株式会社sizzleの樋口大介氏

株式会社sizzleの樋口大介氏

見落とされがちな”営業職の残業問題”に、建設会社はどう対応すべきか?

働き方改革の波は建設業にも押し寄せています。

建設業といえばかつては、「バンバン仕事して、がっつり稼ぎたい!」という職人の希望を叶える夢の業種というイメージがありましたが、時代とともにそのような風潮はすっかり薄まり、働き方改革によって今や職人であっても給与や待遇などにおいて一般企業の社員と変わらない条件で働くことも十分可能になりました。

その一方で職人以外の建設業従事者、とりわけ営業職に関しては、いまだに残業や休日出勤などが常態化しているところも少なからずあります。同じ建設業でも職人に対する働き方改革には積極的に目が向けられていますが、それに比べて営業職はいささか遅れをとっている印象が否めません。しかし、時間外も休日も関係なく顧客対応に追われる営業職こそ、実は働き方改革が必要なのではないでしょうか。

そこで今回は、このように意外と見落とされがちな”建設業の営業職”の働き方を少しでも改善すべく、営業職の心理的・物理的負担を軽減する画期的なツール「sizzleスカウター」を開発した株式会社sizzleの樋口大介氏に話を伺いました。

物理的にも心理的も疲弊している建設会社の営業職たち

――会社設立の経緯を教えてください

樋口さん 株式会社sizzleを立ち上げたのは昨年の4月になりますが、私はもともとWEBマーケテイングの会社を10年近くやっておりました。

事業内容としては、お客様企業のホームページに人を呼び込むためのさまざまな施策を提案するというもので、ホームページの制作や分析、ホームページ内にあるコラムなどの運用領域のライティングなど幅広い業務を行っていました。そして、たまたまなのですが私たちのお客様は建設業の方が多く、彼らからは集客の相談以外にも経営や採用の悩みなど、多岐にわたる相談を受けていました。

日々多くの建設業の経営者と接する中で、建設業の抱える問題をリアルに知るようになりましたが、人材面に関してはとりわけ営業職や施工管理など、職人以外の人たちが疲弊しているような印象がありました。というのも、営業職や施工管理などは顧客との関係構築や情報管理などが属人的になりがちなので、たとえば働き方改革の一環で残業を減らすにしても、業務内容を効率化することが現実としてなかなか難しいのです。

さらに、営業職に限っては残業や休日出勤などの物理的な負担だけではなく、日々新しいお客様と接し、選ばれる一社になるために必死で営業トークを繰り広げてなんとか成約に繋げるという重大なミッションがあります。これはやはり相当なプレッシャーかと思います。このように考えると、営業職は物理面だけではなく心理面でも負担が大きいですよね。このような状況に対して私たちのスキルでできることはないかと考え、営業職の方の心理的負担を軽減するツールとして「sizzleスカウター」を思いついたわけです。

――「sizzleスカウター」は具体的にどのような機能をもったツールですか?

樋口さん 「sizzleスカウター」のことを私たちは”営業職のカンニングペーパー”と言っています。

具体的には、自社にWEBから問い合せをしてきたお客様が”何にどれくらい興味を持っているのか”を可視化したレポートを即時に発行するツールになります。

sizzleスカウターのレポート画面

サンプルレポートをお読みになればわかると思うのですが、レポートには

  • お客様の見込み度
  • お客様の性格
  • 興味があるコンテンツランキング
  • コンテンツ閲覧の履歴

などがわかりやすく載っており、営業に挑む前に読めばお客様の心をグッと掴む最適な営業トークが可能になるので、「これから会う人は何に興味があるんだろう」という、会う前の不安を軽減することができます。

レポートからはお客様の興味がどのように移り変わり、どこで盛り上がり、そしていかにしてお問い合わせに至ったかという気持ちの変遷が追体験できるので、お客様の心の内をそっと覗きこむようで何だかドキドキしちゃいますよね(笑)。会う前の不安どころか、「このレポートの人は実際にはどういう人なんだろう?」というワクワク感も生まれるかもしれませんよね。

営業って”楽しい仕事”のはず

――このような顧客分析ツールは、これまでに前例のないものなのでしょうか?

樋口さん 実はこのような分析ツールは他にもあるのですが、ほとんどが専門的な知識を持った人ではないと読み解くことができないような複雑なレポートになっています。それはマーケティング担当の専門職の方などが読み解くような仕様になっているので、専門知識のない営業職の人がいきなり見てわかるようなものにはなっていません。しかし、「sizzleスカウター」は誰が見てもわかるように、表現をシンプルにして親しみやすい仕様にしています。私たちは、ツールというものが使い手にとってストレスなく使用できること、すなわちユーザビリティも開発する上で大切な視点だと思っております。

――レポートがあることによって心理的負担軽減が解決され、やがてワクワク感も創出されるわけですね。

樋口さん まさにワクワク感の創出こそ、私たちが一番やりたかったことなのかもしれません。

営業って、そもそも楽しい仕事だと思うんですよね。初めての人と会い、新たに関係を構築していくって、実はものすごくエキサイティングじゃないですか。営業の方にとっては仕事が取れるかどうかの死活問題なので、そんな悠長なことも言っていられないのかもしれませんが、プレッシャーの中でも「人と会うのは楽しい」という思いが少しでもあれば、日々の仕事に対してよりポジティブに向かい合えるような気がします。

成約率と営業にかけた時間は比例しない

――すでに正式なリリースから半年近くで100社近くが導入、そのうち40社ほどが建設業とのことですが、どのような反応をいただいていますか?

樋口さん たとえば自然素材の家を提案している工務店のお客様は、レポートの閲覧履歴からお客様の求めるデザインの傾向を知ることができるとおっしゃっています。この工務店のホームページは事例やブログが充実しているので、サイトに訪れる人の平均滞在時間が長く、みなさんしっかりと読み込んでから問い合わせをしていることがわかります。閲覧履歴にはページごとの滞在時間も出るので、どの事例やブログを熱心に読んでいるかということがわかります。これから家を建てようとしているお客様の求めるデザインやテイストが事前にわかっていると、商談時に的確なアプローチができるので成約に繋がりやすいですよね。

また、建設業ではないのですが、とある大学進学塾では、資料請求をした方に電話で営業を掛けて無料面談に繋げるというフローで営業しておりますが、sizzleスカウターを導入してから、「塾のどの強みを読み込んでいるのか」「どの講師に興味を持っているのか」などがわかるようになったので、相手が興味を持っているポイントに対してアプローチすることによってアポイント獲得率が約5%向上したそうです。

レポートの活用方法は使い手の数だけあると思っています。sizzleスカウターは自由度の高い柔らかいツールなので、まずは使ってみて、それから最適な活用方法を見つけていただきたいですね。

――働き方改革の一環として残業規制も進められていますが、「sizzleスカウター」は営業職の時短にも貢献できるツールでしょうか?

樋口さん 残業規制は他業種ではすでに適用されていますが、猶予期間が設けられていた建設業でも2024年4月からは適用となるので、現場はいよいよ厳しくなってくるかと思います。

職人に関しては仕事が終わる時間はある程度決まっていますが、営業や事務の方はなかなかそうもいかない。特に営業の方は、熱心であればあるほど会社にいつまでも残って営業戦略を立てたり顧客分析をしたりということが往々にしてあります。しかし、「sizzleスカウター」があることによって、ここの部分も解決できるのではないかと思っています。

私たちは成約率と営業にかけた時間は比例しないと思っています。短い時間で効率よく顧客のニーズを読み取り、いざ商談となった時に相手の心をグッと掴む営業トークを展開できる、それが理想ですよね。しかし現実は営業が時間をかけてヒアリングをして、属人的な方法で顧客のニーズを引き出しています。

しかし、「sizzleスカウター」があることによって、このプロセスを短縮することができると思っています。私たちが「sizzleスカウター」を営業のカンニングペーパーと言っているのは、まさにそこに時短効果が含まれているという理由もあるからです。もっとも本当のカンニングのように後ろめたいところは一つもないので、堂々とレポートをご活用いただければと思います(笑)。

建設会社の営業職も「見よう見まね」では育たない

――他にも建設業の営業課題に対して「sizzleスカウター」で解決できることはありますか?

樋口さん たとえば、採用に関しても貢献できる部分もあるかと思います。

近年の建設業の人手不足は深刻な問題とされていますが、若い世代が流入しない理由の一つとして、「スキルの獲得に時間がかかる」というイメージがあるからではないでしょうか。

技術職に関しては「一人前の職人になるためには5〜10年かかる」と言われていますが、営業職や施工管理に関しても見よう見まねで先輩のやり方を真似し、顧客情報やナレッジの引き継ぎも属人的に行われるという方法が主流です。これではいつまでたっても人が育ちませんよね。

しかし「sizzleスカウター」があることによって、営業経験が浅いスタッフもスキルのレベルに関係なく顧客のニーズを知ることができるようになります。先輩社員が何年もかけて習得した営業スキルがオープンになり、新入社員であっても長い下積みもなく戦力になることができるので、人材不足の解消にも繋がるのではないでしょうか。

――働き方改革とDXは切っても切れないので、このように一つのツールをきっかけに、社内の働き方改革が推し進められるということも十分にあり得ますね。

樋口さん この先も建設業の課題は尽きないと思います。「sizzleスカウター」は営業の働き方を改善するための一つの提案ですが、私たちはまだまだこれからも「sizzleスカウター」に続く画期的なツールを開発して、建設業の働き方改革とさらなる発展に尽力していきたいと思っています。

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毎日の仕事に「ワクワクする【あたりまえ】をつくる」をミッションに2022年4月に設立。
WEBマーケティングの知見とプログラミングスキルを組み合わせ、顧客との関係構築に悩む営業職に向けた顧客分析ツール「sizzleスカウター」を2023年5月にリリース。営業職の負担軽減と建設業のDX化に貢献すべく、日々新たなサービスを鋭意開発中。
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