空間の木質化によるマンションリノベーションを提案

空間の木質化によるマンションリノベーションを提案

【三菱地所ホーム】空間の木質化の新商品。初弾はマンションリノベーション

三菱地所ホーム(東京都新宿区)は、木を活かすことで住まいの居心地のよさを追求した空間の木質化を提案する新商品「KIGOCOCHI(キゴコチ)」の販売を2023年10月から開始した。

同商品の第1弾は、マンションリノベーション。三菱地所グループのリフォーム事業ブランド「三菱地所のリフォーム」で、木と共生する暮らしを体験できるショールームを、横浜市みなとみらいに10月14日にオープンした。

「KIGOCOCHI」は、表面的に木を使用するだけではなく、家の中に木に包まれた「水回り」「キッチン・家事・スタディスペース」「玄関・寝室」で構成する3つの木の塊「コア」を機能的にレイアウト。マンションの間取りに「木」で自由にレイアウト可能となっている。

狭い廊下と閉じた都市部の住宅空間の従来の間取りにとらわれず、柔軟で回遊性の高い空間を実現。人間が木に囲まれ、大木によりかかった時に得られる居心地の良さを再現。居住者向けに木と共生する暮らしを提案する。

「水回り」では、ユニットバス・脱衣所・サウナをまとめ、脱衣所の床には、角材や板に独特の削り跡を残す名栗加工の木材を導入。「玄関・寝室」は、玄関をトンネル状とし、ベッドルームを小上がりにし、下部は収納スペースとして活用し、就寝前は読書ができるような落ち着ける場となる。「キッチン・家事・スタディスペース」は、3方向からアクセスできるキッチン、パントリー、洗濯をまとめた家事スペースのコアだ。

近年、インテリアや家具ではウッドラミネートの表面材として木材が普及しているが、「KIGOCOCHI」ではヒノキ材を活用した。空間設計は株式会社トラフ建築設計事務所、照明計画は中村達基氏(BRANCH LIGHTING DESIGN)が担当している。

ショールームには、総合スマートホームサービス「HOMETACT(ホームタクト)」を一部実装し、先進的なライフスタイルを提案している。今回は三菱地所のリフォーム「みなとみらいショールーム」で開催した記者会見に出席し、三菱地所ホームのリフォーム戦略をリポートする。

設立40周年に向けて、あらゆる事業領域で価値提供

みなとみらいのショールーム内「KIGOCOCHI」ショールーム

冒頭では、三菱地所ホームの細谷惣一郎社長が挨拶した。同社は2019年に「Discover Your Life すべての人生を、建てよう」というミッションを制定。2024年に設立40周年を迎える。自分らしく生きる住まいをつくり続けていくために、社会情勢、市場や顧客のニーズの変化にいち早く対応し、新築注文住宅、リフォームやあらゆる事業領域で高い価値を提供し続ける企業を目指す。

40周年を迎える中、国内外でサステナブルな資源である木が注目されている。長年にわたり木造住宅をつくり続けてきた三菱地所ホームは、より木を深く理解し魅力を見出し、木の第一人者の姿を目指す。

木造木質化を強化すると語る細谷惣一郎社長

これは三菱地所グループ全体が取り組んでいる木造木質化の推進の一翼を担うものであり、三菱地所ホームも2023年度から「都市木造開発推進部」を新設し、住宅分野に加えて、非住宅の領域でも木造木質化を推進、中大規模の木造建築の実現に向けて取組みを強化している。

こうした取組みを通して、三菱地所グループの一員としてカーボンニュートラルや地球環境負荷軽減にも貢献している。また、2022年から木造木質化の取組みとして「KIDZUKI」を推進し、「木」に取組むネットワークで新たな価値を創出している。今回の新商品「KIGOCOCHI」も「KIDZUKI」から生まれた提案だ。

細谷社長は、日本はスマートホームが遅れている状況にあるが、10月には三菱地所ホームは、三菱地所が開発した総合スマートホームサービス「HOMETACT」の新築注文住宅への標準採用を決定、新たな価値創造にチャレンジすることを強調。ショールームには、「HOMETACT」を一部導入し、スマートホームの実装についても触れた。

次に、菅田修司常務執行役員・リフォーム事業部門長が「KIGOCOCHI」について語った。菅田氏はリフォーム事業の統括責任者で、リフォーム事業は注文住宅のノウハウを活かした提案、20年以上の実績、三菱地所グループの総合力の3点が強みであると強調。快適な全館空調システム「エアロテック」は戸建て住宅に標準装備し、マンションやリフォームにも採用している。1984年に三菱地所ホームを設立、その後の1996年にリフォーム事業を開始、同社で建築した顧客を対象に、リフォームを提案。さらにその7年後の2003年に一般リフォームも手掛け、顧客からの紹介などにより、リフォーム事業を拡大中だ。

戸建て新築やリフォームにも適用可能と意欲的

今後の展開では「KIGOCOCHI」は、戸建ての新築やリフォームにも適用可能と語る菅田修司常務執行役員・リフォーム事業部門長

「KIGOCOCHI」により、マンション1住戸(約70m2)にリフォームを施した際、国産材ヒノキ合板が占める割合は約77%となる。仮に100戸の中規模マンション全戸をすべて「KIGOCOCHI」でリフォームした場合、約39haの森林 (約4万本)と同じ効果をもたらす。

今回の「KIGOCOCHI」の提案はマンションリフォームがターゲットだが、戸建て新築工事やリフォーム、マンション賃貸の新築やリフォームにも展開可能だ。木のユニット化はすでに実現しており、部分的な導入もでき、顧客の要望に合わせたカスタマイズが可能になる。

ちなみに、70m2のマンションを一般的にフルリフォームすると1500万円超が相場だが、「KIGOCOCHI」による同様のケースでは2000万円半ばを見込んでいる。年間目標棟数としては10棟をこなしていく予定だ。

今回、主要部で国産材ヒノキを採用。見た目の美しさと耐久性に優れ、湿度にも強い特性を持つ樹木として重宝されているが、内装材で使用する際は廃棄ロスに課題があった。そこで「KIGOCOCHI」では構造用部材として使用されるヒノキ合板を内装の仕上げ材として活用。表面にあたる部分をヒノキ本来の木目を維持するために厳選し、節の多い部分は隠れた層に活用し、大幅に廃棄ロスを減少。ドアノブ、引手や脱衣所の床など、人が直接触れるポイントに木を積極的に配置した。

建築家の鈴野浩一氏がデザインを監修

株式会社トラフ建築設計事務所の鈴野浩一氏が「KIGOCOCHI」のデザイン手法を披露

次に、「KIGOCOCHI」のコンセプトワークやデザインを監修した、株式会社トラフ建築設計事務所の鈴野浩一氏が登壇。「KIGOCOCHI」は、「木(KI)」+「居心地(IGOCOCHI)」を名称の由来として、「木」によって暮らす人の「居心地」を追及したという。居住スペースの中に出現した大木(コア)を中心に、暮らす人によって居心地の良い場所を見つけられるようなデザイン手法を採用した。

また、鈴野氏がコンセプトディレクターをつとめる木のコミュニティ「KIDZUKI」は、木で気づき、木で築く新たな価値という意味が込められている。三菱地所ホームがハブとなり、より木のことを深く知り、さらなる魅力を見出し、木を媒介とした課題解決や事業領域の創造でより良い社会を目指していく。

この「KIDZUKI」で出会ったトラフ建築設計事務所や愛媛県で木材業を営む共栄木材株式会社の協力のもと、「KIGOCOCHI」は誕生した。共栄木材はインテリア用のヒノキを保有し、採用に至った。ただ地産地消の視点では、東京都近辺と神奈川県が主な商圏となるため、今後は関東地方や山梨県での木材入手を検討している段階だという。

今回の横浜市のショールームでは、かねてからの付き合いのある協力会社が施工。この第1号をベースにしながら施工のノウハウを他の協力会社に水平展開できる体制を整備する。

ただし、今回はモジュール化することにはこだわらなかったという。第1号「KIGOCOCHI」の考え方を軸とし、その点をしっかりと組み立てて自由度のあるコアとした。

「ウッドデザイン賞2023」で対外的にも評価

「KIGOCOCHI」は対外的にも高く評価された。「ウッドデザイン賞2023」で、木を活かして質の高いライフ&ワークスタイルを提案しているものが対象となる「ライフスタイルデザイン部門」を受賞した。

三菱地所ホームは、木造木質化事業を推進しており、新築注文住宅1棟当たりの構造材での国産木材採用比率ではツーバイフォー工法を手掛ける住宅メーカーの中では国内トップレベルとなっている。また、木と鉄骨によるハイブリッド構法「FMT構法」による注文住宅での自由度を向上させ、都有地活用による魅力的な移転先整備事業『江北小路』が完成。このほか、非住宅の木造建築にも注力するほか、木のリフォームにより豊かな暮らしを実現する取組みも推進している。

さらに、一層の国産木材利用や住宅設備機器の効率化の向上により、2030年には三菱地所ホーム施工物件でのZEH率85%を目標に掲げ、2050年までにネットゼロの達成を目指す。加えて、廃棄物の発生が少ない施工方法やリサイクルの容易な材料の選定やプレカット技術の促進で、2030年度までにCO2排出量60%削減を目指している。

こうした環境向上を支えるのが「戸建て注文住宅」「施設建設などの非住宅分野」、それに加えて「リフォーム分野の強化」だ。高いデザイン性とディテールまでこだわり抜いた実例にフォーカスし、特に上質で機能的なアイデアやアイテムを紹介する「一邸一想(いっていいっそう)」を開始したことも大きなトピックスといえる。この3つの中核事業を確立し、国産材の採用と新たな木造技術の追求を図っており、今回の「KIGOCOCHI」もその一環となる。三菱地所ホームが追及する「木造木質化」やさらにその先の未来に期待したい。

『KIGOCOCHI』のメディア

ショールーム概要

  • 名称:『三菱地所のリフォーム』 リフォームショールーム
  • 所在地:神奈川県横浜市西区みなとみらい2-2-1
  • TEL:0120-429-115
  • URL:https://www.mec-reform.com/showroom/
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