非常に苦戦した河川工事での体験談
今回は、現場で実際に悩みまくった体験談を話そうと思う。
私は今、河川の災害復旧工事の真っ只中だ。梅雨の時期も近づいてきて、河川工事は特に気を使う時期に突入している。そんな中、現場では工事用道路の作成が設計に入っていた。
この現場は、河川のブロックが崩壊したため、崩壊部分のコンクリート殻の撤去、新たにコンクリートブロックの設置が主な工事内容だ。場所は国道に隣接しており、重機が侵入するには仮設の工事用道路を作成するしか方法はなかった。
しかし、工事施工箇所は道路から直高約10mはあり、最終的な工事用道路の撤去方法が問題視された。発注者に相談したところ、「その際は施工にかかる費用は出すので、工期もあまりないため、とにかく施工に取り掛かって欲しい」と言われたので施工を開始することにした。
工事用道路の残土撤去方法が浮かばず難航
施工自体は計画通りに終了し、問題の工事用道路の残土撤去がやってきた。
0.7m3の重機でとにかく積み込み可能な範囲まで残土を搬出し、河床整備を行い、いよいよ重機のアームが届かなくなってきたため、施工をストップした。
私なりにかなり模索した、その後の対処方法はこうだ。
まず河床にミニバックホウを降ろし、バッカンを使用して残土を積み込み、最終的にレッカーで上げる方法だが、河床は岩だらけ、周りに重機が置けるスペースもなく、ミニバックホウでは走行すらままならない状況だった。
次に、近くの地形的に重機が上がるようなスペースがないかを調査した。重機が上がれる場所があれば、重機を2台にして作業をすることで、河床の整備と残土搬出を同時にできると思ったのだが、周りには残念ながら重機が上がれそうな場所は存在しなかった。
私の経験不足だと思われるかもしれないが、可能な限り施工方法は調べ尽くした結果がこれだった。これ以上、従来の重機で施工をすることに限界を感じた私は、発注者にある提案をすることにした。
「ロングアームの重機を使用したい」
かなり直高のある場所を施工する場合、ロングアームが非常に便利である。初めからその方法をとれば良いと思うかもしれないが、このロングタイプのアーム重機は非常に高額なのだ。
橋脚など予算がわりとつく現場では採用されるのだが、災害復旧現場となると、発注者が簡単には首を縦に振らないため聞くのを躊躇していた。だが、現場がストップしては元も子もないので、発注者にロングアームでの施工を提案することにした。
発注者から返ってきた信じがたい答え
発注者に提案をしたところ、答えはこうだった。
「ロングアームの採用は却下だ」
施工前の話と違う。工事用道路の撤去で、最終的に施工が困難になることは工事の計画段階からわかっていたことだ。
それを事前に確認して、施工にかかる必要な費用は支払うという条件で施工を開始したにも関わらず、あっさりとNoという答えが返ってきた。
そこで、実際に発注者を現場に呼び出し、現場の状況を見せた後に、ロングアームを使用せずに施工する方法を教えてくれと尋ねた。発注者が首をかしげたまま出した答えは、結局ミニバックホウで最低限の施工で良いという答えだった。
私たちもその通りに施工したのだが、結局大半の残土が河川の中に残ってしまう形となり、見栄えも良いものではなかった。近隣の方からは、もう少し綺麗に施工してくれと言われ、非常に胸が痛かった。何よりも私は、発注者のいい加減な返事に呆れてしまった。
全ての発注者とは言わないが、責任逃ればかりを考え、我々のような現場の人間に適当な返事をするのは絶対にやめてほしい。
工事を早く着工しなければ責任を問われるため、その場しのぎの言葉で施工を始めさせては、いざ工事が始まれば施工方法は丸投げ、さらには予算は出せません、こんなふざけたことがあるだろうか…。
現場では何が起こるか分からない。当初設計では見えていなかったとしても、現場では不測の事態が頻繁に起きるものだ。もっと現実的な施工ができるように、発注者ももう少し現場に寄り添って考えるべきではないだろうか。