転職は逃げじゃない、むしろポジティブ
私は、これまでに転職を2度経験しています。最初は新卒でゼネコンへ入社し、2ヶ月ほど施工管理を経験した後、構造設計部へ配属となりました。その後、構造設計をより深く理解するために構造設計事務所へ転職し、現在は再びゼネコンにて構造設計に従事しています。
もちろん理由は人それぞれかと思いますが、10年ほど前の転職はまだまだネガティブなイメージが強かったと記憶しています。「仕事が辛い」「人間関係が悪い」などを代表とする、逃げと取られるイメージです。 思い返せば、私自身も仕事で追い込まれた経験は多々あります。それが不幸な結果に繋がることも、残念ながら珍しくない世の中です。
そのようなことになる前に転職を考えることは、全くネガティブではありません。むしろポジティブではないでしょうか。イメージを鵜呑みにする必要はありません。
コミュニケーション能力は、技術力よりも万能
世間には、転職が上手くいく人といかない人がいます。冷静に自己分析をすることこそ、転職を成功させるための第一歩だと思います。皆さんは、自分にはどのような能力があるか考えたことはありますか?
能力とは、実務における直接的な技術だけではありません。業務において、少なくとも、管理能力または技術力のどちらかは必要だと考えます。「コミュニケーション能力」も管理能力に含んで考えていますが、これは技術力以上の万能な力だと思います。
私の未熟な頃の経験を語ると、物理的に不可能に近いスケジュールの業務で、期限間近に右往左往していたことがありました。その時、コミュニケーション能力が高い上司がお客様とスケジュールを調整してくださり、納期を1週間延ばしてくれたことがありました。
それまでは、コミュニケーション能力とは他者との摩擦を軽減するためだけの能力だと思っていましたが、そうではありませんでした。少なくとも私の技術力では解決出来なかった問題を、上司は管理能力(=コミュニケーション能力)によって解決したのです。
施工管理職こそ「管理能力」が必要
ここまでは設計職である私の視点になりますが、施工管理職であれば、なおさら管理能力の比重が大きいのではないでしょうか。施工中には、各工程で多くの下請け業者の出入りがあり、現場監督として下請け業者に指示をするわけですが、「どうやるのかわからないけどコンクリートを斫ってくれ」では伝わりません。
監督自らキレイに斫る技術と工具、重機があるのであれば、自分で斫ることも間違いではないのかもしれませんが、適切な管理が出来ていれば更に別の作業を行うことも出来ます。あなたの本来の仕事は施工管理なのです。
雑な指示で苦労をしている職人の方々の声は、設計の私の耳にもよく入ります。施工管理職に従事するのであれば、下請け業者がどのような作業で、どのくらいの時間を費やして、どのような苦労が伴うのかを理解する必要があります。その理解が言葉に重みを加え、リアルな指示になり、互いの信頼につながるのではないでしょうか。
自分を安売りする必要はない
もし今、「給料が安い」「休みが少ない」と思っている人がいるならば、自分が企業に提供している能力の対価に釣り合わないと思っているからではないでしょうか。
冷静に自己分析した上で、そのように思うことはポジティブだと思います。しかし、声だけあげて行動しないことは、その環境を受け入れるということです。すなわち、自分を安売りしているということになります。
企業への恩、人への恩も大きな要素ですが、労使相互の要求が釣り合うことが理想だと考えます。みなさんは、現在の労働環境に満足していますか?現在の労働環境に満足しておらず、転職を考えている方は、一度自分の能力を分析してみてはいかがでしょうか。