困難に勝る「やりがい」を見つけられていますか?
ハウスメーカーの現場監督をやっていると大変でしょう、とか、辛いでしょうとか心配して聞かれることがあります。もちろん仕事なので、大変なこととか辛いことなんかいくらでもあります。
でもそれは、現場監督に限ったことではなく、どんな仕事だって同じです。大変なことばかりが続けば精神が疲弊し、仕事が続けられなくなってしまいます。なので、仕事を続けていくには、困難に勝る「やりがい」を見つけなければなりません。
もちろん、仕事を始めた頃はやりがいを見つけることはなかなかできないと思います。何しろ覚えることや仕事に慣れることに自分自身が精一杯だから。仕事を修得していくなかで、もしやりがいを見つけることができたら、きっとその仕事はどんどん楽しくなっていくはずです。
やりがいを感じることができなかった過去
私にとって仕事のやりがいは、ありきたりと言われるかも知れませんが、“お客様の喜んだ笑顔を見ること“です。特に、一生懸命家づくりをしている人の表情って活き活きとしていて、見ているこちらも気持ちが明るくなります。
それもそのはず、考えてみてください。お客様は、大好きな家族とこれから幸せな生活を築いていこうとしているのですから、大きな夢を思い描いている人がキラキラしていないわけがないですよね。そう考えると、多くの人の人生にとって大切な役割となる住居を作るお手伝いができるので、ハウスメーカーの仕事は素敵な仕事だなと感じています。
現場監督という仕事は、設計図通りに建物を作れば仕事としては成立しますが、建物を利用する人がいるからこそ、そこに面白味が出てくると思います。正直私は、ただ建物を作るだけではやりがいを感じることができませんでした。
建物を作ることで、そこに喜びを感じてくれる人がいなければ、作る意味すら薄れてしまうと感じていたのです。そこで、私はお客様にもっと家づくりを楽しんでいただける方法はないかと考えました。
工事現場はアトラクションであり、お客様はゲスト
思い付いたのは、建設中の工事現場に積極的に足を運んでもらうことでした。いうなれば、「施主体験型の家づくり」とでも名付けましょうか。ただ自由に現場に来てもらうのではなく、見応えのある場面を私がピックアップし、日時指定をしたうえで来場してもらうのです。
現場では現場監督である私が待ち構えています。そして、現在の工事の様子を詳しくご説明をしながらご案内するのです。ぱっとイメージしたのは、巷で有名な夢の国。ここでいう工事現場はアトラクションであり、お客様はゲスト、現場監督はキャストという具合。
例えば、基礎の配筋検査のタイミングがあります。コンクリートが明日には流し込まれる直前であり、中の鉄筋を見ることができる最後のチャンスです。もちろん私は、検査も兼ねて現場に来ています。
一通りの検査が終わる頃、待ち合わせていた時間にお客様がやってきます。そこで、私がどんな検査をしたのか、型枠や鉄筋がどのような仕組みで組まれているのか、コンクリートの品質管理はどのようにやっているのかなどを詳しくご説明するのです。
ほとんどのお客様は興味津々で聞いてくれます。一通り私からの説明が終わり、「いかがでしたか?何かご質問はありますか?」と聞くと、大抵のお客様から笑顔が溢れます。そして、「その説明を聞けてとても安心しました」と言ってくれます。
他にも、木工事完了のタイミングは、お客様をご案内するチャンスです。それも日時を指定して、よろしければどうぞと事前にご案内を入れておきます。仕事を半日休んでまでも、現場に足を運んでくれるお客様も多くいらっしゃいます。
当日は、木工事完了検査をし終わった頃にお客様を出迎えます。この頃には、部屋の間仕切り壁が出来上がり、クロスが貼られる直前の状態です。壁はこのように石膏ボードで作られているとか、クロスの下準備でパテを塗るとか、天井の丸い穴がダウンライトの設置されるところだとか、現場で見えるほとんどのことを細かく説明をしていきます。
また、家具を置いたらこのくらいのスペースになりますと、スケールを使って説明をしたりすることもあります。お客様は終始笑顔で話を聞いてくださいます。いよいよ新しい生活が始まるというワクワク感を実感できているのでしょう。「いかがですか?」と聞くと、「満足しました」という答えが返ってきます。
いつしか、私は自分の仕事にやりがいを求めるあまり、お客様も巻き込んで工事を進めるスタイルを確立していきました。幸いなことに、お客様にとっては安心や満足を得られる機会になっているようです。
もしこれを読んでいるハウスメーカーの現場監督の方がいれば、この「施主体験型の家づくり」を是非試していただきたいと思っています。忙しいからできないという方ももちろんいるかと思いますが、これをやっていると実は思わぬメリットがあります。
「施主体験型の家づくり」で得た思わぬメリット
思わぬメリットとは、“お客様からのクレームの減少”です。それをやっていなかった頃の私は、お客様からたびたびクレームをいただくことがありました。でも今は、全くと言っていいほどクレームは無くなりました。クレームが無くなれば、それだけ時間に余裕できるので仕事が順調に回り始めます。まさに好循環を生み出すのです。
そもそもクレームの発生源は、ほとんどの場合、お客様が抱える不安感からだと思います。現場監督が不安を解消してくれず、放置しておくといつしかクレームに変化してしまうのです。
その問題を解消できた理由は、「施主体験型の家づくり」を行ったことです。定期的にしっかり現場にご案内することでモヤモヤした不安を解消してあげることができますし、次にご説明するタイミングを伝えて日時を約束しておくことで安心感を与えることができるからです。
お客様に家が作られていく過程を楽しんでいただきながら、現場監督の仕事も好循環になる。これは、お互いにとって最高な状態ではありませんか?
「施主体験型の家づくり」を通して、完成した家を引渡す時には、きっとお客様の最高の笑顔を見ることができるはずです。そしてその姿を見た時、幸せな気分になると同時に、仕事のやりがいを感じることができるのではないでしょうか。