築古住宅は元から傾いている?
20年くらい前は、地盤のことを深く検討しないまま家を建て、家が傾くと「地盤が悪いから仕方ないよ」「造成業者が充分に転圧してなかったんだろうね」などと、責任回避する工務店が「普通」でした。
なので、築古住宅には沈下して傾いている家がよくあります。
ちなみに、今はこの言い分は許されません。新築の場合、通常は工務店側が地盤補償に加入します。これは、第三者機関による補償です。万が一、地盤沈下で家が傾いた場合でも、施工した工務店が倒産してても、補償会社が対応してくれるので、まず安心です。
こうした傾いてしまっている築古住宅を買い取り、修繕して賃貸に回す大家さんからの依頼も、私のもとに来るわけですが、物件の状態があまりにひどく、施工まで至らないケースもあります。
施工できない築古住宅
昨年11月、とある若い大家さんからご相談いただきました。その物件を見て、まず驚いたのは残置物の量です。「この部屋で病死でもしたのか?」と思うほど、大量に残されていました。布団は敷き放し。テーブルの上には、醤油やふりかけなどがそのまま置いてあり、生活感が残っていました。
部屋の状況はさておき、まずは物件がどの程度傾いているかをレーザーポインターで計測してみました。
この物件は、基礎の立ちあがりが10cm程度と低く、外周からの湿気もひどい状態でした。
もし、沈下を直すためにジャッキを掛け始めて、土台が腐っている部分が出てきてしまうと、上腰工法というお寺や古民家を直すような、大規模な施工をしなければならなくなります。
すると、安価に直すことなど、とてもできなくなります。この若い大家さんは施工を見合わせることにしました。