【92%の利用者が給与アップを実現】 土木施工管理の求人[PR]
派遣会社に転職する50代、60代の施工管理技士が増加中
正社員よりも派遣社員として就業することを選ぶ施工管理技士が増えている。特に、中小規模の建設会社や地方の建設会社から派遣会社に転職する施工管理技士が目立ってきている。さらに顕著なのが、現場管理能力の高い、即戦力とも言うべき50代、60代の施工管理技士が、正社員から派遣社員に転職するケースだ。
施工管理技士が派遣社員を選び始めた背景には、技術職正社員の過重労働やそれに見合わない低い給与、サービス残業などの問題がある。そして何よりも、老後を視野に入れている50代、60代の施工管理技士にとっては、派遣社員のほうが、給与的にも業務的にもメリットが大きいようだ。
建設業界でもIT業界同様に「正社員」信奉は崩壊しつつあるのだろうか?施工管理技士が派遣社員に転職するメリットについて、実際に正社員から派遣社員に転職した1級土木施工管理技士・監理技術者である中家留義さん(57)にインタビューしてきた。
給与が高い施工管理技士の派遣社員に転職
1級土木施工管理技士・監理技術者の中家留義さん
施工の神様(以下、施工):まず中家留義さんの簡単なご略歴を。
中家留義さん(以下、中家):愛媛県立松山工業高等学校の土木科を卒業後、比較的小さい建設会社に就職しました。それ以降、ずっと土木工事の現場で、現場代理人や主任技術者としての経験を積んできました。
施工:主にどのような工事で、現場代理人や主任技術者を?
中家:上下水道工事、電線共同溝工事、港湾工事、道路整備、宅地造成などですね。ボックスカルバートの施工経験が多いです。
施工:派遣社員に転職した理由は?
中家:正社員よりも給与が高いからです。自分の経験を生かせる現場、通勤しやすい現場を自分で選べる点も惹かれました。
施工:派遣社員だと福利厚生に不安は?
中家:派遣社員と言っても、正社員と同じです。私の会社は特定派遣なので、会社に正社員として雇用されています。みなさん誤解されているかもしれませんが、派遣社員と言っても、正社員と同様に社会保険が完備されています。
施工:派遣社員に転職する前は?
中家:建設会社の正社員として勤務していた際は、仕事をどんどん回されて、何から何まで1人でやらされていました。給与が上がればそれでも納得できますが、増えるのは残業時間だけ。そのまま正社員として会社に居続けても、この年齢なので、嘱託職員にされるなど、給与は減っていく一方だというのも転職動機でした。派遣であれば年齢ではなく、スキル・経験が給与として評価されます。
イメージは悪かったが、派遣の施工管理技士は「長期安定的に稼げる」
施工:建設会社の正社員を辞めることになった決定打は?
中家:約1,400万円規模の下水道工事・道路維持工事の施工管理ですね。工期3ヶ月の現場で、調査・測量・近隣へのビラ配り・施工後の図面作成・書類まで、すべて1人でやりました。事務所に泊まって仕事することもあり、大変でしたね。特に、近隣の駐車場、マンション、飲食店などとの「いついつまでに、どこどこを工事して」という調整には頭を悩ませました。それでも当然、給与は上がりませんでした。
施工:正社員から派遣社員に転職するのに抵抗はなかったですか?
中家:もちろん最初は不安でした。建設業に限らず、派遣社員は「派遣切り」など、あまり良いイメージはなかったので、派遣会社は転職先の選択肢にも入っていませんでした。派遣会社だと1級土木施工管理技士の有資格者でも、給与が安いという先入観もありました。しかし実際は、私のような50代後半の施工管理技士は、派遣のほうが長期安定的に稼げると思いますし、サービス残業とも無縁です。
施工:派遣社員の残業状況は?
中家:残業するかしないかは契約時に自分で選べるという側面もありますが、派遣社員の場合は、残業しても仕事した分の対価が、しっかり給与として支払われます。ちゃんとした派遣会社であれば、サービス残業はありえません。
最初は私も派遣社員について、派遣会社にマージンを搾取される、という悪いイメージを抱いていましたが、私の経験上、正社員のほうが実質的には、より多くのものを搾取されていると思います。もし派遣社員として、泊まり込みの現場に従事していたら、どれぐらい給与を貰えていたのかなと、ありえない話ですが想像してしまいます(笑)。
派遣社員に転職後、施工管理技士として現場を楽しめる
施工:派遣社員としての施工管理業務はどうですか?
中家:今は空港内のトンネル構造物の建設工事で現場管理、写真管理をメインに担当しています。実際に就業してみると、大手ゼネコンの現場なので、職員の人数も多く、いろいろ周囲に相談できます。チームで仕事をできるのが、こんなにもありがたいこととは思いませんでした。20代の派遣社員たちの教育係も担当しています。昔と違って今の50代の若手指導者は優しいですよ(笑)。若い技術者と触れ合いながら、物作りを楽しめる余裕もあって、技術者冥利に尽きます。業務一つ一つのレベルも高く、スキルアップにもつながっています。
施工:空港では近隣対応はない?
中家:はい、隣調整がないのはラクです。ただ、その代わりに飛行機の滑走路を現場車両が通るので、その誘導業務などがあります。これが簡単そうで何気に機転が利かないとできない業務なんです。
施工:派遣で逆に正社員より大変なことは?
中家:良いことの裏返しですが、30代ぐらいまでは大事に育ててもらえますが、ベテランになってくると、これぐらい出来て当たり前と思われてしまうことですかね。先日も仮設排水溝の現場管理を1人で任されて、最後までやりきりました。前職に比べれば、なんてことはないですが、意識を高く持って仕事をしなければなりません。しかし、その分スキル全体のレベルも、作業効率も上がった実感はあります。これから本体工事が始まると忙しくなると思います。
施工:正社員に戻る予定は?
中家:今のままが良いですね。正社員になると、責任も重くなるし、嫌な業務を擦り付けられたりします。しかも、この年齢で正社員になると、派遣よりも良い条件の会社にも入社できないでしょう。待遇に不満があって、もっと給与を稼ぎたい中小企業の施工管理技士は、派遣で働くことをお勧めします。派遣というと悪いイメージが先行してしまうので、「施工管理のプロフェッショナルとしてフリーランスで働く」と表現したほうが誤解は少ないかもしれませんね。
1級土木施工管理技士の昔ばなし
施工:中家さんは長年、施工管理技士として働いてきた中で、印象的な出来事はありますか?
中家:今の現場ですが、現場の残土の上に「コアジサシ」という絶滅危惧種の鳥の卵が35個ありまして、これが1個30万円相当と言われました。孵化するまで2週間も監視する業務があり、その間、親鳥に攻撃されたり、糞がヘルメットの上に降ってきたりしました。上手いこと、必ずヘルメットの上に糞をしてきましてね(笑)。
施工:若い頃の失敗談は?
中家:レベルで15cmも高さを間違えてしまったことがありました。ただ、30分くらいで気づき、事なきを得ました。自分は怖がりで何事も確認しながら業務を進めます。失敗しても気づくのが早いので、大きな失敗はしたことがありませんね。なので、面白い失敗談がほとんどなくて、すみません(笑)。
施工:長年、施工管理をしてきて感じる、昔と今の違いは?
中家:昔は現場の近隣住民の方々が、よくお茶やお菓子を出してくれましたが、今は滅多にそんなことはなくなりましたよね。今は近隣住民の方々の目が非常に厳しくなったと感じています。工事についても今は、昔よりも一つひとつの業務が細かく、チェックも厳しくなりました。でも、そのほうが事故の起きる可能性も低くなるので良いとは思います。
それから昔は作業員とだけではなく、社員同士でもバチバチやっていましたが、それもなくなってきましたね。今では考えられませんが、昔は普通に人に対して失礼なことを言って衝突していました。今はそれがない分、内側にストレスを溜め込んで、自分の殻に閉じこもってしまう施工管理技士や作業員が増えているようにも思います。それで現場でのコミュニケーションが取れていれば問題ないですが、突然大きな問題に発展する危険性も秘めているように思います。
施工:では最後に、中家さんの施工管理技士としての今後のヴィジョンを。
中家:2020年の東京オリンピック・パラリンピックまでは建設業界も景気は良いと思います。その後も、急激には悪くはならないと思いますが、日本の景気が良くならない限りは、建設業界の景気も下がっていくと思うので、稼げるときに稼いで国内外問わず、いろんなところに旅行に行きたいと思っています。特に妻と2人でオーロラを見に行きたいですね。