新築工事では、基礎工事の工程が重要です。完成後に基礎工事がしっかり行われたかを確認することは難しいため、施工は手順に沿って正しく行われなければなりません。
記事では基礎工事の意味について説明し、4つの種類や8つの工程について紹介します。
そもそも基礎工事とは?
基礎工事とは、土地と建物をつなぐ部分の工事です。建物の土台となるため、各工程を理解して正しく施工しなければなりません。
基礎工事には杭基礎やベタ基礎など4つの種類があり、土地の状態や建物の性質によって変わります。基礎工事の前に地盤調査を行い、その土地に合った工法を選ぶことが大切です。
ここでは、基礎工事の意味や工事の種類について見ていきましょう。
建物を支える重要な部分
基礎工事は建物の土台となり、長い間建物の重さを支える重要な部分です。基礎工事に問題があると、あとから修復することは難しいため、手順ごとに正しい方法で施工されなければなりません。
建物の施工期間は、一般的な住宅等の場合約6カ月で、そのうち基礎工事に要する期間はおよそ1カ月ほどです。各工程に専門知識と技術が必要であり、基礎工事を専門とする職人が施工するケースもあります。
基礎工事の種類
基礎工事は、軟弱な地盤を改良する「杭基礎」と、地盤に施工する「直接基礎」の2つにわけられます。
直接基礎はさらに「ベタ基礎」「布基礎」「SRC基礎」に分類され、それぞれにメリット・デメリットがありますが、どれが一番優れているというわけではありません。地盤や建物の状況などから、適切な工法を選ぶことが大切です。
杭基礎
調査によって地盤が軟弱であった場合、直接基礎工事を行うと建物が安定しません。そのため、地盤の固い部分まで杭を打つ「杭基礎」という工法が採用されます。
杭基礎の杭は、支持層まで到達させる支持杭と、支持層がない場合に杭側面の摩擦で支える摩擦杭があります。杭基礎は数メートル(支持地盤によっては数十メートル)の深さにある固い地盤まで杭を打ち込むもので、建物を安定させるだけでなく地震による液状化も防ぐものです。
杭基礎には、掘削した穴の中に挿入した鉄筋かごにコンクリートを流して杭を作る「場所打ち杭工法」と、既成の杭を打ち込む「既成杭工法」の2種類があります。
ベタ基礎
ベタ基礎は、床下全体にコンクリート打設(コンクリートを流す作業)を行い、床下空間を設ける工法です。建物を地面全体で支えるため安定性が高く、地震の揺れに強いというメリットがあります。
また、コンクリートともに設置した防湿シートが地中からの湿気を防ぎ、湿気やシロアリ侵入を防いで建物の寿命を長く保つことが可能です。
コンクリートを多く使いますが、次に紹介する布基礎より手間が省けるため、コストが高くなるわけではありません。新築から数年はコンクリートから水分が出るため対策が必要です。
布基礎
日本の木造住宅などで古くから行われてきた工法です。柱や壁など、建物の負荷がかかる部分にコンクリートを打設します。コンクリートの使用量が少ないためベタ基礎よりも軽く、地盤に負荷がかかりません。地盤に接する面積が小さく、比較的地盤の強い土地に適しています。
ただし、床下に湿気がこもりやすいため、防湿などの対策が必要です。
SRC基礎
蓄熱床工法とも呼ばれる工法です。ベタ基礎とは逆の仕組みで、床下空間がありません。床下に砂利やコンクリートを敷き詰める密閉構造で、コンクリートにH型鋼材を組み込むため強度が高いのがメリットです。
耐震性が高く、地震の揺れを吸収して分散します。床下がないため、湿気やシロアリなどの悩みもありません。また、地中からの熱を伝えやすいため、天然の冷暖房効果が期待できます。
基礎工事8つの工程
基礎工事は大きく8つの工程に分けられます。地盤調査から始まり、遣り方(やりかた)の設置や掘削工事、捨てコンの施工へと進む流れです。型枠工事やコンクリート打設を行い、養生を経て型枠を外します。
これら一連の工程を、ベタ基礎を例にして紹介しましょう。それぞれの工程でチェックすべきポイントがあるため、よく確認しておいてください。
1.地盤調査を実施
工事に着手する前に、地盤調査を行います。地盤調査とは、建物がどの程度の重さに耐え、沈下に抵抗する力があるかを調べることです。安全な建物を建てるためには不可欠な工程で、建て替えの場合にも行われます。施工会社は引き渡しから10年は瑕疵担保責任を負い、瑕疵担保の保険を申し込む際には地盤調査が必要になるからです。
地盤に問題がなければ、土地や建物に合った直接基礎を選び、地盤が弱いと判断された場合は地盤改良工事や杭基礎を行います。
2.遣り方を実施
調査により工法が決まったら、建物が土地のどの部分に建つのか示すためにロープなどで仮設の囲いをします。これを「遣り方」といいます。
建物の周りに木杭などを使い、基礎の正確な位置を決める重要な工程です。家を建てる位置を地面に記す縄張りや水平の印をつける水盛りとともに、実際の建物の位置や高さを示します。遣り方は、基礎コンクリートなどの動かないものに基準墨(基準を示す印)を移したあとに撤去します。
3.掘削工事
遣り方を終えたら、パワーショベルなどの重機で掘削工事を行います。基礎の底となる地盤まで土を掘る工事です。
掘削工事は数回に分けて行われ、土留め工事や排水など他の工事と同時に行われることが多く、基礎工事のなかでは比較的時間がかかります。掘削作業で既設配管が見つかった場合は、手掘りを行うなどの対応が必要です。
4.砕石を敷く
掘削工事が終わったら、建物の基礎を配置する地面に「砕石(さいせき)」と呼ぶ細かく砕いた石を敷き詰めます。「地業」という作業で、従来は割栗石という石材を利用していました。 機械で「転圧」という作業を行い、石の密度を高めて地面を固めます。
砕石を敷いて地面を固めるのは、このあとに乗せる基礎部分の重さを地盤に対し均等に伝えるためです。この工程が不十分の場合、建物の負荷で基礎が沈下する可能性があるため、しっかり行わなければなりません。
5.捨てコンを施工
砕石を固めた地盤の上に地面からの湿気を防ぐ防湿シートを敷き、基礎の外周部に「捨てコン」を流し込みます。
捨てコンとは、建物の建築位置を間違えないようにするために印をつけるキャンバスのようなものです。基礎の強度とは関係ありませんが、工事を進めるうえで大切な作業です。コンクリートが乾いたあと、「墨出し」という基準線を引く作業を行います。
6.鉄筋や型枠の工事
次に、格子状の鉄筋を組み立てる配筋工事を行います。基礎は鉄筋コンクリートで作るため、配筋は鉄筋コンクリートに必要な鉄筋を図面通りに組み立てる作業です。配筋は基礎の強度に直接関わる重要な工程であり、法律でも細かいルールが定められています。
さらに、コンクリートを流すために型枠を作る作業が必要です。捨てコンに描いた墨出しをもとに作ります。
7.コンクリートを打設
基礎のベースとなる部分に、コンクリート打設を行います。ベースが乾燥したら基礎内部の立ち上がり部分に型枠を組み、さらにコンクリートを流すという作業が必要です。
立ち上がりとは基礎の高さにあたる部分で、コンクリートを流し込んだらバイブレーターと呼ばれる振動機を使い、コンクリートを隅々まで行きわたらせます。
8.養生して型枠を外す
コンクリート打設が完了したら、ブルーシートで覆って養生をします。養生とは適度な温度や湿度を保ちながら、コンクリートを外部からの衝撃や風雨などから守ることです。コンクリートが十分な強度を発揮するための大切な工程であり、慎重に行わなければなりません。
コンクリートが強度を出すまでの期間は気温に左右され、夏は3日程度、冬は5日以上の期間が必要です。
基礎工事に役立つ資格
基礎工事のために特に必要な資格はありませんが、あれば役立つ資格はいくつかあります。資格があることで、顧客の信頼も高まるでしょう。基礎工事に関連する資格や免許は次の通りです。
- 基礎施工士:基礎工事のうち、場所打ちコンクリート杭工事に従事する技術者の技能を認定する
- 玉掛け技能講習:クレーンなどの重機を操作する際に必要になる資格
- 床上運転式クレーン限定免許:つり上げ荷重5トン以上の床上運転式クレーンを扱える
- 車両系建設機械運転技能講習:機体質量3トン以上の建設機械を扱える
基礎工事は住宅の土台として大切!
基礎工事は建物の土台となる重要な部分です。完成してから確認できるものではないため、各工程ごとに正しい方法で行わなければなりません。地盤が弱い場合は地盤改良工事や杭基礎による基礎工事が必要です。
通常の地盤でもベタ基礎や布基礎、SRC基礎などの種類があり、地盤の状況や建築する建物の内容により適切な方法を選ぶことが大切です。