プラント建設現場の施工管理で気を付けるべきポイント
プラントとは、食品やプラスチック商品、化粧品などの生産工場です。
私たちの生活を支えているプラント建設現場における施工管理には、独特の注意ポイントがあります。
プラント施工管理は危険物に注意
化学プラントでは特に、酸やアルカリなどの有害物質に気をつけなければなりません。
道路を歩いているだけでも、劣化配管の漏れによって化学薬傷(化学物質によって負傷すること)をする可能性があります。また、可燃物を取り扱っている設備も多く、火の元には十分な注意が必要です。
設備によっては、溶接やガスを使う時に、何重もの許可と立会を受けることになります。
プラント施工管理は既設設備に注意
プラント建設現場にも大小ありますが、国内の現場では既存設備と同じ敷地内で隣接して工事を行うことが多いです。既設設備との取合い作業も行うことがあります。そんなとき、注意しておかなければならないことは、誤切断や既設設備の破損です。
私も既設設備内で、配管取合い部の切断を行った際、切断箇所を間違えたことがあります。立会を終えていざ切断すると、蒸気が吹き出してきたのです。保護具を着用していたので大きな火傷には至りませんでしたが、本当に危ないところでした。また、安全帯のロープがバルブのリミッタースイッチという警報装置に引っかかって作動させてしまい、運転員さんが飛んできて「なにやっとんじゃ!」と怒られたこともあります。
既設設備内は狭いことが多く、配管も紛らわしいので、より慎重に確認を行うことが大切です。
プラント施工管理は回転物に注意
機械の設置が終わり、電気の接続が終われば電源を投入し、いよいよ試運転となります。これまでの努力と苦労が形になる、ワクワクする時です。
そんな試運転時にヒヤッとしたことがあります。電源を投入した瞬間、「ブゥゥゥウウウン」。スイッチを押さなければ動かないはずのモーターが動き出したのです。慌てて電源オフ。スイッチを介さずに直繋ぎになっていたことが原因でした。もし、誰かがモーターをいじっていたら……と考えると恐ろしいものです。
電源投入時には、機械に近寄らないよう徹底しましょう。
プラント施工管理は流体に注意!酸素配管は汚しちゃダメ
配管をやっていたら常識の範囲なのでしょうが、まだ若かった私は、酸素配管を養生もせずに運んでいました。配管内部にゴミなどが入らないように養生することは常識です。特に、酸素配管ではちょっとしたゴミから火災につながる危険性があります。
「何やってんだ!洗えー!」と怒られ、現場でウェスと洗浄液で配管掃除をすることに……。
プラント建設現場で配管工事に携わるときには、どんなものが通る配管なのか、どんな注意事項があるのか、よく確認しておくことが大切です。
プラント施工管理の情報の流れ
通常の建設工事だと、ゼネコンが元請けになることがほとんどでしょうが、多くのプラント建設工事では、エンジニアリング会社が元請けとなります。スーパーゼネコンでも一次下請会社として参加することになります。建設業の業種としては、機械器具設置工事業です。
客先の担当は、設計の担当と運転の担当がいたりします。客先の中での打ち合わせがうまくいっていないと、修正作業の可能性が高くなることに注意が必要です。
「こんな狭い場所じゃメンテナンスできないよ!」
「ここは台車を押して通るから、配管があると邪魔」
といった意見が、完成間際に出てくることもあります。設計の目だけではなく、運転員の目線でも工事を考えられているか、という意識も大切です。
また、こうした施工体制であるため、プラント建設現場では情報の流れが滞ることがあります。例えば、機械の配置が変わったという情報が建築に伝わらず、基礎型枠の位置が違う。配管貫通部に開口補強がない、下地材がある。といったことです。
コンクリート打設やボードを貼る前に気付いたからよかったものの、あまりに手直しが多いと工程にも影響が出てきます。手直しをしないために、変更などの情報をどうやって共有するかが大切です。
普段から打ち合わせの機会を設けることで、情報の流れを作ることが出来ます。
プラント施工管理の特殊工程
人間の体でいうと、血管となるのが配管です。扱うものによっては、溶接箇所のレントゲン検査(RT)や浸透探傷検査(PT)、焼鈍など特殊な工程が必要となります。この順序を抜かしてしまうと、手間のかかる修正作業をしなければなりません。
私もこの点で失敗したことがあります。PTやRTが指定された配管溶接部で、RTが終わって次を組んでしまった結果、後から切断取外し、再度PTを受けるという失敗です。「何回無駄なことさせるんだ!!」と怒られました。
プラント建設現場の施工管理では、どのような検査をしなければならないか、事前にしっかり確認しておくことが大切です。
プラント施工管理の工程遅れ
工程どおりに完工させることは、プラント建設工事でなくとも当然のことです。
ただし、プラント建設工事では工期遅れの責任が大きくなります。完工時期に合わせて、原料の受け入れを予定していたり、試運転の人員を手配していたりするためです。
予定していた工期が遅れると、それらが手配し直しとなり、損害が生じます。工期遅れによる損害が生じた場合、金額的な責任をとることが契約書に明記されていたりするため、工期に遅れそうなときには早めの連絡・相談を心がけましょう。
プラント施工管理は配管ラックなど、クリティカルパスに注意
次の工程に影響が出る箇所は、特に工期に注意する必要があります。
例えば、配管ラックが完成する時期といったものです。配管ラックが完成する時期に合わせて、機械工事や電気工事が入ってくるため、ここが遅れると全体が遅れる可能性があります。
「いつから配管ラック入れる?」といったことは、工程会議で度々確認するようにしましょう。
プラント施工管理は埋設物に注意
基礎工事のとっかかりである掘削作業でつまづく原因は、想定外の埋設物が出てきた時です。既存の敷地内での建設工事では、図面も残っていない埋設物が出てくることがあります。
私も杭打ち時に「杭が入らない」ことがありました。調べてみると、調査段階では分からなかった昔の地中構造物が埋まっていました。急遽、重機と人を増やして掘削しながらのはつり作業に切り替えです。
また、配管貫通部の穴あけ時、火災報知器の線を切ってしまうこともあります。「図面にはのってなかったのに……」 という理由は通らないかもしれません。事前に、「ここに貫通穴をあけるけど、なにもないでしょうか?」と、客先確認しておくことが大切です。
……以上、プラント建設工事における施工管理の注意点を紹介しました。私たちの生活を支えているプラント建設工事に携われるということは、大きなやりがいです。同時に、現場には想定外の事例など「産む苦しみ」があります。それらの苦労を乗り越えて、大きなものを作ることができるというのも、施工管理の仕事の魅力です。ご安全に!