「子育て中の女性」は区別して!子育てと資格勉強で奮闘する女性現場監督の主張

「子育て中の女性」は区別して!子育てと資格勉強で奮闘する女性現場監督の主張

「子育て中の女性」は区別して!子育てと資格勉強で奮闘する女性現場監督の主張

子育てと資格勉強で奮闘する女性現場監督の主張

国土交通省は「女性が活躍できる建設業の推進」に取り組んでいる。大変結構なことだが、女性が活躍できるとは具体的にどういう状態を指すのか、よくわからない部分がある。例えば、現場に女性を配置すれば「活躍状態」なのか、コンサルで働く女性は技術者なのか、事務の女性はカウントしないのか、現場にピンクのトイレがあったら、女性は喜ぶのか――など、疑問は尽きない。

そんなことをあれこれ考えるより、現場で働く女性にじかに聞いたほうがはるかに有益だ。――ということで、株式会社井上組(徳島県つるぎ町)の工事部で、子育てをしながら現場監督を務め、仕事と家庭の両立に奮闘する安達登志子さんに話を聞いてきた。


子育て中の主婦が「土木の求人」に応募した理由とは?

「土木のお仕事。写真管理などの書類仕事もあります」――株式会社井上組の求人にはこう書かれていた。安達登志子さんは「それならできるかな」という軽い気持ちで応募。土木仕事の経験はまったくなかったが、子育て中の主婦が土木技術者見習いとなる。平成27年2月のことだ。

テレビで、新米女性現場監督の映像を見たことがあった。多くの男性作業員を束ねる女性の姿に「えー、女性がいてるんや。カッコエイなあ」と憧れのような感情を抱いたことはある。しかし、その数年後、自分が土木の仕事につくことになるとは「想像もしていなかった」と言う。

「井上組には、安達の前にも女性の技術者がいたが、平成26年5月にことぶき退社したので、募集をかけた。土木の経験がないことは問題ではなかった。チャレンジしたい人はすべて受け入れる。今回も本人のやる気を買った」(柏尾悦子・株式会社井上組経理部長)と採用の内情を明かす。

それにしても、いくら「やる気」があるとしても、素人がいきなり飛び込んで、なんとかなる世界なのかという疑問が湧く。「なんとかならない。厳しい世界だった」と安達さんは振り返る。最初に行った現場は、急傾斜工事の現場。「現場にある道具一つとっても、それが何をするものなのかがわからない」現実に直面する。「とにかく早く現場になじんで、仕事を覚えなければ」。3ヶ月間の研修は、あっという間に過ぎていった。

安達さんが現場監督を務めた河川護岸工事でのパラペット擁壁の現場(施工前)

安達さんが現場監督を務めた河川護岸工事でのパラペット擁壁の現場(施工後)

河川護岸工事のパラペット擁壁で喜びを知り、土木の資格取得にチャレンジ!

いくつかの現場で写真整理、書類づくりなどに携わった後、現在は、国土交通省四国地方整備局発注の河川の維持工事の現場監督などを任されている。この間、苦労もあっただろうが、「現場監督をやるようになったのは、自然の流れ」(安達)と恬淡としたもの。会社からも「この業務をやれということはなかった」(井上惣介・株式会社井上組代表取締役社長)そうで、スムーズにことは進行したようだ。

思い出に残る仕事は、昨年現場監督として、河川護岸工事でパラペット擁壁を施工したこと。「はじめてものづくりができた」(安達)という実感を得られた現場だった。ものづくりの喜びを知った後、「土木の資格をとって、技術者として頑張りたい」と考えるまで、そんなに時間はかからなかった。現在、仕事や育児の時間をぬって、資格試験の勉強を続けている。「わずか2年で、一つのハードルを越えようとしている。その努力にはビックリする」(井上社長)。


気まずい会話にも話を合わせて、現場の人間関係を和ませる

現場では周りは男ばかりだが、「仕事中は男も女もない厳しい空気があるが、休憩中などはみな優しい」(安達)と言う。ナーバスな女性なら少々気まずくなるような会話にも、「なるべく話を合わせるようにしている。そのほうが場が和むから」。「もともと気にしない性格」もあって、現場での人間関係は上々のようだ。

「好奇心が旺盛で、固定概念にとらわれるのがキライ」(安達)と自己分析。友達に「今、土木の仕事をしている」と言うと、「どしたん?」と驚かれることもあるが、意に介さない。ただ、身近に相談できる女性技術者がおらず、「寂しい」のがホンネ。そんな中、同じ徳島県の株式会社大竹組の女性技術者、橋本美香さんは「心強い」存在だ。「お師匠さんみたいな人で、女性の視点から、いろいろと教えてくれる」からだ。「女性が現場でもっと活躍できるように、自分も努力していきたい」と力を込める。

女性現場監督の「仕事と家庭の両立」、「カイゼン」の努力

安達さんの悩みは、仕事と家庭の両立。ワークライフバランスだ。そこに資格勉強も加わるので、その大変さは容易に想像がつく。「子どもの送り迎えや、晩ご飯の支度などがあるので、午後7時に帰宅するわけにはいかない」。しかし、普通に仕事をやっていると、繁忙期など午後5時に帰れないことも少なくない。現場監督が作業員に仕事を任せて一人帰るわけにはいかない。工期末には、書類づくりにも追われる。そこで、一計を案じ、日中、現場は主任に任せて、自分は写真管理や書類づくりなどに専念。自分なりの「仕事カイゼン」に取り組んでいる。このカイゼンが功を奏し、これまでのところうまくバランスを保っている。

「国が女性が働きやすい職場づくりを進めているのは、ありがたいこと。でも、今のところ、子育て中の女性が働きやすい職場にはなっていないのが残念。子育て中の女性と子育てが終わった女性の区分けがもっと進んで欲しい」。多くの子育て中の女性技術者共通の意見だろう。具体的な対応が急がれるところだ。

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