コンクリート技士・コンクリート主任技士 試験対策2

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ポルトランドセメントの種類

日本の食料自給率は40%に満たないのに対して、日本のセメント自給率は99%を超えている。石灰石(セメント原料)に富む日本は、実はセメント大国であり、輸出もしているほどなのだ。

そんなセメントには以下の4種類がある。

  • ポルトランドセメント
  • 混合セメント
  • エコセメント
  • 特殊セメント

今回勉強するのは、セメントの中のシェア7.5割を占める「ポルトランドセメント」についてだ。

「ポルトランドセメント」もさらに12種類の分類されるが、これを全て覚えてほしい、とは言わない。

覚えるのは6種類でいい。なぜなら同じ名称のものが「通常形」と「低アルカリ形」に分類されるからだ。しかも名称は性質を表しているので、そんなに暗記が難しいものでもない。以下に表を示す。

ポルトランドセメントの規格値

左から順に、普通、早強、超早強、中庸熱、低熱、耐硫酸塩の6種類(それぞれ「標準型」と「低アルカリ形」 で12種類)。

ポルトランドセメントが使われる用途と、簡単な解説を加えると、こうなる。

  • 普通セメントは、ごく一般的に使われるセメント。
  • 早強セメントは、早く強度を出したい時、冬の工事などで使う。
  • 超早強セメントは、超っ早で強度が欲しい時。緊急工事など(現在は使われていない)。
  • 中庸熱セメントは、 ダムなど水和熱を抑えたいマスコンクリートなどに使われる。「中庸」とは偏りが少ないという意味で、グラフでも真ん中付近に位置している。
  • 低熱セメントも、マスコン・高流動・高強度など発熱を低く抑えたい時に使う。
  • 耐硫酸塩セメントは、下水や防波堤など、硫酸塩の浸食が懸念される所で使う。


ポルトランドセメントの比表面積

ここでセメントを知るために外せない2項目がある。それが「比表面積・粉末度」と「組成化合物」の2つだ。

なぜ、これらが重要か?

それはこの2項目がコンクリートの「強度発現」「水和熱」に大きく寄与しているからである。

まずは「比表面積」。

聞きなじみのない言葉だろうが、文字通り、セメントの表面積を表す。セメント粒子が大きいか小さいかを意味していて、数字が大きいほど細かい(小さい)。セメントの粉末度合いを表す単位が、比表面積である。

では「粉末度」とは何か?

粉末度とは、粒子が細かいセメント(比表面積が大きい)ほど、水に触れる面積が大きいことを指す。すなわち、反応する面積が多いため、早期に強度が発現するということになる。

つまり、「比表面積 大」=「強度発現 早い」ということだ。

ここで「ポルトランドセメント」の比表面積の数値も覚えてほしい。

大して難しくはない。覚えるのは以下の3つだけ。

「2500・3300・4000」

3300は、2500と4000の約半分(3250)なので、実質は2つでOKだ。

ポルトランドセメントの規格値


「組成化合物」の覚え方

次に「組成化合物」について。

前回解説したカルシウム(Ca)、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、鉄(F)。セメントはこれらを組み合わせた、以下の4つの組成から成り立っている。

  • C3S けい酸三カルシウム
  • C2S けい酸二カルシウム
  • C3A アルミン酸三カルシウム
  • C4AF 鉄アルミン四カルシウム

この4種類の組成化合物の割合によって、セメントの個性が決定付けられる。

聞きなれない言葉の羅列だからといって委縮しないでほしい。すべての化合物に「カルシウム」が入っていることは共通だし、記号と読み方にも法則性がある。

後ろから順に組成物を呼んでいるだけだ。

例えば、C3S

→C(カルシウム)+3(数字)+S(ケイ素)

→けい酸+三+カルシウム

もうひとつ、C4AF

→C(カルシウム)+4(数字)+A(アルミニウム)+F(鉄)

→鉄+アルミン+四+カルシウム

では、それぞれの組成化合物の役割を説明しよう。

まずは対になる2つの、C3SとC2S

  • C3S:けい酸三カルシウム(エーライトとも呼ぶ)
  • C2S:けい酸二カルシウム(ビーライトとも呼ぶ)

C3Sの量が多いと、早強性が高まる。

C2Sの量が多いと、ゆっくりと強くなる。

先ほど、比表面積が大きいほど、強度発現が早くなると説明した。しかし、比表面積で早強性は確保できるが、ゆっくり強くすることはできない。

具体的にいうと、早強・超早強は、比表面積とC3Sで早期強度を確保している。

それに対して、中庸熱・低熱は、C3Sを減らしつつ、C2Sを増やして水和熱の上昇を抑えている。

  • C3A:アルミン酸三カルシウム(アルミネートとも呼ぶ)

初期の水和反応速度が非常に早いので、その抑制のためにせっこうが入れられる。

まず水和初期にせっこうと反応して、エトリンガイトを生成。その後、コンクリート中のせっこうが減ってくると、生成されたエトリンガイトとC3Aが反応をしはじめ、モノサルフェートを生成する。

エトリンガイト:膨張性の析出物

モノサルフェート:粘性をもたせる作用をする水和生成物

  • C4AF:鉄アルミン酸四カルシウム(フェライトとも呼ぶ)

強度発現には寄与する特徴はない。

では、なぜこの組成化合物が入っているのかというと、セメントを生成する際に、焼成温度を下げられる効果があるからである。この成分のお陰で、焼成温度は1450℃に抑えられている。

以下に、各特性をまとめた表を示す。しっかりと理解してほしい。

組成化合物とその特性

以上、「比表面積」「組成化合物」の項目は理解できただろうか?

ここが理解できていると、今後のセメントに対する知識を深堀りする助けになる。

逆にこれを知らないと、これから出てくる項目に対してアレルギー反応が出るかも知れない。出てきた数値を丸暗記、なんてことにならないためにも、ぜひここは丁寧に進めてほしい!

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