楽天ドローン株式会社 総務グループの岩﨑真哉マネージャー(左)と、解析グループの高橋勇人マネージャー(右)

楽天ドローン株式会社 総務グループの岩﨑真哉マネージャー(左)と、解析グループの高橋勇人マネージャー(右)

外壁調査の常識を覆す「平米150円」の破壊力。楽天ドローンが”AI×内製化”で導き出した「高精度・低価格」の最適解

楽天ドローン株式会社は2026年2月、AI画像解析を駆使した「AI外壁調査」サービスの提供を開始した。

同社は、ドローン関連の多角的なサービスを展開する先駆者として2016年9月に設立された。以降、パイロットを育成する「楽天ドローンアカデミー」や、仕事の橋渡しを担う「楽天ドローンゲートウェイ」、不測の事態に備える「ドローン保険」など、多角的なサービスを展開。さらに外壁調査や火災保険鑑定に伴う屋根損害調査、楽天モバイル基地局・太陽光パネルの点検、機体販売、空撮まで、空のインフラを全方位で支えてきた。

今回発表された「AI外壁調査」では、ドローン空撮と AI画像解析の技術を活用した独自開発のシステムを融合させることで、従来、専門スタッフが目視で担ってきた膨大な画像解析作業の劇的な効率化を実現。さらには平米単価150円(税抜)からという圧倒的なコストパフォーマンスも打ち出し、業界に鋭い新風を吹き込んでいる。

今回、楽天ドローン株式会社 解析グループの高橋勇人マネージャーと、楽天ドローン株式会社 総務グループの岩﨑真哉マネージャーに、新サービスの全貌と同社が描くドローン活用の未来図について話を伺った。

表面から内部まで見抜く「AI×目視」の徹底解析

――そもそも、なぜ楽天グループが外壁調査の分野に参入したのでしょうか。

岩﨑真哉氏(以下、岩﨑氏) 楽天グループでは、ドローンや地上配送ロボットを活用し、省人化を図ることで日本が抱える物流課題などの解決に貢献することを目指してきました。ドローンを活用したさらなる社会課題へのアプローチを目指し、2022年に外壁調査を含む様々なドローンサービスを展開する旧SKY ESTATE株式会社(現 楽天ドローン株式会社)を完全子会社化し、本格的に外壁調査を実施しています。

――その中で、新たに打ち出されたのが、2026年2月に提供を開始された「AI外壁調査」ですね。具体的な特徴を教えてください。

高橋勇人氏(以下、高橋氏) ドローンによる撮影と、AI画像解析の技術を活用した独自開発のシステムを掛け合わせたサービスです。建物の外壁調査で最も時間と労力を要するのが「解析」の工程です。これまでは、ドローンで撮影した膨大な画像の一枚一枚を専門スタッフが目視で確認し、ひび割れなどの劣化箇所を特定していました。

今回のシステムでは、「可視光画像」の解析においてひび割れの疑いがある箇所をAIが自動的に検出します。これにより作業効率が飛躍的に向上しました。沖縄県那覇市の大型商業施設「パレットくもじ」で行った検証では、AIを導入しない従来手法と比較して可視光画像の解析時間を約48%削減できると算出しています。

――AIがすべてを自動で行うのでしょうか?

高橋氏 いえ、そこが重要なポイントなのですが、AIによる自動検出の後に、必ず当社の専門スタッフによる「目視確認」を組み合わせています。これによって解析の信頼性と精度を担保しているんです。

たとえば、無地のタイルは自動検出に向いていますが、2色がばらつく「混色タイル」や真っ黒なタイルの場合、どれがひび割れかをAIが判別しにくい傾向があります。そうした特性を理解した上で、最終的には人間の目でしっかりと確認を行う二段構えの体制をとっています。

また、赤外線画像も用いて、温度差などのデータから外壁内部の「浮き」や、水分が滞留している「含水」といった内部劣化の可能性を解析します。表面と内部、この両面から精緻に診断できるのが、私たちの強みです。

――そうして精緻に診断されたデータを、最終的な報告書にまとめるまではどのようなフローで行われるのでしょうか。

高橋氏 業務は大きく「解析」「プロット図作成」「報告書作成」の3段階に分かれています。私たちは「精度」を重視していますので、各段階が終わるたびに、別のメンバーが内容を添削し、次のステップへ進むというフローを徹底しています。

さらに、最終段階ではチームリーダーによるチェックに加え、オプションとして一級建築士の方にレビューをいただく体制を整えています。この「ダブルチェック・トリプルチェック」を経て、体系的にまとめられた精度の高い報告書をお客様にお届けしています。

――撮影から画像解析、報告書の作成というこれだけの工程を含めて、「平米単価150円(税抜)から」という安さを実現できる理由はどこにあるのでしょうか?

高橋氏 最大の理由は「内製化」です。パイロットや解析業務を外注しているケースも少なくありませんが、当社は営業スタッフ、ドローンパイロット、解析スタッフといった人材をすべて自社で抱えています。一気通貫の体制で行うことで中間コストを抑え、価格に還元しています。

物件の条件や遠方への交通費などによって変動することはありますので、詳細はお問い合わせいただければと思います。

――自社でパイロットを抱えているのは強みになりますね。

高橋氏 はい。とくに大きいのは「楽天ドローンアカデミー」の存在です。ドローンを安全に、かつ効果的に活用するには、十分な知識と技能を有する人材が不可欠ですが、自社のスクールで資格を取得し、高度な技能を身につけたスタッフがそのまま社内でパイロットとして活躍しています。このサイクルも、コスト優位性と品質維持の両立を支えています。


800棟のノウハウを凝縮し、即戦力を育む「楽天ドローンアカデミー」

――いまお話に出た楽天ドローンアカデミーは、他のスクールとどのような違いがあるのでしょうか。

岩﨑氏 最大の特徴は、単なる免許取得にとどまらず、現場で「稼ぐ」ための実務スキルを習得できる「専門コース」が充実している点です。

これまでオフィスビルや商業施設、学校、ホテル、官公庁施設など、累計で約800棟以上(2025年12月時点)[CS6.1]の外壁調査を手がけてきました。これらの現場で培ったノウハウを凝縮し、実際の調査機体を使用した「外壁調査基礎コース」などを提供しています。

他にも、住宅の屋根点検や屋内でのFPV(FirstPersonView)撮影など、用途に合わせた技術を学ぶことが可能です。

――ただドローンを飛ばすだけでなく、実際の外壁調査となると操縦や撮影の難易度も跳ね上がりそうですね。

岩﨑氏 おっしゃる通りで、建物の構造やタイルの材質、そして時間帯による日光の当たり方までを計算して撮影しなければなりません。赤外線調査の場合、「解析時に必要な温度差が画像にどう表れるか」を撮影の時点でイメージできていないと、後になって使い物にならないデータになってしまいます。パイロットの経験と知識が、そのまま解析の質に直結するんです。

また、ビルの隙間に入るとGPSが効かなくなったり、突発的な風が発生したりすることもあります。そうした状況下でも冷静に機体の安全を確保し、かつ必要なデータを確実に持ち帰らなければなりません。単に資格を持っているだけでは通用しない世界なんです。

――そうした高い技術を教え込むとなると、カリキュラムだけでなく、訓練の環境面も重要になりそうです。

岩﨑氏 だからこそ、当アカデミーでは現場に即した環境づくりにこだわっています。東京都江戸川区にある屋内倉庫を活用しており、講習から修了審査までを同じ場所で実施できるため、受講者は本番環境に近い状態で集中して訓練を積むことができます。

こうした実戦を想定した体制もあり、国家資格(一等・二等)の初受験合格率は96%(2025年9月末時点)を維持しています。私たちは資格を取らせて終わりではなく、技能証明の更新手続きのサポートも含め、現場の技術者が不安なく業務に臨めるよう継続的にフォローしています。

「12条改正」で加速する市場

――即戦力となるパイロットの育成にここまで力を入れる背景には、業界全体が抱える課題や市場の変化もあるのでしょうか。現在の外壁調査市場はどう動いていますか?

岩﨑氏 ええ、今、市場は大きく動き出しています。最大の契機となったのが、建築基準法第12条に基づく定期報告制度、いわゆる12条点検の改正です。

2022年4月の告示改正により、一定の実施要領に則れば、ドローンによる赤外線調査が従来の「テストハンマーによる打診」と同等以上の精度を有すると認められました。これにより、竣工や改修から10年を超えた際の「全面調査」において、ドローン活用のハードルが劇的に下がったんです。

打診やブランコ作業といった従来の手法と比較して、安全かつ低コストで実施できるドローン調査への認知度は、以前よりも確実に高まっており、管理組合やビルオーナーの方々からの反響も非常に大きくなっています。

――市場全体でドローン調査の需要が拡大しているとなると、今後は自社での調査にとどまらない展開も視野に入ってくるのでしょうか?

岩﨑氏 そうですね。自社で撮影した画像の解析だけでなく、ドローンによる外壁調査を実施している他の企業様に対しても、この独自開発のシステムを活用した解析から報告書作成までを請け負うサービスの提供を予定しています。

ドローンを飛ばすことはできても、その先の高度な解析や報告書作成まで自社で対応しきれない企業様は少なくありません。私たちの知見を活かすことで、業界全体の効率化に貢献したいと考えています。

――最後に、今後の展望をお聞かせください。

岩﨑氏 「日本一のドローン会社」を目指しています。保険、機体販売、空撮、そしてAI外壁調査と、これまで点在していたサービスを一つの軸でつなぎ、ドローンによるエンパワーメントを推進していくつもりです。

建物の老朽化に伴い調査の必要性がますます高まる中、2026年はまさにドローン技術の実装・普及フェーズです。ドローンが当たり前に社会を支える未来を、着実に作っていきたいですね。

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建設専門紙の記者などを経てフリーライターに。建設関連の事件・ビジネス・法規、国交省の動向などに精通。 長年、紙媒体で活躍してきたが、『施工の神様』の建設技術者を応援するという姿勢に魅せられてWeb媒体に進出開始。
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