YKK APは昨年12月に都内で記者懇談会を開催した

YKK APは昨年12月に都内で記者懇談会を開催した

【YKK AP】住宅・ビルとも「改装」シフト鮮明に。パナHS社との連携で売上1兆円規模へ

YKK AP株式会社(魚津彰社長)は2025年12月23日、都内で記者懇談会を開催した。席上、魚津社長は2025年の振り返りと2026年の展望、そして同社の現在地について語った。同社は2025年度から第7次中期事業方針をスタートさせており、「収益構造の変革」と「技術革新による価値創造」を掲げ、事業を推進している。

今後、国内の新築着工戸数は減少傾向が続く見通しであることから、同社は住宅分野では「リフォーム」、ビル事業では「改築分野」へシフトするスタンスを改めて鮮明にした。住宅リフォーム分野に関しては、2025年4月、ホームセンターや家電量販店などの大型リテールに対応する専門組織「全国リノベ営業統括部」を新設。本部主導による全国区での営業体制構築を図る構えだ。一方、ビルの改装分野では、従来の首都圏・関西の改装支社に加え、中部や九州にも新たに改装支社を開設し、各支社に対応部署を設置するなど体制を強化している。

また、断熱性能の向上については「樹脂窓をさらに推進する」と明言した。製造供給体制の最適化においては、ロジスティック費用が収益に与える影響が大きいため、「需要地に近い場所で生産する」との方針を示している。海外事業については、さらなる事業拡大に向けた成長戦略を強化する。技術開発分野では、自動化・省人化による生産・業務プロセスの改革や、カーボンニュートラルを中心とした社会価値創造を推進し、具体的には「アルミや樹脂のリサイクル技術を高めていかなければならない」との認識を示した。

2025年度推定は売上高5670億円 営業利益150億円の増収減益

魚津社長は2025年の市場環境を次のように振り返った。世界経済は米国の通商政策の動向などにより不確実性が継続しており、日本経済については円安の進行、物価・人件費の上昇継続、消費の伸び悩みが見られたと俯瞰した。事業環境を見ると、国内では原材料・資材価格の高騰による建築コストの上昇があったものの、省エネ補助事業の継続がリフォーム需要を喚起した。一方で、法改正の反動による新設住宅着工の遅れや減少傾向、建築物省エネ化の促進といった動きが見られた。海外においては、米国での金利高止まりや資材価格上昇による着工市場の停滞、中国での不動産市場不況が続いている。

これらを踏まえた2025年度の売上高(推計)は5670億円(前年度比101%)、営業利益(同)は150億円(同▲30億円)を見込んでおり、魚津社長は「とくに海外事業での利益確保は難しかった」と総括した。国内の住宅事業(同101%)では、新築市場(同99%)において高断熱化や高付加価値化が進展した。

「高断熱窓化率は昨年から6ポイント上昇し94%となった。そのうち、樹脂窓の売上は昨年より6ポイント向上し、樹脂窓化率は前年比2ポイント増の42%となった。また、アルミ樹脂複合窓の売上は前年比10ポイント向上し、アルミ樹脂複合窓化率は前年比4ポイントアップの52%となった」(魚津社長)とし、高付加価値製品の浸透を強調した。

記者懇談会で語る魚津彰社長

3省補助事業が追い風となり増改築事業が好調

住宅の増改築分野は前年比103%と伸長し、補助事業に対応したリフォーム商品の販売強化が奏功した。商品別では、樹脂内窓(ウチリモ)が同112%、外窓交換(マドリモ)が同110%、玄関ドア交換(ドアリモ)が同103%といずれも好調に推移した。

7月にリフォーム用樹脂内窓「ウチリモ 内窓」の引違い窓の発売を開始

同社は既存住宅改修事業に注力しており、窓まわり、玄関まわり、インテリア、耐震など多岐にわたるリフォーム対応商品をラインナップしている。窓や玄関ドアのリフォームを通じて断熱性や防音性を高める提案が浸透したほか、国土交通省・経済産業省・環境省の3省連携補助事業「住宅省エネキャンペーン」の継続も、増改築事業にとって大きな追い風となった。

関連サイト:YKK AP 住宅省エネ2026キャンペーン

質疑応答において魚津社長は、窓リフォーム事業のここ3年間について、「2025年に関しては、11月まではそれほど受注が伸びなかったが、それ以降に2024年の1.5倍もの受注をいただき、生産が追いつかないという反省点があった。これを受け、2026年は一度に大量の注文をいただいた際の対応策を現在進めているところだ。また、住宅分野のリテールを格段に注力し、人・モノ・カネの投入をより進展させたい。ビルに関しては築35年の取替適齢期の需要が続き、2035年にピークを迎える。そこで改装支社・支店を増やし、人的資源を投入していく」と回答した。

ビル事業全体では、新たな改装支社の設置や東京・名古屋・大阪での販売強化により、改装分野が前年比104%と好調であった一方、新築分野は大手・大型物件の工期長期化の影響を受け、同96%に留まった。エクステリア事業では、建物と外構のトータル提案を推進。ガーデンエクステリアは前年比101%で、とくにカーポートやフェンスの販売強化が寄与した。一方、ウォールエクステリアは同95%と振るわなかったが、これは新設住宅着工の減少と平屋の増加に起因すると分析している。平屋対策について魚津社長は、「外構一式での受注を進め、平屋向けのパッケージ化を検討し、商品化を提案していきたい」と話した。

生産体制の強化とリサイクル技術の高度化へ

生産強化の面では、6月に木質インテリア建材新シリーズ「Smayell(スマエル)」を、7月にはリフォーム用樹脂内窓「ウチリモ 内窓」の引違い窓を発売した。11月には高断熱窓用「Low-Eガラス」の生産棟を滑川製造所に新設し、全国生産能力を従来比約150%にまで拡大させている。

また、脱炭素化・循環型社会実現に向けた仕組みづくりも加速している。リサイクルアルミ使用比率は、2025年度は60%(推計)、2028年度計画では71%へ引き上げ、2030年には100%達成を目指す。樹脂に関しては、社内品(端材)リサイクルを2025年9月末に100%達成しており、社外品リサイクルについても回収の仕組みづくりや再生原料化を進めている。さらにガラスに関しては、従来廃棄していた複層ガラス屑(廃棄物)について、破砕設備を導入して破砕・分離を行い、売却可能な体制を整える方針だ。

この点について阿部浩司副社長は、「リサイクル率100%の達成に向け、いくつか課題がある。一つはリサイクル材自体の確保、次にリサイクル材をいかに効率よく製品に仕上げていくかという点だ。それにはリサイクルに適した溶解炉の開発が肝要となる。先般、四国で専用炉を稼働させたが、今後、各工場への順次投入も検討していく。材料確保の面では、様々なリサイクル材の種類・程度・配合について大学機関と共同研究を進め、材料のアップグレードや不純物の除去を行い、使用可能な材料を増やしていきたい」と述べた。

リサイクル分野について回答する阿部浩司副社長

高断熱化・高付加価値化およびトータルビジネスの展開においては、2025年12月に木製窓の新色を追加したほか、同年1月に四季工房株式会社(長崎県の住宅建築会社)の全株式を取得し、断熱ソリューションのノウハウ構築に努めている。また、クリエイティブデザインLABの強化として、株式会社テラヤマ(埼玉県川口市の緑化造園事業会社)との取組みも本格化させる。今後のM&Aについて魚津社長は「事業を成長させていくために、M&Aについては常に検討している」と述べ、意欲的な姿勢を見せた。


リサイクルアルミ使用比率100%のアルミ建材、受注に手応え

また、脱炭素・省エネ政策の進展に合わせ、YKK APでは同年10月に「省エネ検討WEBサービス(非住宅向け)」を公開したほか、リサイクルアルミ使用比率100%のアルミ建材「Re・AL(リアル)」の受注を開始した。カーボンニュートラルの実現に向け、高断熱化の取り組みを更に強化する方針だ。

「Re・AL」は、市中リサイクル材と社内の製造過程で生じる端材を使用した、リサイクル使用比率100%の窓やカーテンウォールなどに用いられるアルミ建材である。新地金を使用した製品と同等の品質・機能を保持しつつ、同社既存商品と比較して原材料調達から輸送・製造に至るまでのCO2排出量を73%削減する。ビルの建築時に「Re・AL」を採用することで、建材の環境影響を定量的に示すことが可能となり、建物の環境価値向上と製造時のCO2排出量削減に寄与する。

「Re・AL」の対象建物のイメージ

自社物件では既に、2024年10月竣工の「YKK AP30ビル」や同年11月竣工の「YKK AP技術館」でリサイクルアルミ100%の窓、カーテンウォールを採用済みだ。また、三井不動産レジデンシャル株式会社の新築マンション「(仮称)東京都渋谷区代々木二丁目計画」(2027年2月28日竣工予定)での採用も決定している。

老川忠志副社長(ビル統括本部長)は、「他のデベロッパーにも『Re・AL』について説明を行っており、現在引き合いをいただいている。スペックイン活動も引き続き展開している中で数件の手応えを得ており、2026年度からはかなりの受注件数が見込めると確信している」と自信を覗かせた。

記者懇談会終了後、コーポレートコミニュケーション統括部へ個別に取材を行ったところ、「現時点では4物件ほどの引き合いがあり、採用に向けた具体的な協議を進めている最中だ。確かな手応えを得ており、これからの時代のニーズを含め顧客からの問い合わせが増加し、意識の高まりを実感している」との回答が得られた。

「Re・AL」について回答する老川忠志副社長ビル統括本部長

参考サイト:YKK AP 省エネ検討WEBサービス(非住宅向け)

ランドスケープ・賃貸ZEHなど多角化を推進

新規事業への取組みとしては、2025年4月1日に「YKK AP LANDSCAPE株式会社」を設立。建築デザインと調和した緑化デザインの企画・設計を通じ、豊かな都市空間と持続可能な社会への貢献を目指す。

魚津社長は「ランドスケープ商品はこれからになるが、ビル用の公共・商業施設の設計・施工と、分譲住宅用の商品、設計・施工の提案は現在着々と進めている」と述べた。このほか、建材一体型太陽光発電の早期社会実装に向け、ペロブスカイト太陽電池を用いた内窓の実装検証を進めており、多様な立地条件や環境下での発電性能を検証中である。

また、質疑応答では高性能賃貸住宅への戦略についても言及があった。魚津社長は「お客様からの要望はいただいている。今後、賃貸住宅のオーナーや居住者のメリットを考えると、単に光熱費の削減だけでなく、イニシャルコストはかかるもののランニングコスト的にはメリットがある点、そして建物の価値向上をオーナーに訴求したい。改築の必要がないなど、地元で高断熱を推進する方々が樹脂窓を使用し、高気密・高断熱の賃貸住宅へ提案するケースが増えている。ビル製品でも、訪日外国人が長期滞在する建物について高断熱化の要望をいただいている」と述べ、賃貸分野における高断熱化ニーズの高まりを示唆した。

現在、YKK APは東京建物株式会社および慶應義塾大学とともに、ZEH基準への改修が居住者の快適性に与える影響を検証する実証実験を行っている。舞台は築20年の大規模賃貸マンション「Brillia ist 東雲キャナルコート」(東京都江東区)。住戸に被験者が宿泊し、温湿度やバイタルデータを比較することで、ZEHが快適性・健康性に与える影響を可視化するもので、結果は2月を目途に発表される予定だ。

パナソニック ハウジングソリューションズとタッグ、売上1兆円規模へ

さらに、YKK株式会社はパナソニック ホールディングス株式会社(PHD)が全株式を保有するパナソニック ハウジングソリューションズ株式会社(PHS)に関する株式譲渡契約を締結した。これによりPHSはYKKグループ傘下に入ることとなり、シナジー効果によって2035年度に売上高1兆5000億円を目指す、新たな建材・設備の総合メーカーが誕生する。

YKK APはPHSと戦略的パートナーシップを構築し、両社の強みを融合することで、建築資材・住宅設備業界の未来を牽引するリーディングカンパニーを目指す方針だ。YKK APとPHSを合わせた事業規模は約1兆円に達し、建築物に要する建材の大部分をカバーする広範な商品群の提供が可能となる。新体制での事業開始は2026年4月を予定している。

YKK APとパナソニック ハウジングソリューションズが戦略的パートナーシップ

堀秀充会長は挨拶の中で、「この件については現在慎重に検討しており、今後のシナジーについても明快な回答ができる段階ではないため、もう少し待ってほしい。ただし、社員や顧客はポジティブに捉えている」と語った。

堀秀充会長

TOTO、DAIKENとの連携「TDY」は継続希望

YKK APはTOTO株式会社、DAIKEN株式会社との3社連携「TDY」を展開しているが、これについては「TDYを完全に解消するのではなく、せっかくここまできたのだから何らかの形で続けたい」との方針を示した。

水廻り設備や内装建材を保有するパナソニック ハウジングソリューションズは、TOTOやDAIKENと競合関係にあるため、今後の動向が注目されていた。3社連携「TDYアライアンス」は2002年から3社が相互の事業を補完する形で協力し、北海道から九州までショールームを共同展開している。そのショールーム運営について堀会長は、「パナソニック ハウジングソリューションズの商品展示はしない方針だ」と明言し、既存のアライアンスと新たなパートナーシップの棲み分けを示唆した。

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建設専門紙の記者などを経てフリーライターに。建設関連の事件・ビジネス・法規、国交省の動向などに精通。 長年、紙媒体で活躍してきたが、『施工の神様』の建設技術者を応援するという姿勢に魅せられてWeb媒体に進出開始。
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