住宅にとって、土台となる基礎は重要な存在です。基礎の中でも布基礎は、強固にしたい箇所に鉄筋コンクリートを流し込む工法です。
今回は、布基礎について解説していきます。構造やメリット、ベタ基礎との違いや見分け方についても理解し、住宅に合った基礎を選択できるようにしましょう。
布基礎(ぬのきそ)とは
基礎には2種類あり、布基礎(ぬのきそ)とベタ基礎が存在します。
布基礎(ぬのきそ)とは、壁や柱の下に逆T字型のコンクリートを流し込む工法のことです。布のように細長い基礎を使用することから、布基礎と呼ばれるようになったと言われています。
基礎とは
建物の土台となる基礎。地震大国の日本において、基礎が果たす役割は重要なものです。建物の耐久性は基礎によって左右されるとも言えます。
基礎は、網目状の鉄筋にコンクリートを流し込んで作られる建材です。鉄筋の引張力とコンクリートの圧縮力を組み合わせて強度を上げています。
基礎の主な役割は、建物に掛かった負荷を地面に逃がすこと。そのほか、外の振動や湿気から建物を守る緩衝材の役目も果たしています。
布基礎の構造
布基礎の構造を表した図
布基礎は、基礎梁とフーチングから構成されています。フーチングとは底板のことです。フーチングを広くすることで、建物の沈下を防ぎます。基礎梁は、地震や日常生活の衝撃を受け流す役割を果たしています。
布基礎は、柱や壁の下に基礎を打ち込む工法です。そのため、上から見ると、柱を結ぶ線のように見えます。
基礎が無い部分には、湿気対策として防湿用コンクリートを敷き詰めますが、防湿用コンクリートには建物を支える強度はありません。つまり布基礎は、建物を面ではなく、点と線で支える構造になっています。
ベタ基礎との違いと見分け方
一方、ベタ基礎は、地盤全体に鉄筋コンクリートを流し込む工法です。布基礎とは異なり、ベタ基礎は床全面にコンクリートが敷き詰められることになります。つまり、建物を面で支える構造です。
面で支えることによって、荷重が分散されることから、布基礎よりも耐震性は上がります。耐震性の高さから、阪神大震災以降、日本での使用が急速に広まりました。
布基礎とベタ基礎の見分け方は、必要な部分のみコンクリート基礎が施工されている場合は布基礎、床全面に鉄筋コンクリートの基礎が施工されている場合はベタ基礎になります。
布基礎のメリット・デメリット
布基礎にはさまざまな特徴があります。布基礎は、建物を面で支えるベタ基礎と比較すると耐震性は劣ります。
しかし、布基礎はベタ基礎に比べ、壁を支える力に優れています。また、コンクリートの量が少ないため、コストも抑えられるというメリットもあります。
ここでは、布基礎のメリットとデメリットについて解説していきます。
布基礎のメリット
布基礎のメリットは大きく分けると以下の2つです。
- コストが掛からない
- 縦方向の荷重に強い
布基礎は、柱や壁の下といった特に負荷がかかる部分だけにコンクリートを流し込む工法です。床全面にコンクリートを流し込むベタ基礎と比較すると、コンクリートの使用量が少なくすみます。そのため、必然的にコストも下がります。
また、布基礎は逆T字型で縦長の形状で支えているため、縦方向の荷重に強い構造です。ベタ基礎と比べて、コンクリートの量が少ないことで、地盤への負荷が少なくなることもメリットと言えます。
布基礎のデメリット
布基礎のデメリットは以下の2つです。
- 害虫が建物に侵入する可能性がある
- 耐震性に劣る
布基礎は、地面の湿気が建物に伝わりやすいため、シロアリやムカデといった害虫が建物の中に侵入する可能性があります。シロアリが侵入した場合、柱が損傷して倒壊してしまう危険性も潜んでいるので、定期的な害虫駆除が必要です。
また、建物の荷重を面で分散できるベタ基礎と比べると、耐震性は劣ります。点と線で荷重を受けるため、地盤の強さにも左右されてしまうこともデメリットと言えるでしょう。
布基礎とベタ基礎で迷ったときは
耐震性だけで考えた場合、布基礎よりもベタ基礎のほうが優れていると判断してしまいがちです。しかし、すべてにおいて布基礎が劣っているわけではありません。
地盤の強さや予算、気候によって、どちらが適しているか変わってきます。条件に合わせて、どちらの基礎が良いのかを選んでいくことが大切です。
ここでは、各条件によって布基礎とベタ基礎のどちらが適しているのか、比較しながら見ていきましょう。
コストは布基礎が優勢
コストに関しては、布基礎が優勢です。コンクリートの使用量が少ない布基礎のほうが、材料費が少なくすむからです。
ただし、施工費に関してはほとんど差がありません。以前までは、ベタ基礎のほうが施工費が高い傾向にありましたが、ベタ基礎の普及にともない施工費も下がっていきました。
そのため、現在では材料費の分のみの費用差になり、30坪の基礎であれば、10万円程度の違いになります。
工期や工程は引き分け
工期に関しても差がほとんどありません。ベタ基礎のほうが、床全面に鉄筋を組んでコンクリートを打つ必要があるため、布基礎と比べると時間が掛かる印象があります。
しかし、布基礎は部分ごとの作業が必要なのに対し、ベタ基礎は一面に対する作業になるため、作業数としては布基礎よりも少なくなります。そのため、布基礎とベタ基礎の工期や工程はほとんど変わりません。
耐震性はベタ基礎が有利
耐震性はベタ基礎が有利です。ベタ基礎は、建物を床全面で支えるため、荷重を分散させることができます。そのため、耐震にも強くなります。
ただし、布基礎の耐震性に問題があるというわけではありません。布基礎は地盤強化や、底盤を広くするといった工夫で耐震性を高めることができます。
さらに言えば、ベタ基礎でも鉄筋の量が少なければ耐震性は下がります。どのような施工をしたかどうかで判断しましょう。
また、建物の耐震性は基礎だけで決まるわけではありません。地盤や建物全体で耐震性を考えることが必要です。近隣の建物の外壁にひび割れがあるかどうかを見るだけでも、その土地の地盤の参考になるので、チェックしてみると良いかもしれません。
湿気・シロアリ対策は点検口で確認
基本的に、湿気やシロアリに強いのはベタ基礎です。ただし、布基礎でも対策を打つことは可能です。地面が見える場所に防湿・防蟻シートを敷く、薄いコンクリートを流し込むといった対策を打ちましょう。
また、ベタ基礎であっても安心できるわけではありません。ベタ基礎であっても、植栽が外壁に常に接している、薬剤による防蟻処理をしていない木材を使用しているというように、対策を疎かにしていては意味がありません。
さらに、対策を打っているからと言って、完全に安心できるものでもありません。点検工からの定期的な確認が必要です。ベタ基礎であれば10年に1度、布基礎であれば3年に1回の頻度で、必ず確認を行いましょう。
寒冷地なら布基礎
寒冷地で建物を建てるなら布基礎がおすすめです。寒冷地では、気温が低い日は地面が一定の深さまで凍結します。地面が凍結すると膨張して、基礎部分を押し上げてしまいます。
その対策として、定められている基準が凍結深度です。凍結しない深さを基準とし、それ以上深い場所に基礎を作らなければいけません。
ベタ基礎は床全面を掘り下げる必要があるため、その分、施工費が上がります。また、残土処理の費用もかかります。そのため、寒冷地ではコスト面での比較で布基礎が有利といえるでしょう。
布基礎のメリットを理解して基礎を選ぼう
布基礎は、点と線で建物への荷重を支える工法です。耐震性ではベタ基礎に劣るものの、コストや寒さ対策では布基礎のほうが優れています。
基礎はその土地の地盤状況や予算、気候によって適した工法が変わります。布基礎のメリットやデメリットを理解し、自分たちの状況に適した基礎を選びましょう。
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