職長・安全衛生責任者教育とは?講習内容やメリットを徹底解説

職長・安全衛生責任者教育とは?講習内容やメリットを徹底解説

「職長」と「安全衛生責任者」とは、どのような立場の人かご存じでしょうか。建設業などの作業現場では、労働安全衛生法で「職長」と「安全衛生責任者」を配置することが定められています。

この記事では、「職長」と「安全衛生責任者」の資格取得に必要な、「職長・安全衛生責任者教育」と呼ばれる講習について、その内容や受講のメリットについて詳しく解説します。

職長・安全衛生責任者教育の役割、目的とは?

「職長」と「安全衛生責任者」とは、それぞれどのような役割なのでしょうか。

「職長」は作業現場で働く作業員に対して指揮・監督を行う者であり、「安全衛生責任者」は元方事業者と連絡・調整を行う者です。

ここでは、「職長」と「安全衛生責任者」の各々の役割について紹介します。また、資格取得に求められる「職長教育」と「安全衛生責任者教育」の目的についても確認していきましょう。

職長教育とは?

職長は、作業現場において次の職務を行います。

  1. 安全衛生管理(安全に作業を進める)
  2. 工程管理(工程どおりに進める)
  3. 品質管理(より良いものを作る)
  4. 原価管理(コスト削減に努める)
  5. 環境管理(不要物や有害物を適正処理する)
  6. 人間関係管理(働きやすい職場環境を作る)

職長は、作業現場の指揮・監督者として、いわゆるヒト、モノ、カネ全てにおいて管理しなければなりません。

作業現場を滞りなく遂行させるために、職長となる者がこれらの職務内容を責任をもって理解することが「職長教育」の目的です。そのため、職長資格を有しない者が、作業現場で指揮・監督を行うと罰則が科せられます。

安全衛生責任者教育とは?

安全衛生責任者の職務は、労働安全衛生規則第19条によって以下のように定められています。

  1. 統括安全衛生責任者との連絡
  2. 統括安全衛生責任者から連絡を受けた事項の関係者への連絡
  3. 前号の統括安全衛生責任者からの連絡に係る事項のうち当該請負人に係るものの実施についての管理
  4. 当該請負人がその労働者の作業の実施に関し計画を作成する場合における当該計画と特定元方事業者が作成する法第三十条第一項第五号の計画との整合性の確保を図るための統括安全衛生責任者との調整
  5. 当該請負人の労働者の行う作業及び当該労働者以外の者の行う作業によつて生ずる法第十五条第一項の労働災害に係る危険の有無の確認
  6. 当該請負人がその仕事の一部を他の請負人に請け負わせている場合における当該他の請負人の安全衛生責任者との作業間の連絡及び調整

(出典:労働安全衛生規則 第一編 第二章 安全衛生管理体制(第二条-第二十四条の二)|中央労働災害防止協会 安全衛生情報センター

安全衛生責任者は、元方事業者との連絡や調整を行う重要な役割であり、法令で規定された職務を遂行しなければなりません。

安全衛生責任者となる者が、上記の職務内容を責任をもって理解することが「安全衛生責任者教育」の目的です。職長と同じく資格を有しない者が安全衛生責任者の職務を行うと罰則が科せられます。

職長・安全衛生責任者教育の講習概要

建設業では、職長と安全衛生責任者を兼任することが多いため、「職長教育」と「安全衛生責任者教育」が統合された「職長・安全衛生責任者教育」が行われています。

「職長・安全衛生責任者教育」を受けるには、各実施機関で開催される講習会または、Web講習で受講するといった2つの方法があります。講習の概要について、次から詳しく解説していきます。

受講資格

「職長・安全衛生責任者教育」の受講に関しては、年齢制限や必須な資格もありません。どなたでも定められた時間の講習を受講すれば取得できます。実技試験などもありません。

ただし、職長として作業現場を指揮・監督する人材を教育するための講習ですので、ある程度の実務経験や安全衛生に関する知識を持っているのが望ましいでしょう。

費用

「職長・安全衛生責任者教育」の受講費用は実施機関によりますが、概ね2万円前後です。実施機関は「公益社団法人東京労働基準協会連合会」や「一般社団法人東京技能者協会」など建築関係の各協会があります。

また、Web講習の場合は費用を安くすることができます。それぞれの内容を確認して、都合のよい受講方法を選びましょう。

日程

「職長・安全衛生責任者教育」の講習会は、全国各地の実施機関で毎月行われています。詳細については、各実施機関のホームページを確認するか、もしくは電話にてお問い合わせください。講習は、基本的に施設に行って受講しますが、出張講習が可能なところもあります。

参考までに「建設業労働災害防止協会東京支部」では、毎月2回(月の前半の2日間、後半の2日間)実施しており、定期開催以外には出張講習も実施しています。

講習内容・難易度

現場管理において、職長は対内的な業務を行い、安全衛生責任者は主に対外的な業務を担当します。

上述したように、職長と安全衛生責任者は一人で両方を兼任するケースがほとんどであるため、講習は、職長教育と安全衛生責任者教育をセットにした、「職長・安全衛生責任者教育」として実施されます。

講習時間は合計14時間で、内容については以下のとおりです。「職長・安全衛生責任者教育」は、講習を受けさえすれば取得できるので難易度は高くありません。

作業方法の決定および労働者の配置に関すること 2時間
労働者に対する指導または監督の方法に関すること 2.5時間
危険性または有害性等の調査やその結果に基づき講ずる措置などに関すること 4時間
異常時における措置に関すること 1.5時間
その他現場監督者として行うべき労働災害防止活動に関すること 2時間
安全衛生責任者の職務など 1時間
統括安全衛生管理の進め方 1時間

(出典:一般財団法人中小建設業特別教育協会

Web講習

講習は必ず2日間受講しないといけません。しかし、「仕事の合間に時間を割いて受講会場に出向くのは難しい」という人や、「会場まで遠くて参加が困難」という人も多いのではないでしょうか。

そのような場合、Webで講習を受けることができます。Web講習は、パソコンやスマートフォンで24時間いつでもどこでも受講が可能なので大変便利です。

有効期限

「職長・安全衛生責任者教育」は、上記の全14時間の講習を2日間で受講します。ただし、修了後は永久的に資格取得の効果があるわけではありません。

資格取得後、約5年ごとに、または機械設備等に大きな変更があった時には、「職長・安全衛生責任者能力向上教育(再教育)」を受講する義務があります。「再教育」は、全5時間45分で1日で修了できます。

修了証

全14時間(2日間)の講習をすべて修了した場合のみ、修了後に修了証が発行されます。ただし、欠席などで14時間すべて受講できなかった場合は修了とならず、修了証は発行されません。

なお、「職長・安全衛生責任者教育」の修了証に有効期限は記載されていません。上述したとおり、約5年ごとに「職長・安全衛生責任者能力向上教育(再教育)」を受講した場合は、違う修了証になります。

職長・安全衛生責任者教育受講のメリットとは?

「職長・安全衛生責任者」の資格は、取得していれば特定の仕事ができるわけではないので、施工管理技士など他の建設系の資格とは少し異なりますが、専門的な知識を持っている人物とみなされます。

そのため、「職長・安全衛生責任者教育」を受講しているということは、関係する取引先にアピールすることができます。その他、どのようなメリットがあるのか見ていきましょう。

実務経験をアピールでき、信頼される!

実務経験をアピールできることが一番のメリットと言えます。職長になれば、管理する側としても実務のことを熟知しているため、作業現場を安心して任せることができ、信頼度が高まります。

安全で安心な作業現場は、現場で働く人の実務経験の豊富さや知識の深さによります。取引先からも信頼されるためにも、持っておくべき資格であると言えます。

現場責任者として任命される!

現場の実務経験が豊富でも、資格がなければ職長にはなれません。講習を受けてはじめて作業員を直接指揮・監督することができます。

実務経験はあっても職長の資格を持っていないのであれば、早めに取得すべきです。職長として現場の責任者に任命されるためには、最低限資格を取得しておきましょう。

現場で信頼を得るために早期受講がおすすめ!

作業現場の安全と作業員の健康を確保するためには、職長と安全衛生責任者の存在が不可欠です。そのため、講習を受けてその内容をしっかりと理解しておかなければなりません。

この資格があれば、実務経験をアピールすることができたり、現場の責任者に任命されることもあるため、非常に有効な資格です。特別な受講資格もないので、早めに取得しておくのがおすすめです。

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