火事で燃えた建築現場…。それを隠した現場監督と職人のヒミツ

よくある建設現場の火事、火災

建設現場で火事を経験したことのある建築関係者は、けっこう多いと思います。

過去にも、安藤ハザマが施工していた東京のビル新築現場で、大きな火災がありました。

鉄骨の切断作業中に火花がウレタンの断熱材に引火して、5人が死亡、約40人がケガを負ったという悲惨な事故だったようです。

事故当日、現場では約320人の作業員が働いていたそうなので、この日だけでも300人以上の建築関係者が火事を経験したことになります。

実は、私も現場監督をやっていた建築現場で、火事を起こしたことがあります。

しかし、この火事は私と第1発見者の職人さんしか知らない、「二人だけのヒミツ」になっています。

火事で失敗をしないように、ちゃんと現場を点検してほしい!そんな願いから、今回そのヒミツを少しだけ打ち明けたいと思います。

溶接火花が養生マットに引火

あれは今から数年前、とある鉄骨造の建築現場でのことでした。

2階のスラブ上では、デッキプレートの固定のための溶接中。

鉄骨造と鉄筋コンクリート造が混在している現場だったので、先行して1階の床スラブを鉄骨の建て方前に打設し、1階床スラブのコンクリートのひび割れを防止するため、養生のマットを敷いていました。

そして、事件当日。

その日までに、1階の床スラブを打設した養生マットは役目を終え、クルクルっと丸めて、1階のスラブ上に置いてありました。

折しも2階の床スラブ上では、デッキプレートの溶接中。

その火花が、1階にある養生マットに引火したのです・・・!

火事が起きても使えない建設現場の消火器

たまたま、第一発見者の職人Aさんが知らせてくれたので、私はこの事態を把握することができました。

炎が上がっているわけでもなく、まだ黒く焦げている程度のボヤだったため、私は消火器さえあれば容易に消火できると、とっさに判断しました。

すぐに現場に配置されている消火器を取りに行き、慌てて戻って来て消火活動に入りました。

しかし・・・


消火器を手にとって、養生マットめがけて噴射した、次の瞬間。

プスーッ。。。。。

という頼りない音が。

レバーを最後まで握り潰しましたが、消火訓練で見たことのある薄いピンク色の粉末はちっとも出てきません。

予想外の展開が起こると、人間は急に何をして良いのか分からなくなるようで、私はパニックになって立ち尽くしていました。

そのうちに火はだんだん大きくなっていきます。

しかし、私が消火器を片手に呆然としている間に、職人Aさんがコンクリートスラブの散水養生用の水道ホースを持ってきてくれました。

Aさんの機転のおかげで、大火事になる前に無事に鎮火することができました。

現場監督の火事への備え

鎮火を確認した後、消火器をよく見てみると、使用期限が1年前に切れていました。

「消火器の期限が1年くらい切れていても使えるだろう」という感覚でいた私は、かなりショックを受けました。

いま振り返っても、もし消火器が何本も必要な火事だったら、一体どうなっていたのだろう・・・と背筋がゾッとします。

それからというもの、消火器の点検に余念がなくなったのは言うまでもありません。

自分で失敗しないと理解できないこともあるかもしれませんが、現場監督たるもの、消火器はちゃんと点検しておきましょう(自分にも言い聞かせています)。

ご安全に!!

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大学工学部を卒業後、大手ゼネコンに入社。駅前再開発工事や大型商業施設、教育施設、マンションなどの現場監督を担当している30代の1級建築施工管理技士。新人時代の失敗で数千万円の損失を出した経験から、日々の激務に追われながらも、新人教育に熱意を燃やしている。現場でのケンカの回数は30回ほど。
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