「知る権利」は「表現の自由」なの?
国民が政治や行政を監視し、正しい判断を下すために「知る権利」は保障されています。憲法に「知る権利」という言葉はありませんが、第21条の「表現の自由」により保障されています。
意見をSNSや街頭演説などで表現しようとする場合、まず情報を知ることが必須で、「知る権利」が「表現の自由」を支えているからだそうです。
マンション計画の「意見書」が非開示に
情報公開請求は、近隣トラブルの防止や違法建築の抑止を目的として、誰でも行うことができます。しかし本件では、住民の請求に対してY町が情報を「非公開」とする判断を下しました。Y町が情報を非公開とした経緯は以下の通りです。
まず、住民Xら7名は、A社によるマンション建築計画の噂を聞き、日照被害や風害、プライバシー侵害の発生の恐れが高いと考え、Y町に対して情報公開請求を行いました。しかし、Y町は公開を拒否しました。
その後もXらは1年半にわたり合計9回の公開請求を行いましたが、Y町は9回とも非公開としました。
これを受け、Xらは公開請求に労力と時間を費やしたとして、1人当たり慰謝料30万円と弁護士費用5万円の合計35万円、7名分で総額245万円を請求する損害賠償訴訟を提起しました。
一方のY町は、非公開事由としてA社からの「意見書」の存在を挙げ、下記を主張しました。
- 公開することにより当該法人または個人に著しい不利益を与えることが明らかな情報である
- 公開することにより行政の公正かつ円滑な執行に著しい不利益を与えることが明らかな情報である
そのため、非公開の判断は違法ではないと主張しました。
問題となった「意見書」の内容
裁判で問題となった意見書の内容を「判例タイムズ No.1002」から引用します。当時、Y町は「宅地開発等に関する指導要綱」を制定していましたが、この指導要綱とA社の建設計画には乖離がありました。
具体的には、指導要綱六条によればY町で建築可能なマンションの戸数は88戸が限度でしたが、A社の計画は203戸とされていました。また、指導要綱九条によればマンションの公共空き地として544.4平方メートルが必要と規定されていましたが、A社の計画では234.1平方メートルにとどまっていました。さらに、指導要綱では開発負担金として1戸につき80万円をY町に支払う義務が定められていましたが、A社の計画ではこの支払いに応じないとしていました。
そしてA社は、「『宅地開発等に関する指導要綱』は行政指導方針を示す行政府内部の業務取扱規則に過ぎず、それ自体が法的拘束力や強制力を有するものではないため、あくまでも相手方に任意の協力を要請できるだけの効力しか有しない」という認識を示したうえで、「私共が計画を行う共同住宅はY町の指導要綱を基準とするものではなく、都市計画法を基準として行うものである」とし、要綱には従わないことを宣言していたのです。
業者をかばう自治体の本音
マンション建設は、自治体から歓迎される傾向にあります。新しいマンションは移住者の受け皿となり人口減少対策に繋がるほか、住民税や固定資産税などの税収増をもたらすからです。若い世代や多様な住民の流入は、地域の維持や活性化にも貢献します。
Y町がA社の意見書を非公開とした背景には、公開することによって企業イメージが悪化し、マンション販売に悪影響が出ることを懸念してのものだったようです。Y町としてはマンションが売れて、多くの人に入居してほしいという思いがあったので非公開としたようです。
【判決】国家賠償による損害賠償を認容
このマンション計画はもともと住民の反対運動があり、Y町とA社の間の乖離があることは実は広く知られていたようです。
大阪地裁は、「A社が認識を示した法的見解(要綱に法的効力は無い)は通説的なもので問題とすべき点はないが、いささか穏当を欠くものと言わざるを得ないため、『意見書』の取り扱いに慎重になったことは一定限度理解し得る。しかし、A社が要綱に従う意思がないという姿勢は説明会の時点で地元住民の知るところとなっていた」として、Y町の主張は非公開事由の1と2のいずれにも該当しないとして、Y町には損害賠償の義務があると認め、Xら7名、一人につき慰謝料5万円、弁護士費用1万円について国家賠償法第1条の責任を認めました(平成9年12月26日 大阪地裁)。
国家賠償法
第一条 国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によって違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。
この法律は、たとえば警察官が職務質問中に不当に暴行を加えて怪我をさせた場合や行政職員の誤った事務処理によって国民が損害を被った場合などに適用されます。国や地方公共団体という支払い能力のある主体が責任を負い、国民が救済を受けられるようになっています。
情報公開請求は300円で
情報公開は、誰でも請求が可能な制度です。窓口やインターネットで請求書を入手し、所定の手続きに従って提出します。1件につき300円の手数料(収入印紙)を納付すると、原則30日以内に開示または不開示の決定が通知されます。情報は原則として開示されますが、個人情報や国の安全に関わる情報などは不開示となる場合があります。
行政文書開示請求書
Z市で大型スーパーの跡地に、15階建て高層マンション3棟の建設を計画があり、隣接地に住む無職の男性(70)が情報公開を請求。市は「法人に不利益に当たる」と図面や計画概要を非開示としました。男性は「知る権利を侵害している」と審査請求して、市情報公開・個人情報保護審査会により「書面全部を開示すべき」と答申がなされ、開示されました。
隣接地に大きな建物が建つのなら、情報を知りたくなるのは当然のことと思います。「知る権利」は憲法に条文がないため、それを具体化することを目的に自治体には情報開示を受け付ける機関があり、費用もオンラインなら200円程度の場合もあるそうです。「知る権利」の行使は、「表現の自由」への第一歩です。
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