丹波トレーニングセンター

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“チルトローテータ”で手元作業員をゼロに。現役の職人が教える車両系教習所が開校!

6月24日、京都府京丹波町に「チルトローテータ」の施工を教える教習所がオープンしました。今回、梅田土建株式会社(山田潤取締役、京都府京丹波町)が開設したのは「丹波トレーニングセンター(山田司センター長、京丹波町鎌谷下南垣内21)」で、通常の車両系建設機械の技能講習に加えて、チルトローテータの技能講習も行うところが特徴です。

梅田土建の山田潤取締役は「現役の職人がリアルな技術を教える教習所にしたい」と話すように、講師は全員、日ごろから土木施工を行うオペレーターで、現場に即応できる技術を身に着けることができます。

まず地域建設業である梅田土建が建機教習所を開くことになった理由ですが、一般的に建機教習所というのは建機メーカーの販社が運営しているケースが多いと思います。教習は、車両系だけでなく、玉掛作業、クレーン系、転圧系など多岐にわたり、とりたいときにすぐに予約ができるわけではありません。

なかには数カ月に一度しか募集がない講習も多く、とりたい人に合ったスケジュールで資格を取得できないのです。また、教習所の数も少なく、車で数時間かけて通う場合も多いのが実情です。全国的に教習所が少ない地域はまだ多く、こうした空白地帯を埋めるためにも、梅田土建は京丹波町に教習所を開設することを決めました。

手元作業員がいらなくなる「チルトローテータ」とは?

この教習所のもう一つの目玉である「チルトローテータ講習」とは、労働局の許可資格ではありませんが、油圧ショベルのバケットの代わりに取り付けるアタッチメント・カプラー「チルトローテータ」の使い方を教える講習です。

チルトローテータは、北欧3国(スウェーデン、フィンランド、ノルウェー)では、油圧ショベルの9割程度に当たり前のように装着されています。そのほか、ドイツやフランスなど欧州にも広がりを見せている機器です。

最大の特徴は、通常では動かないバケットを360度回転(ローテート)させたり、左右に傾けたり(チルト)できる機構が備わっています。一般的な施工では、掘ったり成形したりするときに車体の方を掘る場所に正対させる必要がありますが、チルトローテータはバケットの方を自由に調整できるため、車体を動かさずに掘削ができます。建機を操縦したことがある方はわかるのですが、手元作業員と呼ばれる人がいらなくなる技術です。

またバケット以外のアタッチメントに交換することもできます。例えばバケットを幅広なものから幅の狭いものに取り換えれば、溝堀りと土砂の搬出を効率的に行えます。先端をブラシアタッチメントにすると現場の清掃が一瞬で終わります。グレーティングビームという敷き均し専用のアタッチメントに変えれば、ダンプが落としていった土を、排土板を使わずに敷き均すことも可能です。これらは運転席から降りずにワンタッチで交換が可能なので、オペレーターは建機から降りる回数が大幅に減ります。同時に手元作業員もいらなくなるのです。

さらにグリッパーと呼ばれる小型の掴み具が付いているので、U字溝などの小型の構造物を掴んで床掘の下に設置したり、タンパーなどの重い機械を床掘した溝に降ろすことも可能です。従来であれば、玉掛してクレーンで吊って降ろすという作業が、オペレーター1人で可能になります。

こうした理由からチルトローテータは、現場での作業時間の短縮、燃料消費量の削減、現場作業員の業務効率化、現場での安全性が向上します。梅田土建が行う講習では、チルトローテータの基本的な理解から、安全な操作と取り扱い、様々な条件の環境での活用、メンテナンスと点検、そして緊急時の対応方法まで幅広い内容の講習を行うそうです。

「現場が楽になることが第一」

6月24日に現地で開かれた開所式では、丹波トレーニングセンターの実施管理者である山田潤・梅田土建取締役が「チルトローテータは、建設業の生産性向上のための大切なツールです。現場の安全性も大きく向上し、少子高齢化の建設業にも大きな糧となります」といい、今後は技能講習の科目も順次増やしていく考えです。

加えて、「ICT施工に関する項目も教えていきます。3次元設計データにしても、発注図をコンサルが3次元に作成しただけでのものでなく、実際の施工フェーズに合ったデータ作成法を教えます。チルトローテータもICT施工も、現場が楽になることを第一に考えています」と、あくまで現場目線のスタンスを強調されていました。

山田潤取締役

また開校の後押しをした全国建設教習トレーニングセンターの水越雄一代表取締役は「人と機械が連携するチルトローテータを始めとした先端技術で、建設業の業務改善ができます。丹波トレーニングセンターとともに、さらなる安全と技術指導に努めます。人手不足という社会問題を解決する一助になりたい」と抱負を話していました。

建設産業を取り巻く担い手不足問題は、毎年厳しさを増しています。ことし3月に国土交通省が新たに立ち上げた「i-Construction2.0」でも、省人化をメインのフォーカスにしています。現場で働く手元作業員をいかに減らして、先端の技術を活用しながら働きやすい環境を実現していくことが、今後の建設産業の生きる道であると思います。丹波トレーニングセンターのような取り組みが全国に広がっていくとよいですね。

丹波トレーニングセンターHPhttps://tamba-tc.com/

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かつて、日刊全国建設専門紙で記者として働いていた、某研究所の主任研究員。コマツレバー(縦旋回)は苦手で、教習所にたたき込まれたISOレバー(横旋回)でしか乗りこなせない。i-ConstructionやICT施工などを研究しています。
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