建築材料としてよく耳にする言葉に、モルタルとコンクリートがあります。モルタルとコンクリートは見た目もよく似ていますが、それぞれの特徴に違いがあり、使い方も異なります。
この記事では、モルタルとコンクリートの違いを原材料や特徴、使い分けについて詳しく紹介していきます。
モルタル・コンクリート・セメントの違い
モルタルとコンクリートはどちらもセメントと砂、水を練り合わせた建築材料です。原材料が同じなので、見た目もよく似ています。
見分け方やそれぞれの特徴だけでなく、原材料であるセメントや、コンクリートと混同されがちなアスファルトとの大きな違いも紹介していきます。
モルタルとコンクリートの見分け方
モルタルとコンクリートを見分けるとき、色の違いはほとんどなく、見た目もよく似ています。なぜなら原材料がほとんど同じだからです。
では、どうすれば見分けることができるのでしょうか?
それは、表面の粗さです。モルタルはツルツルした表面ですが、コンクリートはザラザラした表面になっています。材料の少しの違いが表面の質感が違う理由です。
モルタルとは
モルタルは、セメントと砂と水を原材料としています。セメントと「細骨材」と呼ばれる砂を3:1の割合で混ぜ、水を加えて練ったものがモルタルです。モルタルは材料を混ぜ合わせるときには粘りがある性質を持っていますが、乾くと固まります。
柔軟性があるため、建物の外壁やレンガの目地材、タイルの下地に使用されることが多い材料です。職人が手作業で行うため、職人独自の味わいがあります。
コンクリートとは
コンクリートもモルタルと同じくセメントを原材料としていますが、モルタルとの違いは「砂利」です。「粗骨材」と呼ばれる砂利を使用します。
セメント1に対して、砂と砂利を3:6の割合で混ぜ、水を加えて練り合わせます。この「砂利」がザラザラする表面の原因です。
混ぜ合わされてすぐのドロッとした状態のコンクリートのことを「生コンクリート」や「フレッシュコンクリート」と呼ぶこともあります。
価格はモルタルのほうが高い
同じ量のモルタルとコンクリートを比較すると、価格が高いのはモルタルです。理由は、原材料であるセメントの価格が高く、セメントの含有率が高いモルタルが、必然的に価格も高くなります。
すべてはセメントから
モルタルとコンクリートの原材料にはセメントが使用されています。セメントとは、石灰石や粘土を焼き、粉砕した「粉」です。
セメントは水を加えると、化学反応を起こして固まります。この化学反応については、実はまだ解明されていないそうです。
このセメントに水を加えると固まるという性質が、モルタルやコンクリートをつくるときの「つなぎ」の役割を果たしています。
アスファルトにはセメントが入っていない
モルタルやコンクリートと似た材料と思われることが多いアスファルトですが、原材料が異なります。セメントを原材料とするモルタルやコンクリートとは異なり、アスファルトにはセメントは含まれていません。
アスファルトとは炭化水素の混合物で、「天然アスファルト」と「石油アスファルト」が存在します。国内では「石油アスファルト」のことをアスファルトと呼んでいます。
熱を加えると簡単に溶解することから、道路の舗装によく使用されています。
モルタルとコンクリートの強度
モルタルとコンクリートでは、どちらの強度が強いのでしょうか?原材料の違いである「砂利」がその強度の違いを生み出しています。
実は、強度だけならモルタルのほうが高いことを知っていますか?ここでは、なぜ一般的にはコンクリートのほうが強度が高いと言われるのかを詳しく紹介していきます。
また、コンクリートの圧縮力と引張力についても紹介していきます。
モルタルのほうがコンクリートより強度が高い
モルタルのほうがコンクリートより強度が高い理由は、セメントの比率です。セメントの比率は、モルタルがセメントと砂の割合が3:1なのに対し、コンクリートはセメントと砂と砂利の割合が1:3:6です。
モルタルのほうがセメントの比率が高いことが、強度が高い証明となります。では、なぜ強度が高いモルタルではなく、コンクリートのほうが建物に使用されているのでしょうか?
その理由を次で説明していきます。
モルタルはひび割れしやすい
モルタルには「ひび割れしやすい」という大きなデメリットがあります。ひび割れしやすい材料を柱や梁に使用するとどうなるでしょうか?
建物の基礎である柱や梁がひび割れしてしまっては致命的ですよね?この「ひび割れしやすい」というデメリットが、モルタルが建物に使用されない理由です。
また、モルタルはコンクリートよりも価格が高いことも建物に使用されない理由のひとつです。
コンクリートは圧縮力に強いが、引張力は弱い
コンクリートの特徴は、圧縮力には強いが、引張力には弱いことです。その差は10倍とも言われ、100キロの重さに耐えることができますが、10キロの重りで引っ張られただけでひび割れを起こします。
その対策として生まれたのが、「鉄筋コンクリート」です。「鉄筋」をコンクリートに入れることで、引張力が強いコンクリートになりました。
モルタルとコンクリートの使い分け
モルタルとコンクリートは、強度や表面の性質によって適した用途で使い分けをされています。
モルタルのやわらかくてツルツルした表面は仕上げ材や接着剤として、コンクリートは圧縮力の強さから、住宅の基礎や鉄筋コンクリートとして使用されています。
ここからは、モルタルとコンクリートの適した使い方について、理由とともに詳しく紹介していきます。
モルタルの適した使い方
モルタルはその柔軟性から、ブロックやレンガの継ぎ目の接着剤として使用されます。また、ツルツルした表面を活かすため、コンクリートの仕上げ材としても使用されています。外壁の下地や壁、床の上塗りにも使用されます。
駐車場や外構まわりの床にモルタルを塗ることで、見栄えが良くなるだけではなく、水はけも良くなるというメリットもあります。
駐車場にモルタルを塗る場合は、下地の整備が大切です。モルタルはひび割れしやすい性質を持っているため、下地が悪い場合は表面にすぐにひびが入るので注意しましょう。
コンクリートの適した使い方
コンクリートは、その圧縮力の高さから建物の壁や柱、梁といった建物の基礎部分に多く使用されています。さらに、弱点である引張力を解決するために、鉄筋を配した鉄筋コンクリートにすることで建物にも使用されています。
また、コンクリートが多く使用されている理由は、以下のメリットがあるからです。
- 現場に原材料を保管する設備が不要
- コンクリートを作るための特別な技術が不要
- 簡単に手に入る
このメリットにより、多くの建物にコンクリートが使用されています。
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モルタルとコンクリートの違いを理解し、適した使い方を
この記事では、モルタルとコンクリートの違いについて紹介してきました。原材料はどちらもセメントを使用していますが、比率の違いからそれぞれの特徴がご理解いただけたと思います。
モルタルはその柔軟性から、ブロックやレンガの継ぎ目の接着剤として使用されるだけでなく、ツルツルした表面を活かすために、コンクリートの仕上げ材としても使用されています。
コンクリートは圧縮力の高さから、建物の基礎部分に多く使用されているだけでなく、鉄筋コンクリートになることで弱点である引張力の弱さを克服し、建物に多く使用されています。
それぞれの性質を理解し、適した使い方をしましょう。