鉄筋フックは90度ではなく135度。無知が招いた現場トラブル

「オイッ、間違ってるぞ!」鉄筋フックは90度ではなく135度。無知が招いた配筋ミスとは?

建設技術者は失敗を経験して育つ

若い建設技術者の場合、現場における「無知」がゆえにトラブルを招くことがある。

これは私がまだ若く、とにかく現場で走り回っていた時の話だ。

私はこの失敗をきっかけに、建設技術者として成長し始めた。

地中梁のスタラップ配筋でミス

あれは基礎・地中梁を施工中のマンション新築現場だった。地中梁の配筋写真を撮り終えて事務所に戻ると、所長が私に向かって「地中梁のスタラップの配筋が間違っているぞ」と言った。

私はその意味が分からず、所長の顔を呆然と見つめた。なぜなら、私の目には全く間違っているように見えなかったからこそ、先程まで配筋写真を撮っていたからだ。

しかし、所長が間違っていると言うので、頭をフル回転して配筋の状況を思い出した。が、一向に何が間違っているのか分かりらない。「鉄筋経」も「ピッチ」も間違えていない。一体、何が間違っているのか分からない。

私のアホ面を見た所長は「フックだよ。フックが間違っている。どうなってんだ!」と怒鳴ったが、それでも私の頭の中には、はてなマークが浮かんでいた。

90度のフックと135度のフック

その現場の地中梁は3m近くあったので、鉄筋屋さんがスタラップを2つに分割して加工してきていた。U字型の部分を上筋に引っ掛けて、上にキャップ型の鉄筋をかぶせる形式だ。その形式自体は特記仕様書にあるので問題なかったが、同じ方法で「スラブが取り付かない梁」にも施工していた部分が間違っていた。

つまり、スラブに取り付かない梁は、90度のフックではなく、135度のフックの必要があるのに、キャップ型の鉄筋の一方が90度だったのだ。今まで鉄筋のフックの形状なんて気にしたこともなかったので、配筋の状況を見ても間違っているとは思いもしなかった。

明日から型枠大工さんが乗り込んでくる予定なので、配筋をやり直すのであれば、工程にも非常に影響を及ぼす結果になる。ようやく私は自分の無知によって、重大なトラブルになっていることを認識した。

たかがフック、されどフック

それから、所長が設計事務所に確認したが、当然、現状ではNGという回答。様々なやり取りがなされた後、135度のフックを溶接で継ぎ足すという案に落ち着いた。所長や諸先輩方がやり取りをしている間、私はただ立ち尽くしているだけだった。

結果的に、鉄筋の上端筋周辺だけの手直しになり、工程に多大な影響を与えることはなかったが、この経験から私は「無知」ほど恐ろしいものはないという認識を植え付けられた。

たかがフック、されどフック、ぜひ同じ間違いをしないように気をつけて欲しい。

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大学工学部を卒業後、大手ゼネコンに入社。駅前再開発工事や大型商業施設、教育施設、マンションなどの現場監督を担当している30代の1級建築施工管理技士。新人時代の失敗で数千万円の損失を出した経験から、日々の激務に追われながらも、新人教育に熱意を燃やしている。現場でのケンカの回数は30回ほど。
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