基礎コンクリートが命を守る国・日本
海外ニュースで、コンクリート造りの建物が崩壊したという信じられない光景を目にすることがあります。日本では、これはあり得ません。日本の型枠大工は、例えば垂直精度±3mm以内のクオリティを実現しています。
鉄筋工は、設計図面通りに正確な本数・太さ・間隔で鉄筋を配筋し、コンクリート打設工は気泡や砂利の詰まりなど、中が見えない型枠の外から読み当てて対処します。日本の建築物の安全は型枠大工、鉄筋工、コンクリート打設工が支えています。
次の判例は、基礎コンクリートに瑕疵があった稀なケースで、判決までに8年以上要した建築訴訟です。
工事が基礎コンクリート打設後にストップ
県が発注した木造公共施設の整備工事が基礎コンクリート打設後にストップした事例があります。発注者のX県は施工不良を理由として、最終的に契約解除を断行し、係争となりました。
X県は、公園緑地内での学習館の整備を計画しました。周辺の自然環境を学べる体験型施設で、木造2階建て、延べ床面積は約690㎡の計画です。
2015年2月、X県は一般競争入札を実施し、建設会社Yが約1億5300万円で落札しました。工期は1年間の予定でした。
しかし、着工から約半年後の2015年8月、基礎コンクリートの打設後に県の監督員が「成果物に施工不良が多数ある」と指摘し、側板の脱型を中止するように指示しました。その後、工事は中断したままとなり、監督員は是正計画の立案を指示しましたが、具体的な是正方針は合意に至りませんでした。
そして2016年1月、X県は「基礎に施工不良の箇所があるのにYは是正に従わなかった。基礎を撤去し、工事をやり直す必要がある」と判断して、2016年2月にYに対して契約解除を通告しました。
「県の一方的解除」として5億400万円の損害賠償請求
X県内で学校などの公共工事の施工実績があるYは、工程ごとに県側の検査に合格しながら工事を進めていたとして、「施工不良はない」と反発しました。
X県側から、是正の相談に対する返答もないままの一方的な契約解除だとして、2016年3月30日、損害賠償を求めて名古屋地裁に提訴しました。損害賠償請求の総額は工事費の3倍以上、計約5億400万円に達しました。
このYの提訴に対して、X県は以下の瑕疵を主張しました。
- 柱脚アンカーボルトのうち1本で台直しが行われていた痕跡が見つかった。
- 土台アンカーボルトのうち5本が未施工だったほか、施工後に撤去されたものも複数あった。許容誤差を超えた中心線からの芯ずれも数多く確認された。
- 出来形と設計図書との不整合、コンクリート打設の不備など。地中梁の梁せい、梁幅が設計図書とは異なっており、フーチング天端が欠損している場所もあったほか、ジャンカも複数確認された。
判決で事実認定された施工瑕疵
2021年時点で学習館は完成予定から約8年が経過しながら、手つかずとなっていました。水辺公園の一角に塀で囲まれ、雑草が茂る区画について、地元住民も「何かできるんですか?」と知らない状態でした。
2021年、X県は反訴を提起しました。基礎の撤去と原状回復費などで計約5500万円をYに請求しました。
裁判所はX県の主張のうち、とくにアンカーボルトの台直しが建物の構造耐力に直結している点を重視しました。地震荷重または風荷重がかかった際に必要な水平耐力が得られず倒壊する恐れがあると判断しました。
「学習館という不特定多数が利用する公共施設においては重大な瑕疵と言わざるを得ず、もはやYによる工事の続行を県において受忍すべき状況にはなかった」としてYの請求を棄却し、原状回復費としてX県への約3,600万円の支払いを命じました。(2024年7月19日 名古屋地裁)
不特定多数が利用する公共施設において、禁じ手の台直しは受忍できないという判断でした。
コンクリートを讃えるのは美しい夕日
コンクリートを打って固まると、型枠を取り外します。建物ができあがると基礎も壁も柱も、内装などによりコンクリートは隠れてしまいます。人の目にふれることもなく、高いクオリティに気づかれることもありません。
しかし、型枠を取り外す日の夕方、西日が壁面に斜めに当たり、不陸の影がないことを確認します。美しい夕日が、讃えてくれているようです。
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