしまいます。

それを、家づくりの楽しさを教えてあげたいというポジティブな気持ちで取り組んだらどうでしょうか。きっとお客様の期待を上回るパフォーマンスを生み出すはずです。

現場監督は、建築のプロです。建築の知識では、もちろんお客様の上をいきます。そのかけがえのない知識と楽しませたいという気持ちを持って、お客様を引っ張ってあげるのです。

若手は、現場監督の仕事を「大きな責任を抱えながら様々なトラブルの対処をしていく仕事」と難しく真面目に捉えてしまいがちですが、私は「施主の夢を一緒に楽しみながら形にしていく仕事」であって欲しいと考えています。

若手の現場監督の皆さんは、現状だけを見て辞めないでいてください。辛いことばかりではないはずです。そして、施主にとっても、私たち現場監督にとっても、夢のある建設業界を築き上げていって欲しいと切に願います。

余談ですが、口下手人間はそう簡単には直りませんでした。でも、気持ちを改善することで最大限のパフォーマンスをして、お客様に喜びをプレゼントすることはできるようになりました。

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