ゲリラ豪雨、洪水リスクを予測「T-Flood analyzer」
昨今のゲリラ豪雨に加え、今年はこれまでにない規模の台風が次々と襲来している。都心部では、洪水の危険も高まった。
しかし、そもそもどれくらいの時間で、どの程度の水が建物内に入ってくるのか、複雑な要素があり、予測することは難しい。
だが、 大成建設がそんな不安を解消できる画期的な評価・診断システムを開発した。浸水対策用シミュレーション「T-Flood Analyzer」だ。
被害状況をCIM/BIMデータで再現
まず、「T-flood Analyzer」では、水が建物のどの扉から流れ込んでくるのか、何時間でどこまで水没するのかを、建物の各室ごとにシミュレーションする。
例えば下図のように、1階、地下1階、地下2階のある建物であれば、CADの平面図を表示して、流入開始からの被害状況を時系列で表示する(水深が深くなるほど色が赤くなっていく)。
時間ごとに変わっていく各部屋の浸水を確認することが可能だ。
特に便利なのは、建物のBIMデータに解析結果を反映し、実際の室内映像のように浸水をシミュレーションできる機能。さまざまな角度から見ることができ、そのシミュレーション結果をベースに、防水扉や排水ポンプを仮想空間に配置すると、それらが稼働した時に、どれくらい被害が軽減できるのかも再度シミュレーションで確認できる。
浸水時の避難経路も算出「T-flood analyzer」
この「T-flood analyzer」は、2016年12月に開発した技術だったが、大成建設は地下の洪水対策にも着目し、今年になって改良を加えた。
追加したのは、浸水する範囲・スピードをシミュレートしながら、最適な避難経路を計算できる機能だ。
さらに、避難計画づくりのために、水が侵入してきた時に利用者がゆっくり歩く速度のパラメータを搭載。水深が深くくなるほど、人の歩行速度が遅くなるところまで忠実に再現し、リアリティのある予測を可能にした。
まずは水が溢れ出してから地下にある各部屋に浸水するまでの速度と範囲をシミュレート。結果と照らし合わせながら、部屋ごとに最適な避難経路を計算して表示する。
利用者の歩行速度のばらつきや、人が水をかき分けながらゆっくり歩いて避難する場合の退避時間もわかるようになったため、浸水が遅い居室の機能を、お年寄りや子供向けに割り当てたり、浸水が早い場所に止水板や防水扉を設けたり、いろいろな対策が検討できる。
もちろん、設計の段階でBIMを使って浸水をシミュレートし、水害に強い間取りに変更したり、ポンプ・止水製品を設置したりする使い方もできる。関係者間での浸水状況やリスク情報の共有に使い、データを見ながらの合意形成ツールとしても有効だ。
異常気象が続き、洪水対策はこれからが勝負。大成建設は現在も実験を繰り返し、精度の向上に取り組んでいる。