CADの使い過ぎで「手書き図面」を書けない設計士、施工管理者の末路

CADの使い過ぎで「手書き図面」を書けない設計士、施工管理者の末路

CADの使い過ぎで「手書き図面」を書けない設計士、施工管理者の末路

CADの普及で、手書きで図面が書けない

図面の作成にはCADを使うのがごく普通になっていますが、なんでも偏っての使い過ぎはよくありません。

CADが普及しすぎて、「手書きで図面が書けない」「手書きで図面を書きたくない」という設計士や現場管理者が急増しています。

これって問題じゃないですか?


あなたはCAD派?手書き派?

設計図といっても、詳細設計図から現場レベルの施工図までありますが、今どき平面詳細図や立面図を手書きしている人は流石に少ないでしょう。このレベルの図面であれば、修正や作成の効率を考えても、CADで作成するべきものです。

問題となるのは、施工図や造作図など、現場レベルの図面です。CADでは作図できても、手書きになるとまるっきり書けない、そもそも手書きってどうすればいいんだっけ?などと、かなりひどいレベルの人は意外と多いです。設計士でも展開図を書けない人はたくさんいて、現場レベルの指示に四苦八苦しています。

私の感覚では、40代後半以上の年代はどちらというと手書き派で、40代前半より若い世代はCAD派。

今は住宅建築業界でドラフターなんていうものを見ることは、ほとんどありませんし、ドラフターは場所をとるし、重いし、本当に邪魔でした。最近は、どんどん手書きで図面を書く環境自体がなくなってきているのは確かです。

しかし、手書きで図面を書けないと、公私ともにさまざまな問題が生じてきます。

CADに慣れすぎたために侵すミス

では、CADでの図面作成に慣れすぎると、どんなミスが起きやすいのか?

作成している人は気が付かなくても、図面をチェックしている人がいるとしたら、間違いがいくつも出てくる場合があります。

寸法の自動作図機能に頼りすぎる

コンピューターは絶対的なものだ。そうと思い込んでしまっている人がいます。自動で作図するんだから、寸法だって正確なはずだと。

でも、これがCADの落とし穴です。

自動作図機能ばかりを頼りにしていると、実寸とは全く違う数字が表示されていることはよくあります。

チェックしている側からすると、なんで自分で気が付かないの?と不思議でしょうがないのですが、自分で検算せずに、まるっきりCADを信じて作成している人は、このようなミスが多いです。

線の消し忘れや消しすぎ

CADを使うと、簡単に線を引いたり消したりできます。この機能がCADで便利なわけですが、引いたり、消したりを繰り返しているうちに、消し忘れや消しすぎというミスも多くなります。

特に、込み入った図面の場合、線の上に線を引いていたりして、印刷して初めて「なんだこの線は?」ということがよく起こります。

一方、手書きの場合、自然と頭の中で整理する時間を多くとる傾向があるため、このようなミスは少なくなります。


手書き図面が書けないと転職も困る

もはや手書き図面を書く環境はないのでは?という意見もあるでしょう。

データでの受け渡し、修正の頻度において、CADで作成したほうが絶対に効率が良いのは言うまでもありません。

しかし、手書きで書けないと、転職時に困ることもあります。

例えば、住宅の施工管理者はCADを使えることはもちろん、手書きのスキルだって必要となります。設計士が作図した図面を、現場で大工さんに納まりを説明するときに、その場でダンボールの裏などに手書きで展開図を書くことはよくありますよね。

むしろ、大工さんにCADに精通している人は少なく、手書きで全部書くほうが得意です。その場の展開図についていけないと、施工管理者としてはスキルを甘く見られてしまう可能性もあります。

転職先で手書きのスキルがあるのと、ないのとでは、現場の職人さんからの扱いも変わってしまいますし、会社の中でのポジションにも影響が出てきます。

そもそも設計専門の「設計士」だとしたら、手書きが書けないとなれば、会社としてはちょっと「え!?」っていう感じにはなります。

よく大工さんが、「建築士の資格を持ってても、現場の施工図を書けねえじゃん」とぼやいているのを耳にしますが、もし住宅を依頼している施主さんが聞いたらびっくりする話ですよね。施主さんは、設計士さんは当然手書き図面を「サクサク」っと書くんだろうな、と勝手にイメージしていますから。

車の運転で言えば、マニュアル車対応の免許は持っているけど、オートマ車だけを運転してきたから、トラックのようなマニュアル車を運転できない人に似ています。いざ運転しようとしても、もう何年も経験がないため、坂道発進もできません。

CADと手書きの関係もこれと同じで、特に二級建築士の資格を持つ人に多いのですが、「手書きの図面となると全く対応できなくなる」という設計士、あるいは施工管理者の方は、ご自分のためにも、現場のためにも、もう少し手書きの図面について実践する努力をしてみてはいかがでしょうか。

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住宅建築業界を長く経験。管理職として営業から現場まで実務をこなしながら、建築的な資格と本当の現場知識はイコールではないと知る。人事部門を統括していたことにより、よい人材、悪い人材の目利きが磨かれた。住宅業界の意外な一面、おもしろ話を紹介していきたい。
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