入社1年目の部下の嘆き。現場で教わったのは、「見て覚えろ精神のみ」

入社1年目の部下の嘆き。現場で教わったのは、「見て覚えろ精神のみ」

入社1年目の部下が漏らした本音

最近、私にも部下という存在ができた。年が近いこともあり、部下の愚痴を聞くこともしばしば。

部下といっても、入ってまだ1年目の新入社員。なかなか若い人材が入らないこの業界にとっては、非常に貴重な存在だ。

そんな部下から、先日別の現場で測量を行ったときの愚痴を聞いた。

現場で教わったのは、見て覚えろ精神のみ

今に始まったことではないが、見て覚えろ精神は、今の建設業界の若者が言いたくても言い出せない代表的な風習ではないだろうか。

部下が測量を教わっていた時のこと。ターゲットを持たされて、右も左も分からずにただ指示されたポイントを当たる。そこで、この部下はこんな疑問を持ったらしい。

言われても分からないかもしれないが、今から何のために、どこのポイントを出すのかを説明してほしい』と。

部下ながら感心した。確かにそうだ。何も言わずに、ただ測量のポイントを手元として当たらされても、知識としては何にも身につかない。

古い人間は、「繰り返すことで何をしているのか分かってくる」と言うだろうが、呆れてものが言えない。構造物のどこのポイントなのか、具体的に測量前に説明を加えるだけで、手元の人間は考えることができる。

考えながら測量することで、のちに図面上を見たときに測量を行った意味を把握できるのだ。このたった一言の説明ができない現場監督が非常に多い。

そればかりか、若い人間の揚げ足を取ることばかり。こういった環境は、全てが教育者のせいではないにせよ、教えるほうにも責任がある。


課題を与え、目標を作らせる

最初は、現場で何をやっていいのか本当に戸惑うことが多いと思う。

誰かが何か課題を与えるわけでもなく、新人が勇気を出して質問をすれば、返ってくるのは「忙しいから後にしろ」「何回同じことを聞くんだ」といった無責任な言葉ばかりだ。

確かに現場監督の仕事をしている以上、忙しいのはよく分かる。質問を後回しにしてほしい気持ちも、とてもよく分かる。ならば、せめて課題を与えてあげてほしい。

現場で見て覚えろと言って放り出しても、やることを全員が見つけられるとは限らない。だから、せめて課題を与えて、目標を作らせることが重要だ。

若者からも学ぶ時代

これまでは、先人たちの技術や知恵を現場で学び、応用する時代だった。しかし、現在はテクノロジーの発達により、若者がとんでもなく役に立つ能力や知識を持っていたりする。

新人でも、便利なソフトを使って我々よりも見やすい資料や書類を作成して、提案してくることだってある。そこでネックになるのが、ベテランと呼ばれる層の頭の固さだ。

それを痛感した出来事があった。ある日、新人が驚くべき土木図面を提案してきた。MacBookを使用して、ベクターワークスというCADソフトを駆使して、現場平面図を3Dに書き起こしてきたのだ。

見た目も直感的で非常に分かりやすい。私は素直に感心した。しかし、その時に現場所長が「市役所と相関性がないソフトだから役に立たない」と一蹴。私は、その光景に驚きと違和感を感じたことを今でも覚えている。

市役所との相関性がなくとも、現場で作業者に指示を出すときや、市役所への説明時にでも活用することはできたはずだ。そもそも、土木のテクノロジーも進歩してきている今、いつまで古い考えで仕事をするつもりなのだろうと絶望さえ感じた。

若者は、最新のテクノロジーや流行に触れていることが多い。素晴らしいスキルを若者が持っているのならば、素直にそこから学び、取り入れるべきである。彼らから学ぶ姿勢も大切だ。

先人たちの存在は、確かに偉大だ。これまで、いくつもの修羅場をくぐってきた所長たちの現場での経験は、私たちの教育にももちろん必要だと思う。しかし、全てのやり方を正しいと思う必要はない。今行っている業務が本当に合っているのか、常に自問自答することが大切ではないだろうか。

若手を教育するうえで、古い風習は今後絶対に邪魔になる。今のうちにそれをぶっ壊して、新しい柔軟な考え方を業界全体でしていかなければ、今後発展的な成長を見込むことは難しいだろう。

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