海外でCIM・BIMより急速に普及している「建設SaaS(サース)」とは何だ!?

海外でCIM・BIMより急速に普及している「建設SaaS(サース)」とは何だ!?

海外の生産革命で大躍進する建設SaaS

米国では2013年頃から建設業の業務に特化した、いわゆる建設SaaS(サース)が数多く出て来ました。

SaaSとは、「Software as a Service」の略称で、インターネットを通じて利用するソフトウェアの形態。メールサービスのGmailや、ストレージサービスのDropboxなどが代表格で、要するにパソコンに何もインストールしなくても使えるソフトのことをSaaSと思って頂ければ大丈夫です。

用途が違うため単純な比較は出来ませんが、建設×ITの代名詞になっているCIMやBIMを遥かに上回る勢いで、このSaaSが海外の建設業界で広がっています。サービスを提供する側はベンチャー企業など若い会社が多く、米国では年間350億円以上もの投資が集まりIT産業の中でも非常に盛り上がりを見せているジャンルです。

では、なぜそこまで建設SaaSが盛り上がりを見せているのか。あくまでも私個人の考えですが、以下のような特徴があるからだと考えられます。

建設SaaSが躍進する理由

1. 導入コストが非常に低い

通常のソフトのような買い切りではなく、使用したぶんだけの月額課金のため、余分な費用を払わなくて良い。初期費用も0円が多く設備投資やメンテナンス費もないため、安価に導入することが可能です。

普段からSaaSを使わない人は月額課金を嫌がりますが、キャッシュフローに優しく、トータルで見ると費用対効果が非常に高くなります。

また、ベンチャーらしく画面デザインに力を入れているサービスが多く、普段アプリをあまり使わない人でも、簡単に使いこなすことができるため学習の時間も短くすみます。

2. サポートが手厚く効果を発揮しやすい

利用した分だけ課金ということは、サービス提供者側から見ると、使ってもらわないとビジネスが成り立たないモデルとなっています。

売って終わりの従来のソフトウェアと比較すると、繫ぎ止めるためのアップデートやサポートが頻繁に実施され、結果的に利用者側にも非常にメリットが生まれます。

利用者側が効果を発揮できることが、サービス提供者側の利益にもつながるため、一緒になって使い方を考えたり社内の展開の仕方を考えてくれる事業者が多く、買ったけど効果が出なかったとなる失敗ケースも非常に稀です。

3. データ中心の経営が可能となる

CIMやBIMは3次元データベースとも表現されることもありますが、ファイル単位で扱われるためデータが一元化されることはありません。

しかしSaaSはデータが一箇所に集まる仕組みのため、本質的な意味でのデータベースとして機能します。

各現場の生産情報が溜まっていくため、管理する側も簡単に閲覧でき、データを見て様々な判断をすることが出来るようになります。SaaSが海外で爆発的に普及している最大の要因の一つは、「データ=資源」という考え方がとても強く、情報にお金を払う文化があるためです。

では、メリットだらけのSaaSですが、具体的にどのようなものがあるのでしょうか。代表的なものをいくつか紹介したいと思います。

100万超のプロジェクトで使用!建設SaaS界のカリスマ「PlanGrid」

建設SaaS界のカリスマ「PlanGrid」

提供会社:PlanGrid, inc.
開始時期:2012年
概要:図面上に高機能な注釈を入れ情報共有できる次世代図面管理サービス
料金:月額39$~

最初に紹介するのは、米国における建設SaaSで最も知名度が高いと言われるPlanGridです。

図面への注釈やバージョン管理を中心に設計者や施工者のやりとりを楽にするサービスを提供しています。米国では絶対的な地位を築きつつありますが、図面アップロード時に日本語が文字化けしてしまったり、CM方式が盛んである米国受けするような機能が多く、残念ながら日本で使うにはまだ少し問題があります。

創業時は2人で始めた会社ですが、現時点で数百人を超える社員がいて急成長をしていたり、社外取締役にAutodeskの役員が入っていたりと、会社としても今後の動きに注目が集まる存在です。

現場の仕事を一元管理!パンチリストをデジタル化する建設SaaS「FIELD WIRE」

現場の仕事を一元管理できる建設SaaS「FIELD WIRE」

提供会社:Fieldwire, inc.
開始時期:2014年
概要:パンチリストで仕事を一元管理できる現場特化サービス
料金:月額29$~

FieldWireは施工管理に特化したサービスです。まだ5年経っていない新しいサービスですが、既に20万以上の工事現場で使われるなど急速な成長を遂げています。

FieldWireの特徴としては、前出のPlanGridと同じように図面管理もできる中で、検査やTodoなどのやるべきことを一元管理できるパンチリスト機能が充実しています。特に米国の建設業では昔からパンチリストを使って仕事を管理していることもあり、文化と相まって広まっているのではないでしょうか。

日本語対応もしているため国内の利用も問題なさそうですが、一部機能は米国の文化に沿っていることもあり、少しとっつきにくい印象はあるかもしれません。工具メーカーと協業してIoTソリューションを開発したりと、周辺領域にも進出しはじめており、どんな展開をしていくのか今後が楽しみなサービスでもあります。


これ一つで全て解決!超高機能の建設SaaS「PROCORE」

超高機能の建設SaaS「PROCORE」

提供会社:Procure Technologies, inc.
開始時期:2002年
概要:建設業向けの機能が全て揃うオールインワンサービス
料金:お問い合わせ

PROCOREは、恐らく世界で最も歴史のある建設SaaSです。

バージョンアップを繰り返している分、特徴が一言では説明できないぐらい、たくさんの機能を提供しています。その高機能ぶりは驚くものがあり、なんとOutlookやGmailのようなメーラー機能まで独自に実装しているぐらいです。

カスマイズ性にも富んでいる一方で、使用するためには提供会社との打ち合わせが必要であり、日本国内で使用するには少しハードルが高そうです。

元々はインターネットやメールが建設業にまだ普及していない2000年代前半に、インターネット回線を繋ぐ手伝いのついでにPROCOREも一緒に導入してもらう、という営業スタイルで普及させていったようです。

ちなみに会社の時価総額は1000億を超えており、建設×ITの会社としても世界最大の企業となっています。

スーパーゼネコンや行政も利用!唯一の国産SaaS「Photoruction」

唯一の国産SaaS「Photoruction」

提供会社:コンコアーズ株式会社
開始時期:2017年
概要:施工管理の業務全般に対応した国産サービス
料金:お問い合わせ

Photoructionは、唯一の国産サービス(※筆者の会社が提供するサービス)。

写真や図面の管理から、タスク管理、台帳などの書類作成、配筋検査機能など工事現場での業務全般に対応した機能を有するサービスです。改ざん検知に対応した電子黒板や、現場へ直接説明会を実施するサポートなど、国産ならではの痒い所に手が届いたサービス提供しているのが特徴です。

ゼネコンやハウスメーカーなど、もともと建設業に携わっていた人間が開発していることもあり、新しいサービスながら既存ソフトからの乗り換えが急速に進んでいます。人工知能や社内システムとの連携なども積極的に行なっているため、今後は活用することにより大幅な生産性向上が期待できるサービスとなっています。

SaaSが建設生産を変革する可能性

建設SaaSはプロジェクトの利益率と生産性を向上させる役割がある一方で、自社の情報が集まる建設生産のデータベースという見方も可能です。

また、一般的に他のシステムと簡単に繋げる仕組みが用意されているため、データを他のソフトと連携して活用することも出来ます。

生産データベースの構築と活用は、まさにCIM・BIMの考え方に似ているのではないでしょうか。そしてCIM・BIMよりも遥かに学習コストが低く、導入すれば勝手に情報が集まってくるような仕組みが出来ます。

まだ発展途上の部分もありますが今後、建設生産のやり方を大きく変革するサービスが出てきても不思議ではありません。試してダメなら辞めるということが出来るのもSaaSの魅力のひとつであるため、ぜひ新しいことに毛嫌いせず、建設SaaSの世界に飛び込んでみてはいかがでしょうか。

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良い記事ですね。

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1988年生まれ。2013年に芝浦工業大学大学院建設工学修士課程を修了し、株式会社竹中工務店に入社。大規模建築の現場監督に従事した後、建設現場で使うシステムの企画・開発およびBIM推進を行う。2016年3月に株式会社フォトラクションを設立。https://corp.photoruction.com/
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