世界最大・連続斜張橋プロジェクトは「ハリの穴を通すような」仕事?

世界最大・連続斜張橋プロジェクトは「ハリの穴を通すような」仕事?

最終的にカタチになれば、その苦労もやりがいになる

阪神高速は国土交通省とともに、「ゴッツ渋滞する」神戸線の迂回ルート確保などを目的に、大阪湾岸道路西伸部事業を進めている。同事業には、世界最大規模と目される連続斜張橋の建設も含まれる。

この事業を巡る協議調整ごとを主に担当する神戸建設部企画課のお二人に取材する機会を得た。阪神高速に入社した理由、今のお仕事の様子、阪神高速の魅力などについてお話を聞いた。

奥西 史伸さん(阪神高速道路株式会社 建設事業本部 神戸建設部企画課長)

八木 博嗣さん(阪神高速道路株式会社 建設事業本部 神戸建設部企画課課長代理)

鉄道マニアならぬ道路マニア

――土木に興味を持ったきっかけはなんでしたか?

奥西さん 漠然とではありましたが、大きな構造物、とくに「橋」に興味を持っていたことから大学では土木を選びました。

八木さん 私は、小さいころから道路が好きな、ちょっと変わった子どもでした(笑)。気がついたら、道路の絵を描いたり、地図を見たりしていました。鉄道マニアならぬ道路マニアという感じでした。そのまま、大学に進んで、土木を学びました。単純に道路が好きだから、土木を選んだということですね。

阪神淡路大震災で被災

――大学では土木のなにを学びましたか?

奥西さん 研究室では、地震時における地盤と地中構造物との動的相互作用に関して、数値計算手法を用いた研究を行っていました。橋梁ではなかったんですけど(笑)。

大学3回生のときに阪神淡路大震災が発生し、神戸の下宿先が被災しました。電気や水道などがすべて止まり、生まれて初めて生活すること自体に困る経験をし、また様々な社会インフラが実際に壊れる姿を目の当たりにし、日常が絶対ではないことに大きな衝撃を受けたことを強く記憶しています。

八木さん 大学では道路交通系の研究室への配属を魅力的に感じていましたが、最終的には河川に関する研究室に入りました。河川が氾濫した場合の都市洪水について、数値シミュレーション、水理模型実験での検討といったことをやっていました。

阪神高速は、橋梁のイメージが強かった

――就活はどんな感じでしたか?

奥西さん 当時の就活は今とは違い、ある程度学内で調整されていたと思います。当時も橋梁に対する未練はあり、業態についてはどうしようかと迷っていました。そんなときに阪神高速という会社を知り、橋梁のイメージが強かったこともあり、できれば橋梁に特化した仕事に関わりたいとの思いのもと、最終的に「ここしかない」ということで入社を希望しました。

八木さん さきほども触れましたが、とにかく道路が好きでした。とくに、地図を開いて、どこに道路を通すかを考えるのが好きだったので、新しく道路計画を立てる仕事に就きたいと考えていました。

あと、道路の中でも高速道路が好きでした。父親の実家が愛媛で、子どものころはフェリーで帰省していましたが、1日がかりで大変な思いをしました。その後、瀬戸大橋が架かり、内陸部の高速道路も整備されたことで、どんどんと移動時間が短くなり「高速道路ってスゴい存在やなあ」と思うようになりました。

そういうことで、高速道路会社である阪神高速に入社しました。民営化で、ちょうど公団から株式会社になるタイミングでした。

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連続斜張橋でやっと橋に携われた(笑)

――これまでで印象に残っている仕事はなんですか?

奥西さん いろいろありますが、最近では、今現在関わっている大阪湾岸道路西伸部事業です。以前配属されていた部署で、これほどの大きなプロジェクトに当社が参画するタイミングで携わることができた仕事、という意味で大変印象深いです。

あとは、入社時に配属された部署で、保全の仕事に携われたことです。学生時代、保全という仕事に対してあまり意識することがなく、実際に仕事に携わってみて、メンテナンスという仕事の大変さ、大切さ、奥深さに気づかされました。現場部署ではありませんでしたが、私自身数少ない保全部門の経験の一つとなりました。

その他、工事事務所での経験は今でも非常に大きな糧になっていると感じています。街路での工事規制を張るための協議からスタートし、橋梁基礎・橋脚・上部工事と、幸いにも一連の橋梁工事の行程に関わることができたことは、今でも貴重な経験となっています。

――久しぶりに橋梁建設の仕事に関われたという感じですか?

奥西さん そうですね。大阪湾岸道路西伸部の事業は、阪神高速としても、久方ぶりの長大橋建設プロジェクトになります。「橋をやりたい」と入社したことを久しく忘れていました(笑)。

京都線のランプ名称に思いを巡らせた

鋼製橋脚耐震工事基部補強鋼鈑取付出来高検査中の八木さん(阪神高速写真提供)

――これまでで印象に残っているお仕事は?

八木さん 民営化前後の入社当時が一番思い出深いですね。民営化後、会社は新たな枠組みで事業を行うことになったわけですが、会社としても初っ端のタイミングで手探り状態のなか、国からの事業許可とか、高速道路機構との協定締結といった仕事に携われたのは大きな思い出です。

あと、2年目に供用直前の阪神高速京都線に携わったことも、印象深い仕事です。ランプの名前を決めるに際し、その素案づくりに携わったのですが、一部のランプでは自分が素案を考えた名称が、最終的に採用に至り今も地図に残っています。京都市は私の地元なので、スゴく嬉しいことです。

また、保全工事事務所での耐震補強工事やリニューアル工事の経験も印象深いです。リニューアル工事では、路線を一定期間通行止にして舗装補修やジョイント取替を行うのですが、ジョイント段差での走行騒音の解消のため、路面に這いつくばってジョイントの設置精度を確認しました。工事終了後、実際に走行騒音の解消を体感できたときの達成感は忘れられません。

「針の穴を通す」ような心境

――今のお仕事について、教えてください。

奥西さん 企画課の業務としては、事業を進めていく上で、社内の様々な部署はもとより、外部の関係機関との協議調整を行うことが主な仕事となっています。

われわれ事業者の立場として、早期に道路をつなげることは大切な役割の一つです。計画では海上部を通すことになっていますが、非常に技術的に難易度が高くなりますし、そうした技術的な課題を着実に克服していくことも重要です。さらに、そうした技術的裏付けのもと、コストにも十分留意しながら事業を進めていくことも必要で、その両輪のバランスも非常に大切だと意識しています。

八木さん 私も課長と同じ気持ちでやっています(笑)。共同事業者である国土交通省や自治体との協議・調整のほか、大阪湾岸道路西伸部事業を広く知っていただくための広報などを担当しています。

ヒト、モノ、地域の架け橋となる事業にしていきたい

連続斜張橋の模型(阪神高速提供)

――阪神高速の社員にとっても、期待が膨らむプロジェクトだと思いますが、今の仕事のやりがいについてどうお考えですか?

奥西さん 多くの若い社員が様々な課題に直面しながらも、事業を前に進めようと日々奮闘している姿を目の当たりにしています。私の役割としては、そうした社員の思いを早くカタチにするための基盤づくりにあるとも考えています。今経験している技術をこれからしっかりと継承していく大切な存在ですので、実務的な経験をどんどん積めるような環境を早期に整えることも大切だと考えています。

また、この事業は、阪神高速だけの事業ではありません。多くの関係者の方々のご理解、ご協力の上で成り立っている事業であり、われわれはその1パートでしかありません。まさにヒト、モノ、地域の架け橋となるような道路になれば、とそういったところにやりがいを感じているところです。

八木さん これだけ大きなプロジェクトに関われる機会はそうはないと思っています。その分調整ごとで苦労をすることも多いのですが、最終的にカタチにできることを思えば、その苦労がやりがいになっていくのかなとは思っています。イベントを担当している立場上、住民の方から「いつできんの?」といった声をよく聞きます。地元の方々からたくさんの注目を集める事業に携わっていることも、やりがいになっています。

社内の風通しが良く、なにかと動きやすいのが魅力

大阪湾岸道路西伸部事業として現在行われている駒栄工区開削トンネル工事の様子(阪神高速提供)

――阪神高速という会社の魅力はなんですか?

奥西さん 月並みかもしれませんが、自分の考えや思いを比較的発しやすいところかと感じています。社内の風通しの良さが、私にとっては魅力的です。また、社員がチャレンジすることに対しても柔軟な姿勢で受け入れてくれる環境もあり、なにかと動きやすい職場環境だと思っています。

八木さん 道路の老朽化がニュースにもなっている通り、道路事業の主軸が建設事業から改築更新、修繕といった事業に移り変わりつつある昨今ですが、阪神高速では、大阪湾岸道路西伸部のほかにも、淀川左岸線2期や延伸部といった新規建設事業も進めています。それが魅力だと思います。これだけの大きな建設事業が、しかも複数同時に動いているというのは、当社ならではのことなのかなと考えています。

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