外国人労働者の「在留カード」は現場入場に必須! なのに、誰も持って来ないのはナゼか?

在留カードの”原本”を確認してますか?

最近、私が従事する現場でも外国人労働者、特に外国人技能実習生が毎日各業種で入り乱れています。そのため、就業前の新規入場者教育の際、「在留カード」の確認業務にかなり時間を取られています。

昨年、北海道の建設工事現場で働いていた中国人労働者11人が不法残留などの疑いで逮捕され、46人が失踪したというニュースが全国に報道されました。

この事件で、元請業者の現場代理人は「『在留カード』の写しを確認していた」と主張しました。在留カードは偽造しにくいような加工がされてありますが、在留カードのコピーは偽造が容易なため、「コピーではNGだ」と有識者にバッシングされる事態に発展しました。

私も現場代理人業務が主なので、「在留カードの”原本”を確認できない外国人は現場就労禁止」と下請負業者との契約時に明記して、1次下請負業者にも理解していただき契約しました。

しかし、これで安心かと思いきや、実務はなかなか思うようにいかなかったんです。

誰一人、在留カードの原本を持ってない!

私は現在、公共工事中規模物件の改修工事の現場代理人です。工期は約1年。常時30~40人程度の作業員が現場に入っています。

このうち、現場に来る外国人労働者は、平均すると全職種にわたって全体の1/3程度。ただ、1週間連続で現場に来ることはないため、だいたい3日くらいで新規入場者に対して在留カードの原本を確認しています。

この際、先にも述べた通り、「事前に在留カードの原本を確認出来ない作業員は現場に入場出来ない」という旨を下請負業者に伝えていましたが、何と最初の3日間、現場に来た外国人全員が在留カードの原本を確認出来なかったんです。

契約通り、当然帰ってもらっていましたが、その後も同じことが続きました。仮設常用工、足場工、解体工…。みんな在留カードの原本を持ってないんです。外国人労働者は、原則として在留カードの常時携帯義務があるにも関わらずです。

彼らの雇用責任者に聞いてみても、返事は「仲介業者に任せているので分からない」のみ。恐らく、私の現場だけでなく、日本全国に同じ状況の現場があるのではないでしょうか?

なんでこの現場だけ外国人が働けないんだ!

1次下請負業者に問いただしても、「ゴメンナサイ、入替します」と言うだけで、毎日入替が続きました。が、1週間を超えたあたりで問題が発生しました。

忘れもしない、月曜日が祝日で3連休になる初日の土曜日。解体工事の3次下請業者の職長が「いい加減にしてくれ! 詳しいことは分からないが、仲介業者が問題ないと言っているのに、なんでこの現場だけ外国人が働けないんだ!」と怒鳴ってきたんです。

あまりに毎日外国人労働者が返されるので、私はこの3連休に増員して挽回しようとしていました。それなのに、これまた在留カードを所持していない外国人がどっさり。しかも、職長はこのメンバーで3連休作業を予定していたとのこと。

「仲介業者が問題ないと言ってるんだから作業させろ」と言われても、それを誰がどう判断するんでしょうか? 職長に聞いても、答えは返ってきませんでした。仲介業者も土曜日なので連絡が取れず。入国管理局に確認しようにも3連休。

困り果てた私は、外国人労働者を受け入れている他業者のつてを頼って対策を試みました。

ですが、これまたグレーゾーンのカタマリで、何とも理解しがたい仕組みになっていました。

「代理申請手続きをしてます」という魔法の言葉

相談した相手は、某自動車メーカーに勤務している外国人労働者Aさん。入国前に教育を受けてから来ているので、自身で入国管理局に手続きをしていました。

その際、Aさんは入国時に入国管理局から在留カードの常時携帯義務の説明を受けたそうです。

何で私の現場に来る外国人労働者は在留カードの原本を持っていないんだろう? そもそも仲介業者って何だ?

調べてようやくたどり着いたのは、「在留カードの代理申請手続き業務を行う業者」という存在でした。在留カードの更新には原則本人が行きますが、代理申請も認められています。代理申請業者たちは、更新の申請をした後、そのまま在留カードを預かりっぱなしだったんです。だから、私の現場に来る外国人労働者たちは在留カードを携帯していませんでした。

しかも、「代理申請手続きをしてます」と口頭で伝えるだけで、常時携帯義務もなくなり、原本の確認のしようがなくなる魔法の言葉も存在したのです。

入国管理局にも「就労の際に確認できないじゃん」と問い合わせたのですが、「返却するタイミングは代理申請業者さんの裁量にお任せしています。問題があった場合は行政指導もあるのでご安心ください」と言われただけでした。

それなら、在留カードって意味なくないですか? 国は「特定技能」などでまだまだ外国人労働者を増やそうとしているけど、本当に大丈夫ですか?

現場でどう対処するか?

一番の問題は、毎年更新される外国人技能実習生は、更新を代理申請業者に委託した場合、ほぼ1年間代理申請業者に預けっぱなしで在留カードの控えすら持っておらず、本人は「代理申請中です」としか答えられない。しかも、雇用責任者も代理申請業者に任せているので答えられない、という点です

また、代理申請業者および雇用責任者は、申請のみで誰でもなれます。実際に、17歳の4次下請負業者(と言っても応援を頼まれた1人親方)が、外国人労働者斡旋手続きで1人連れてきたことがありますが、「どうすればいいの? 何がダメなの?」ってレベルでした。こんなことが現場では絶え間なく続いています。

そこで私は、代理申請業者か仲介斡旋業者か分からないですが、就労しようとする作業員に対して在留カードの原本所持もしくは本人、雇用責任者、代理申請業者の3者連名で「いつから、いつまでの期間携帯しないのか。誰の責任で携帯義務がないという確認をしているのか」を確認し、捺印した書面が無いと現場で作業できないルールにしました。

皆さんの現場にも毎日外国人労働者が来場していると思いますが、どう対処していますか? コメント欄にアドバイスいただければ幸いです。

この記事のコメントを見る

この記事をSNSでシェア

こちらも合わせてどうぞ!
CADも現場監督も外国人が担う時代。 フィリピン人の戦力化に成功した岡田工業の秘訣とは?
「日本人は外国人を差別しすぎ!」海外進出するゼネコンの傲慢さとは?
BIMを活用したいけれど、どうすればいい? アウトソーシングや人材派遣で解決しよう
ベトナム人技能実習生の「戦力化」に成功 大東建託の秘訣とは?
前澤社長の「メガ施工会社」構想 スーパーゼネコンも買収したがるリアル建設
粗利率80%!小さな建設会社が「既得権益」に挑む“脅威的なビジネスモデル”とは?
名古屋の専門学校を卒業後、建築施工管理をメインに公共工事、住宅、た まにちょっとだけ土木に従事する40代。毎年1つ国家資格取得を心掛けつつ、若手育成を楽しんでます。
  • 施工の神様
  • 技術を知る
  • 外国人労働者の「在留カード」は現場入場に必須! なのに、誰も持って来ないのはナゼか?
モバイルバージョンを終了