前田道路の改良土偽装事件
先日、前田道路が「改良土の偽装」に加担していたことが発覚した。堺市発注の上下水道工事で架空の納品伝票を発行していたのだ。
施工業者は工事仕様書と異なる材料を埋め戻しに使っていながら、改良土を使ったことにしており、毎日新聞によると、伝票上で少なくとも約1万5000トンに及ぶという。
しかし、同じ業界の人間からすれば、「今さら何を言ってるんだ?」という感覚である。伝票偽造なんて日常茶飯事なのだ(※詳細はこちら)。
今回の前田道路の偽装事件を簡単に解説するとこうである。
堺市発注の上下水道工事では、掘って出てきた建設発生土を産業廃棄物として処理し、埋め戻す際には、新たに購入した改良土に入れ替える設計だった。
しかし、上下水道の工事を受注した中小企業は、前田道路と結託して偽造行為に手を染めた。
- マニフェスト偽造、廃材伝票偽造
建設発生土を処分していないのに処分したことにする。 - 納品伝票偽造
買ってもいない改良土を買ったことにする。
・・・つまり、現場では、掘った土を写真だけ撮って、実際にはそのまま埋め戻していたということだ。施工業者からすると、処分費用、改良土費用、運搬費用がかからず、その分丸儲けである。
しかも報道によると、前田道路は実際には2年以上、改良土を製造していなかったらしい。
前田道路の産業廃棄物許認可は?
こうした偽装事件は、税金をだまし取る詐欺行為と何ら変わりない。伝票上で1万5000トンと報道されているが、私は実際にはそんなもんではないと思う。
自分も同じ業界にいたので分かるが、繁忙期になると一人で1万5000トンの伝票偽造はそれなりの合材工場ならばやっているはず。まして改良土は使う量も多い。前田道路は1年の指名停止を受けているようだが、これからどんどん問題が明かるみに出てきたとき、1年で済むのかは疑問である。
マニフェスト偽造は、産業廃棄物の別の法律に引っかかる可能性があるため、 前田道路はかなりの危機的状況に追い込まれる可能性がある。なぜなら産業廃棄物の許認可が取り消しを受けた場合、廃材の受け入れが出来なくなってしまうからだ。
廃材を受け入れられないと、再生合材を作ることができず、同業他社から廃材を買わなければならなくなってしまう。利益率が異常に高い前田道路でも利益率が低迷し、かなりきつい状況に追い込まれるだろう。
前田道路以外の伝票偽造、マニフェスト偽造の対策は?
最近、前田道路の合材営業は顧客に対して「不正行為ができないシステムに変更するので、伝票偽造が絶対できなくなる」とアナウンスしているようだ。
そもそも「不正行為ができなくなる」とアナウンスする自体、業界外から見れば「何言ってんだ?」という感覚だろうが、不正直が当たり前の土木業界にとっては、かなり前進的な対応なのである。
利益を減らしてでも絶対に不正行為をやらない会社にしたい!――そういう前田道路の上層部の意思が私には感じられる。
今後、前田道路以外の各社は、伝票偽造、マニフェスト偽造に関して、どう対応していくのかが気になるところだ。