建設業界の人手不足に対する危機感は、所詮その程度

建設業界の人手不足に対する危機感は、所詮その程度

建設業界はずっと人材の引き抜き合戦

人手不足になって久しい、建設業界。

大手の建設会社や建設コンサルタントはもちろん、自治体や独立行政法人なども必死になって建設技術者などの採用・確保に力を入れている。

引き抜いては引き抜かれ、出し抜いては出し抜かれ…のオンパレードだ。

建設業界の人手不足は今に始まったことではない。かれこれ10年以上、「建設業界は人手不足だ」と言われ続けている。

本気で人が欲しいと思っているのか?

10年以上前から「人がいない」と言われ続けている建設業界だが、これまで人手不足と本気で向き合ってきたのか?と疑問に思うところもある。

以前、某中堅ゼネコンの現場所長が話していたことを思い出した。

当時私はある建設コンサルタントに勤務していて、某中堅ゼネコンから委託を受けて、トンネル工事現場の設計支援をしていた。

そのゼネコンは建設業界ではとても有名な企業で、ある日そこの現場所長から「一度、現場を見に来てよ」と言われ、社長や同僚とともに現場に向かった。夕方、現場事務所に到着すると、さっそく所長室に通され、現場の説明を受けた。

そのとき、所長が「若い人がとても少なくて困っている。会社をあげて採用活動に取り組んでいるけど芳しくない」と話していた。「工業高校に的を絞り、県内の土木系学科のある工業高校を1つずつ回ってアピールしている」という。

私の上司が「御社だったら知名度があって有名だから、人が殺到するのでは?」と聞くと、所長は「いやいや、そんなことないんですよ。大卒や高専卒といった学生は、スーパーゼネコンや大手のコンサル、公務員に取られてしまっている。だから、工業高校に的を絞ってやってます。工業高校卒も捨てたもんじゃないんですよ。十分戦力になるんで」と言っていた。

私はその現場があった県内の工業高校土木系学科の卒業生だったので、所長から「誰かいない?いたら紹介してよ」と言われ、この人は本気で人が欲しいって思っているんだろうか?と疑問に思いつつも、苦笑いで「探しておきます」と空返事をしてその場を終えた。


結局、人任せな建設業界

以前勤務していた会社でこんな話を聞いたこともある。

その会社も「準大手ゼネコン」と呼ばれるほど有名企業だったが、ある年の土木系新卒者の採用人数が一桁だったというのだ。

数名しか採用枠を設けていなかったわけではなく、採用人数は30人程度を定員にしていたが大惨敗。もちろん採用活動には全社で注力しており、OBを大学に送り込み、説明会を開催するなど精力的にアピール活動をしていたそうだ。

だが、この会社の人事部も、はたから見ていると本気でやっているのか疑問だった。大学を訪問したり、OB訪問をさせたりするのはいいが、前述した某中堅ゼネコンの所長と同様、採用に対する「熱意」が感じられなかったからだ。

それは現場でも感じることで、口先では「人がいない、人が足りない」と言うものの、「人材紹介会社に聞いてみよう、派遣会社に聞いてみよう」と人材会社にあたってはみるが、結局そこで行動するのをやめてしまっている。

人材会社あるいは求人サイトにお金を払って、採用できなければ相手のせいにするだけ。つまり、人を探しているようで、本気で探そうとしていないのだ。

その姿を見て私は会社にも人にも幻滅してしまった。人手不足の現状に対してどこか他人事で、責任放棄しているようにしか思えない。

本気で人を採用したいのであれば、例えば広報や人事の体制を刷新する、労働環境や勤務形態を見直す、給与や福利厚生などの待遇面を改善するなど、やれることはまだまだあるはずだ。

建設業界の人手不足に対する危機感は、所詮まだその程度ということだ。

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