吉田明代表取締役会長が記者懇談会でYKKグループ経営体制を説明

吉田明代表取締役会長が記者懇談会でYKKグループ経営体制を説明

【YKK AP】エクステリア分野に注力し、販工店の開拓にも意欲

樹脂窓好調で売上増

YKK AP株式会社はこのほど、記者懇談会を開催した。その席上、堀秀充代表取締役社長が2021年度の売上高は4475億円(前年比11%増)・営業利益は200億円(同8億減)の推計を発表した(※1)。

売上高が好調であったのに対し、営業利益が計画を下回るとの推計が発表された背景は、堀社長によると「資源高・材料高が収益でのインパクトを与え、操業でのコストダウン等の合理化をはかったが、メーカーにとっては厳しい一年であったと思う」とのことであった。

2021年では、住宅全体では高断熱化が進み、住宅事業の売上高は前年比9%増で、その中でも樹脂窓の売上高は前年比20%増と一気に伸び、予想を超える受注があった。納期では10月時点では最長39日、12月時点では最長23日の遅延があり、2月に回復する予定だ。また、アルミ樹脂複合窓も推定売上高前年比14%と同様に好調であった。

さらにリノベーション分野の売上高は、前年比14%増と追い風がさらに続く。古くなったマンションの窓を一戸単位で簡単にリフォームできる「マドリモ 断熱窓 マンション用」を2021年4月にリリースし、足場が不要で、安全な室内施工で約半日でアルミ樹脂複合窓への交換が可能である点が評価された。

売上高・営業利益等の2021年の業績を説明する堀秀充代表取締役社長

そのほか、エクステリア事業も建築と外構の一体設計提案や、業界初の持出式奥行4尺の「ルシアス バルコニー」を2021年12月に発売しており、事業全体で売上高前年比15%増で、ビル事業も売上高前年比9%増であった。

樹脂窓の製造面においては、現行の埼玉窓工場は操業10年を経て、新ラインを増設したことで全国11ラインの構築体制となった。樹脂窓生産能力では2011年度と比較すると、9.6倍となっており、樹脂窓シフトがさらに続く。

一方、ビル用アルミ建材商品の製造拠点として埼玉工場(ビル)建築計画も公表している。モノづくり改革により、社内の機械製造部門による合理化設備での集約生産、自動化工程の拡大、データ連動したラインづくりにより、製造コストを従来の25%削減する。次に、ユニットロード化やモーダルシフトによるロジスティクス改革も含め、発注からの納品までのリードタイムを約6日短縮し、生産性を向上させる体制を整備する。2023年9月に稼働予定であり、重点施策である『ビル事業の首都圏強化とモノづくり改革』を実現していく。

また、施工にかかわりの深い質疑応答の要旨は次の通りで、堀社長、松谷和男取締役副社長CHRO、山地慎一郎取締役副社長営業担当、魚津彰取締役上席執行役員住宅本部長が回答している。

※1 売上高他数字はすべて2021年4月~2022年3月の推計に基づく。


樹脂窓が好調の背景は「カーボンニュートラル」

――樹脂窓の生産の情勢は。

魚津彰氏(以下、魚津取締役) 納期の遅延は、受注増であることが要因です。背景には、「2050年のカーボンニュートラルの実現」に向けて、ビルダー、工務店、ハウスメーカーがかなり断熱化を意識されました。2021年には住宅ローン減税の駆け込み需要もあり、受注は7月以降、前年同期比で150%を超え、9月の前年同期比で190%でした。この後は少しずつ、落ちていくと思いますが、生産キャパが追い付かない状態でした。

――大手ハウスメーカーへの樹脂窓の拡販方針は。

魚津取締役 大手ハウスメーカーは、少なくともZEH(ゼッチ)をターゲットに入れています。これから、「HEAT20」の G2、G3に向かっていますが木造は有利です。特に、遮音性能をアピールするため、すでに5年来続けているハウスメーカーの展示場での採用をさらに増やしていきたい。「HEAT20」の G2、G3を体感したお施主様が樹脂窓の採用へのポテンシャルが高まります。今からG3を目指していくと、トリプルガラスの樹脂窓になりますから、そちらの方に仕様をシフトしています。

樹脂窓の販売が伸びると予測する魚津彰取締役上席執行役員住宅本部長

――現在、樹脂窓の比率は31%(※2)ですが、比率はさらに上がりますか。

魚津取締役 欧米での樹脂窓の比率は60%ですが、日本では個人的な意見で言えば40%くらいに留まるのではないでしょうか。次に2021年の売上では13%を占めたトリプルガラスですが、今後さらに伸びていくと考えており、供給・販売体制をしっかりと強化していく方針です。

※2 YKK AP住宅用窓の出荷セット数に占める樹脂窓の構成比率(2021年4 月~2022年3月度推定)

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「性能向上リノベの会」の会員目標は500社

――リノベーション分野も強化されることで、プラットフォーム「性能向上リノベの会」も設立されましたが、感触は。

山地慎一郎氏(以下、山地副社長) 性能向上リノベーション実証プロジェクトは全国で13物件ほど展開してきましたが、今後、「性能向上リノベの会」の会員を本格的に募って、ストック住宅の断熱化改修を進めていきます。現在、105社の会員がおり、会員に対してソフトや、性能証明などサポートメニューを用意しながら、会員の増強に努めていきたい。

現在、会員目標については500社ですが、会員をただ増やすのではなくストック住宅をよりよくするという意思統一を会員全体で図り、リノベーションの内容を充実する方針であり、手ごたえは十分に感じています。

「性能向上リノベの会」では会員を本格的に募ると説明する山地慎一郎取締役副社長営業担当

――来年では施工面ではどのように強化を図っていきますか。

松谷和男氏(以下、松谷副社長) 施工の取組みは、今のエクステリアを中心に現場施工の課題について、できるだけ技術を導入して省人化とともに、品質の向上を目指している段階です。また、建築にはいろんな施工バリエーションがあり、商材も含めて施工の技術チームを設置し、本格的に検討に入っている段階です。

「技術を活用し、施工を向上するチームを設置した」と語る松谷和男取締役副社長CHRO


価格改定はユーザーに丁寧な説明を

――住宅用商品・エクステリア商品・ビル用商品の一部を2022年1月から順次、値上げしたが、工務店などユーザーの反応は。

山地副社長 値上げについては発表したばかりで、ビルダーやハウスメーカーのそれぞれの年契約などいろいろな問題があり、1社1社丁寧にご理解をいただき、改定価格を今後、浸透する活動をしっかりとやっていきたい。

また、報道によると我々の業界だけではなく、あらゆる建材業界が資材高となっており、このトレンドが浸透していけば、業界全体の底上げになりますし、流通店もこの動向に期待感がありますので前向きに取り組んでいきます。

――資材の価格と連動して製品の価格を下げるお考えは。

山地副社長 公表価格を下げることはこれまで経験はありません。ただ、競争もありますので、今後の情勢に応じることはあります。

また、一部ハウスメーカーとは、契約上、市場連動型の契約を行っているケースもあります。アルミ材に加えて、電力、石油、鉄などの諸資材も同時に上がっているので、全体のバランスを取りながら公表価格設定を図っております。これから材料は上がるトレンドが続くと予測しています。

堀社長 補足しますと、材料が上がった分、すべてを価格に転嫁しているわけではありません。日々、コストダウンを進め、価格についても様々な努力を行っております。

――エクステリア分野を強化する方針だが。

山地副社長 数字的には1000億円の売上高を狙っていきたい。特に代理店や、その先の販工店の開拓も含めて目標数値を達成したい。その際、庭周りのガーデンエクステリア部門では、ハードだけではなく、外構の提案を強化していきたい。

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女性活躍で目標数値を設定した意図とは?

――資料では女性活躍推進で、管理職の数を2020年度の111名から2024年度には140名としておりますが、あえて数値目標を設定した意図は。

堀社長 もし本当に人事がまったく男女差別がなければ、女性のみに数値目標を設定する必要がありません。

やはり従来からの慣習で、当社が分析しても高齢男性者の管理職比率が高いという結果になっています。ここは是正すべき点であるからこそ、数値目標を設定しました。

少し古い体質があり、男性中心・年功序列が残っているため、いびつな比率になっているのが実情です。

――木製内窓は、断熱性能の高い木製の窓を取り入れられる点やデザイン性、質感などの面から、今後さらにニーズが高まると思いますが。

魚津取締役 木製内窓は、2021年7月より国産木材利用の活性化と開口部の高断熱化を促進するため、全国各地で木材の加工や販売を行う木材・木建具事業者と連携し、木製内窓の普及促進をサポートする取り組みを開始しています。今のところ10社ほどの会社が手を挙げており、話を進めております。

この取り組みの先行事例として、岐阜県・岐阜市の後藤木材株式会社が自社の技術を活かした木製内窓を開発・商品化するほか、鳥取県の会社で公営施設の断熱改修用途で商品化を検討しているところもございます。まず、手をあげていただければ、お互いの事業拡大のために進めていきたい。

――樹脂窓のリサイクルの方向性を示してください。

魚津取締役 樹脂窓は発売して、10年ほどですからリサイクルの対象になる商品があまり出ていません。

一方、製造では端材も含めて40%をリサイクルに使用していますが、これを2024年には目標として、製造部門と打ち合わせしていますが、70%までに向上したい。

――リサイクル分野については個社だけではなく、業界あげて取り組む課題であると思いますが、今後の意気込みをお願いします。

堀社長 私が理事長をつとめている一般社団法人日本サッシ協会は、東京大学のある先生と連携し、サッシのリサイクルをどうするかについてプロジェクトを立ち上げておりますので業界をあげて展開したい。今、企画を立ち上げステージの最初の部分に突入したところです。

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建設専門紙の記者などを経てフリーライターに。建設関連の事件・ビジネス・法規、国交省の動向などに精通。 長年、紙媒体で活躍してきたが、『施工の神様』の建設技術者を応援するという姿勢に魅せられてWeb媒体に進出開始。
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