「組成化合物」の覚え方
次に「組成化合物」について。
前回解説したカルシウム(Ca)、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、鉄(F)。セメントはこれらを組み合わせた、以下の4つの組成から成り立っている。
- C3S けい酸三カルシウム
- C2S けい酸二カルシウム
- C3A アルミン酸三カルシウム
- C4AF 鉄アルミン四カルシウム
この4種類の組成化合物の割合によって、セメントの個性が決定付けられる。
聞きなれない言葉の羅列だからといって委縮しないでほしい。すべての化合物に「カルシウム」が入っていることは共通だし、記号と読み方にも法則性がある。
後ろから順に組成物を呼んでいるだけだ。
例えば、C3S
→C(カルシウム)+3(数字)+S(ケイ素)
→けい酸+三+カルシウム
もうひとつ、C4AF
→C(カルシウム)+4(数字)+A(アルミニウム)+F(鉄)
→鉄+アルミン+四+カルシウム
では、それぞれの組成化合物の役割を説明しよう。
まずは対になる2つの、C3SとC2S
- C3S:けい酸三カルシウム(エーライトとも呼ぶ)
- C2S:けい酸二カルシウム(ビーライトとも呼ぶ)
C3Sの量が多いと、早強性が高まる。
C2Sの量が多いと、ゆっくりと強くなる。
先ほど、比表面積が大きいほど、強度発現が早くなると説明した。しかし、比表面積で早強性は確保できるが、ゆっくり強くすることはできない。
具体的にいうと、早強・超早強は、比表面積とC3Sで早期強度を確保している。
それに対して、中庸熱・低熱は、C3Sを減らしつつ、C2Sを増やして水和熱の上昇を抑えている。
- C3A:アルミン酸三カルシウム(アルミネートとも呼ぶ)
初期の水和反応速度が非常に早いので、その抑制のためにせっこうが入れられる。
まず水和初期にせっこうと反応して、エトリンガイトを生成。その後、コンクリート中のせっこうが減ってくると、生成されたエトリンガイトとC3Aが反応をしはじめ、モノサルフェートを生成する。
エトリンガイト:膨張性の析出物
モノサルフェート:粘性をもたせる作用をする水和生成物
- C4AF:鉄アルミン酸四カルシウム(フェライトとも呼ぶ)
強度発現には寄与する特徴はない。
では、なぜこの組成化合物が入っているのかというと、セメントを生成する際に、焼成温度を下げられる効果があるからである。この成分のお陰で、焼成温度は1450℃に抑えられている。
以下に、各特性をまとめた表を示す。しっかりと理解してほしい。

組成化合物とその特性
以上、「比表面積」「組成化合物」の項目は理解できただろうか?
ここが理解できていると、今後のセメントに対する知識を深堀りする助けになる。
逆にこれを知らないと、これから出てくる項目に対してアレルギー反応が出るかも知れない。出てきた数値を丸暗記、なんてことにならないためにも、ぜひここは丁寧に進めてほしい!