建築物環境衛生管理技術者とは?資格内容や取得後のキャリアについて解説

建築物環境衛生管理技術者とは?資格内容や取得後のキャリアについて解説

ビルや大型商業施設、病院など多くの人が利用する施設の安全を守るためには、建築物環境衛生管理技術者の存在が欠かせません。建築物環境衛生管理技術者は、通称ビル管理士とも呼ばれる国家資格です。

ビルメンテナンス業界において建築物環境衛生管理技術者の資格保有者は、長年勤務できる環境を得ることができるでしょう。この記事では、建築物環境衛生管理技術者とは何か、資格の内容やキャリアアップについて解説します。

建築物環境衛生管理技術者とは?

建築物環境衛生管理技術者とは、ビル管理士とも呼ばれる国家資格で、建築物の維持管理と衛生管理の監督業務が可能です。大規模な商業施設などには、建築物環境衛生管理技術者の選任が義務付けられています。

企業によって、建築物環境衛生管理技術者の業務内容が大きく変化する場合がありますが、建築物の管理や点検業務のまとめ役として活躍する点はどこも同じです。では、建築物環境衛生管理技術者の目的や業務内容を見ていきましょう。

資格の目的

面積3,000平方メートル(学校の場合は8,000平方メートル)以上の特定建築物では、建築物の維持管理や環境衛生上、建築物環境衛生管理技術者の選任が義務付けられています。特定建築物とは、超高層ビルや商業施設、ホテルやデパート、大学や映画館などです。

1つの特定建築物に1人の建築物環境衛生管理技術者を設置する必要があるため、非常に需用の高い資格といえます。都心部など建物が多い地域では、建築物環境衛生管理技術者の資格保有者は就職や転職に有利です。

どのような業務に関係する資格か?

建築物環境衛生管理技術者の主な仕事は、大規模な建築物の衛生環境を維持するための指導や監督です。不特定多数の利用者がいる建物では、人々の安全を守るためにさまざまな点検や清掃をおこなう必要があります。

大規模な建物では、電気設備・空調設備や消防設備の点検、水質の検査や害虫駆除、廃棄物処理の際に業者と連携をとるなどの管理が必要です。建築物環境衛生管理技術者は直接的にはこれらの業務は行いません。

しかし、点検や清掃をおこなう人たちへ指示を出し、建物の異常を見つけたら迅速に対処します。

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建築物環境衛生管理技術者試験の内容は?

建築物環境衛生管理技術者試験は、毎年10月に札幌・仙台・東京・名古屋・大阪・福岡と6つの都市で開催します。試験科目は、建築物衛生行政概論・建築物の構造概論・建築物の環境衛生・空気環境の調整・給水および排水の管理・清掃・ネズミや昆虫などの防除と全7科目です。

建築物環境衛生管理技術者は国家資格であるため、簡単に取得できませんが決して困難ではありません。また、特定建築物のメンテナンス業務において、建築物環境衛生管理技術者の資格保有者は長い期間活躍することができるでしょう。

では、建築物環境衛生管理技術者試験の内容を紹介します。

受験方法は?

受験方法は、願書を郵送またはインターネットで申し込みできます。毎年10月に試験が実施され、翌月の11月上旬が合格発表です。

試験を受けるには、実務経験証明書を準備する必要があるため、証明印をもらうなど時間がかかる可能性があるため、余裕をもって行動しましょう。受験手数料は13,900円です。

郵送またはインターネットでの願書の申し込みは、日本建築衛生管理教育センターの国家試験課宛に送ります。

難易度はそれほど高くない

建築物環境衛生管理技術者の合格率は、平均で20%ほどです。国家資格のなかでは、建築物環境衛生管理技術者の難易度は普通の水準とされ、難関資格ではありません。

受験するには実務経験が必要で、定年後に再就職する際にも役立つ資格のため、受験者は比較的年齢層が高い傾向にあります。計画的に受験に挑めば、決して取得が困難な資格ではありません。

取得するとメリットが多い

建築物環境衛生管理技術者は、面積3,000平方メートル以上の特定建築物に選任が義務付けられているため、常にどこかの企業が必要としている人材です。つまり、資格を取得すると建物のメンテナンス業務においては長年活躍できます。

建築物環境衛生管理技術者の仕事内容は複雑ですが、定年後も働けるため求人の年齢層も高めです。一般的に、歳を重ねるにつれて再就職は難しいと言われていますが、建築物環境衛生管理技術者の場合は就職や転職、昇給において非常に有効な資格といえます。

さらに、建築物環境衛生管理技術者の資格を保有していると、空気環境測定実施者や貯水槽清掃作業監督者などほかの資格講習も受講可能になるため、活躍できる範囲が広がるでしょう。

試験内容

建築物環境衛生管理技術者の試験内容は、以下の7科目です。

  • 建築物衛生行政概論
  • 建築物の構造概論
  • 建築物の環境衛生
  • 空気環境の調整
  • 給水および排水の管理
  • 清掃
  • ネズミや昆虫などの防除

受験する年によって合格基準点が異なる可能性がありますが、基本的に各科目の正解率が40%以上、全体で65%以上が合格ラインです。7科目中、1つでも正解率が40%を下回ってしまうと不合格となります。

受験資格

建築物環境衛生管理技術者の受験に必要な学歴は定められていませんが、一定の実務経験を必要とします。

実務経験が必要な施設は、市民ホール、図書館、博物館、美術館、遊技場、店舗、事務所、 学校、研修所、旅館、ホテル、映画館、劇場、百貨店、集会場、公民館、結婚式場などです。

これらの施設で、空気調和設備管理、給水・給湯設備管理、排水設備管理、ボイラー設備管理、電気設備管理 、清掃及び廃棄物処理、ねずみ・昆虫等の防除などを2年以上おこなうと建築物環境衛生管理技術者の受験資格を獲得できます。

建築物環境衛生管理技術者の求人内容は?

ビル管理のスペシャリストである建築物環境衛生管理技術者の資格は、転職において有利です。国家資格として、能力が国に認められており企業のニーズも高いといえます。

では、建築物環境衛生管理技術者の資格保有者を求めている仕事や年収を紹介します。さらに、ビルメンテナンス業界で取得すべき資格も一緒に見てみましょう。

ビルメンテナンスの求人が多い

未経験でも転職できるビルメンテナンス業界ですが、一定の実務経験を証明できる建築物環境衛生管理技術者の資格保有者は大手企業への転職や好待遇での転職がしやすいです。ビルメンテナンス業界で働くなら、建築物環境衛生管理技術者のほかに取得すべき資格が4つあります。

第二種電気工事士・二級ボイラー技士・危険物取扱者乙種・第3種冷凍機械責任者は、ビルメン4点セットと呼ばれ、取得すると活躍できる範囲が広がるでしょう。また、設備関連の仕事でも、建築物環境衛生管理技術者やビルメン4点セットを保有しているとキャリアアップしやすいです。

年収500万円以上を目指せる

建築物環境衛生管理技術者の平均年収は300~400万円ですが、勤続年数や都道府県によって収入が異なり、年収500万円以上の人も少なくありません。

給料形態は、基本給に夜勤などの手当を上乗せするケースが多く、ボーナスが出る企業を事前に調べることで年収アップも目指せます。

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ビルメンテナンスにおいて建築物環境衛生管理技術者は有利

この記事では、建築物環境衛生管理技術者とは何か、資格の内容やキャリアアップについて解説しました。建築物環境衛生管理技術者とは国家資格を指し、建築物の維持・衛生管理における監督をおこなえます。

ホテルやビルなどの大規模な商業施設には、建築物環境衛生管理技術者の設置が必要です。就職や転職、昇給において、建築物環境衛生管理技術者の資格を取得することは有効な手段といえるでしょう。

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