大和ハウス工業の熱中症対策 10月まで暑さは続く
日本に四季があったのは、もはや昔の話で5月~10月まで暑さは続く。地域によって異なるが、東京の現場では体感気温が40度を超えるときもある。今年は比較的冷夏であったものの、工事現場での大きな悩みは熱中症防止対策だ。
厚生労働省や建設業労働災害防止協会は、熱中症防止対策として「熱中症防止対策アメ」「塩アメ」「冷たい部屋で定期的に身体を休める」ことなどを推奨しているが、それでも熱中症に起因する死亡災害は、建設業が全産業の半分を占めるという驚愕なデータがあるほどだ。
そんな中、大和ハウス工業東京本店建築事業部は、「1人も熱中症患者を出さない」という強い意志のもと、「熱中症対策自動販売機」を建設現場に試験的に設置した。その自動販売機では通常130円のポカリスエットを、なんと50円で販売。ネットでも大きな反響を呼んだ。また、空調服の普及も現場で進めている。
こうした先進的な熱中症防止対策を行っている大和ハウス工業東京本店建築事業部の現場の1つ、神奈川県川崎市「(仮称)殿町プロジェクトホテル棟新築工事」で作業事務所長を務めている、大和ハウス工業東京本店建築事業部工事部の権藤繁雄作業事務所長に話を聞いてきた。

「(仮称)殿町プロジェクトホテル棟新築工事」大和ハウス工業東京本店建築事業部工事部の権藤繁雄作業事務所長

「(仮称)殿町プロジェクトホテル棟新築工事」の現場
自販機ポカリ50円はネットでも大反響、東京本店建築事業部25現場で導入
自動販売機でのポカリスエット50円はネットで大きく反響を呼んだ。「これぞ熱中症対策の醍醐味」「ウチの現場にもお願いしたい」「工事現場への思いやりとして素晴らしい試み」などの声が上がっている。
この点について、権藤作業事務所長はこのように語る。
「これは大和ハウス工業全体ではなく、東京本店建築事業部工事部管轄工事現場だけの取組みです。工事部の諏訪和美統括部長が熱中症防止対策として、ポカリスエットを自動販売機で50円で販売してみないかと提案し、大塚製薬様と相談した結果、実現の運びになりました」(権藤作業事務所長)

現場事務所に設置された「熱中症対策自動販売機」 一気に2本購入する作業員も
ポカリ50円の「熱中症対策自販機」の前で待機し、現場作業員に話を聞いてみたが、本当に評判は上々。
「最高ですね。安い。2本買います。水分取らないと熱中症になります。現場は40度になりますので助かります」
ほかの作業員も次々と購入する。
「本当に安くて助かりますね。この自動販売機で購入するのは自腹なので、安ければ安いほどいいです。こういう現場はもっと増えればいいですね」
「だいぶ助かります。毎日買っています。ポカリスエットはすぐなくなります。毎日自販機担当の方が補充に来ているようですが、近所の人も買いに来るんではないでしょうか。ポカリスエットがなくならないと、他の飲料水は買わないでしょうね」
「あ、ぬるいな。入れたばっかりか」と独り言を言う作業員もいた。それだけ回転率が高い。現場作業員は、本当に助かっているようだった。
「東京本店建築事業部管轄の25現場に今夏から作業員のサポートのためにこの自動販売機を設置しています。当現場では、すぐ売り切れるため、自販機担当の方が毎日補充しにきてくれます」(権藤作業事務所長)
この試みを拡大するお考えはと質問してみると、「今回は試験的に導入しました。今後については検討中です」とのこと。ぜひ、このモデルが全国で拡大していくことを願うばかりだ。
しかし、130円のポカリスエットを50円で販売すれば当然赤字になる。差額分は会社負担という画期的な福利厚生だ。
ちなみに、「熱中症対策自販機」という聞き慣れない自販機だが、これには一定の定義がある。
大塚ウエルネスベンディングに聞いたところ、「熱中症対策自販機と称するには、一定量のナトリウムを含む必要があります。水やお茶は販売できないものの、建設現場などへの導入が増えてきています。そこでポカリスエットの出番になります」「自動販売機ですと冷やす手間がかかりませんし、熱中症防止対策への企業の意識が高まり、作業員への福利厚生という観点から建設業界を中心に注目されています」と説明してくれた。
熱中症防止対策として「塩アメ」をなめることが推奨されているが、暑い中で「塩アメ」を舐めるのを嫌がる作業員も少なくない。そんな中でポカリスエットを50円で販売することは、熱中症防止対策の救世主とも言えるだろう。