嫌な予感がする施工業者
これは、ある施工業者に入社して、身震いするほど戦慄した話である。
私は20代の頃、何を思ったかタウンワークで日給もそれなりに良い施工業者に、受かればラッキーと応募した。すると、その日のうちに内定が決まり、何ともブラック感が満載。
内定時に言われたのが、初日は遠い現場に行くので、朝6時半に置き場に来てほしいとのこと。
私は翌日から朝5時半に起床し、弁当を作ってから出勤することになった……。
あり得ないほど低姿勢でベンツに近寄る親方
恐怖の入社当日……。
まずは、朝礼。
「本日、社長からのありがたきお言葉と、新人紹介がある。」
私は名前を言って、会釈するだけですぐに終えた。人数が多いので、車に乗り合うメンバーを決めて、ぞろぞろと車に乗る。
私が乗ったのは、親方のハイエース。親方は、明らかに雰囲気からして、怖い人。オーラが半端じゃない。
現場に向かう途中でガソリンスタンドに寄ったのだが、普通の人が乗らないようなベンツがガソリンスタンドで待っていた。新人の私がハイエースにガソリンを入れていると、親方があり得ないほどの低姿勢でベンツに近寄る。
ベンツから出てきたのは、見るからに親方よりもずっと怖い人……。
ガソリンスタンドでガソリンを入れ終わり、車で親方を待っている時に、同じ車に乗っている先輩に教えられたのは、親方はあの怖い人の舎弟だから、気をつけろとのこと。気を付けろと言われても、どう気を付けろと?もう手汗は早朝からとんでもないことになっている。
見るからに怖い人(親方)と、もっと怖い人が5分ほど話した後、現場に向かうことになった。
親方はいろいろと話しかけてくれたが、自分は怖くて逃げたくて、無難な答えしか口から出てこない。すると、親方から「じゃ、○○君(私の名前)は今日から俺の舎弟な」と有難きお言葉までいただく始末。
逃げようとすると追いかけてくる。まさに動物の習性を自分は逆に使ってしまったのかもしれない。
大手ゼネコンの建設現場で一味違った恐怖
現場に着いたのは、8時少し前。
そこでまた朝礼。
現場でも、さらなる衝撃的な恐怖を味わった。
そこは大手ゼネコンの現場で、ある県警の寮を建てている現場だった。警察の寮を怖い人たちが建てているという、何とも皮肉な社会の現実に、20代前半で気づいてしまった自分……それはそれで、その後の人生のためには良かったのかもしれない。
「今日の工事内容は窓枠の防水施工だ。」
先輩にやり方を簡単に教えてもらい、窓枠の淵に防水用のペンキのようなものを刷毛で塗っていく。すごい匂いのする液体で、吸い続けたら県警に捕まるほうになってしまいそうだと思った。
作業自体は簡単なのだが、寮の建物なので窓はいっぱいある。どっかしらで、別工種の施工業者と同じところで施工しなければいけないこともあり、塗装屋と施工場所がかちあってしまう。
案の定、「塗装屋はドケヤ!後にしろ!」と言ってくる職人……その職人は見た目40代、しかもとんでもない筋肉マッスル。当時、20代前半の青年にとって、銃を突きつけられているくらいの恐怖。
「あー、ごめんなさい!」と後回しにして、違うところを片付けてから、塗装職人にドヤされた場所を施工した。
社会勉強を詰め込んだ建設現場
帰りの車でも恐怖だった。
現場が終わった後に親方にこんなことがありましたよ、とちょっとした話題で話したところ、「俺の舎弟になんてことしやがる!!!」と猛烈に怒り出した。
ハイエースの中は、とんでもない雰囲気になってしまい、後部座席を見ると、先輩さんが「あちゃー」という顔をしている。
その時、舎弟(私)は、とんでもないことを言ってしまったという後悔でいっぱいだったが、それ以降、何か争い事に繋がりそうなことがあっても、絶対に親方には報告しない人間へと成長した(ホウレンソウはほどほどに、ということだ)。
無事に置き場についたのは、夜の7時。
いろいろな社会勉強を1日に詰め込みすぎて、家に帰ってから寝付くまでの早さは凄かった。
※編集部注:当原稿はライター自身の体験談です。「施工の神様」は反社会的勢力と一切関係ございません。