床が剥がしてあると、ジャッキセットも簡単

床が剥がしてあると、ジャッキセットも簡単

傾いた築古住宅を「安くリフォーム」する4つのポイント

築古住宅のリフォームがブーム

日本では近年、中古住宅市場が拡大傾向にあります。

色々な事情から「無料でも良いから処分したい」という、いわゆる0円物件から、高額な競売物件まで、色々な中古住宅が販売されています。

最近は、ボロボロの築古住宅を格安で購入して、DIYなどで安価にリフォームし、賃貸物件とする大家業も流行しています。そういったノウハウ本もよく見かけます。

一方、私が修復を手掛けている古民家は、ビンテージ・カーの世界のようなもので、希少性の高い住宅です。そのため、「そういう仕事ばかり追いかけていてはいけない時代なのかな?」と考え、築古住宅の修繕にも取り組み始めた次第です。

しかし、築古住宅には厄介な物件が実に多いのです・・・。


築古住宅は元から傾いている?

20年くらい前は、地盤のことを深く検討しないまま家を建て、家が傾くと「地盤が悪いから仕方ないよ」「造成業者が充分に転圧してなかったんだろうね」などと、責任回避する工務店が「普通」でした。

なので、築古住宅には沈下して傾いている家がよくあります。

ちなみに、今はこの言い分は許されません。新築の場合、通常は工務店側が地盤補償に加入します。これは、第三者機関による補償です。万が一、地盤沈下で家が傾いた場合でも、施工した工務店が倒産してても、補償会社が対応してくれるので、まず安心です。

こうした傾いてしまっている築古住宅を買い取り、修繕して賃貸に回す大家さんからの依頼も、私のもとに来るわけですが、物件の状態があまりにひどく、施工まで至らないケースもあります。

施工できない築古住宅

昨年11月、とある若い大家さんからご相談いただきました。その物件を見て、まず驚いたのは残置物の量です。「この部屋で病死でもしたのか?」と思うほど、大量に残されていました。布団は敷き放し。テーブルの上には、醤油やふりかけなどがそのまま置いてあり、生活感が残っていました。

築古住宅では、残置物が撤去されていない場合も多い(イメージ)

部屋の状況はさておき、まずは物件がどの程度傾いているかをレーザーポインターで計測してみました。

この物件は、基礎の立ちあがりが10cm程度と低く、外周からの湿気もひどい状態でした。

もし、沈下を直すためにジャッキを掛け始めて、土台が腐っている部分が出てきてしまうと、上腰工法というお寺や古民家を直すような、大規模な施工をしなければならなくなります。

すると、安価に直すことなど、とてもできなくなります。この若い大家さんは施工を見合わせることにしました。


倒壊の責任を負いたくなければ、プロに頼め

築古住宅のリフォームは、出来る範囲で「安く仕上げる」ことが重要です。さらに、こうした物件で大家業をされている方の多くは、いわゆる「通帳大家」では無く、簡単なリフォームくらいならご自分でできる方ばかりです。私より、はるかに器用な方もお見かけします。

それでも、私たちプロが手掛けているのは、「見た目だけきれいにする」素人のリフォームではなく、「構造から直す」という、そこに住む方たちが安全に生活するための必須工事です。

「再販なら丁寧に直しておかないと責任問題になるだろうけど、賃貸ならそこまでシビアに考えなくても…」との解釈もあるかと思います。斜めに傾いて建っている家でも、住むこと自体は問題ないかもしれません。

しかし、地震で倒れやすい家に入居させ、万が一倒壊した場合、誰が責任を取るのか考えてみてください。DIYによるリフォームではフォローできない範囲があるのではないでしょうか?

沈下修正工事を安く仕上げるためには?

それでも、「高い修繕費用は掛けられない」という大家さんもいらっしゃると思います。そこで、少しでも安く沈下修正工事を依頼するにはどうしたらいいのか。いくつかのポイントを解説していきます。

1.あらかじめ、床を撤去しておく

床下で這いながらの作業は効率が悪くたいへんです。リフォームで床の張り替えまで検討しているならば、あらかじめ床を撤去しておくことをおすすめします。

床タイルがそのままの物件。作業スペースが取れず非効率

2.家の周りの植木鉢や残置物を、できる限り撤去しておく

不要な残置物をそのままにしておくと、スムーズに作業に入ることができません。

3.基礎の立ちあがりが40cm前後あること

基礎の立ちあがりが一般的な仕様で40cm前後であれば、ジャッキをセットする手間も簡易に可能となります。

4.施工期間に余裕をもつ

特に、大量の資材を使う曳家工事の合間ですと、私たちとしては工具のやりくりが容易になります。

・・・上記の条件がそろえば、1階が20坪、2階が16坪程度の在来木軸構法、築20年~30年の住宅なら、最大沈下部分が15cm程度であれば、80万円~150万円で施工可能です(出張費別途)。

築古住宅のリフォームを考えている大家さんは、くれぐれも悪徳リフォーム業者にお気をつけください。

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曳家岡本の二代目。日本屈指の曳家職人。テレビ出演は「真相報道バンキシャ」「心ゆさぶれ先輩rock you」「ウェークアップぷらす」など多数。漫画化もされており、雑誌「週刊漫画Times」で連載中の「解体屋ゲン」にもセミレギュラーで実名登場。
自分では「日本一小心者な曳家」だと思っているが、ある建築家からは「蚤の心臓」と呼ばれている。しかし、自分が凄いのではなく、かつて昭和南海大地震や伊勢湾台風から復興するための技術として栄えた高知県(土佐派の曳家)の技術が自分の身体に残っているだけである。
東日本大震災の直後に千葉県浦安市対策本部の招聘されて上京。近年は全国の社寺・古民家修復を中心に手掛けている。
曳家岡本HP ⇒ http://hikiyaokamoto.com
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