甘すぎる台風養生は自殺行為。 二次災害を防ぐための仮排水計画、強風対策

今こそ台風養生を見直すべきタイミング

先月、超大型の台風10号が西日本を襲った。さらに今月には、関東では過去最強クラスの台風15号が首都圏を中心に甚大な被害を与えた。

ここ数年、毎年のように強烈な台風や豪雨が日本各地で猛威を振るっているが、法面の現場に携わる私はこうした災害が発生するたびに気が気でなくなる。

「災害は防ぎようがないもの」と言われてしまうとそれまでだが、私たちは災害を防止するための工事を行っている。

土砂災害を防ぐための工事で土砂災害が発生するという最悪の自体を防ぐために、今こそ「台風養生」を見直す必要があると感じている。

仮排水計画を怠ることは自殺行為

法面の現場が大きければ大きいほど、仮排水は綿密に行う必要がある。単に「切土部分にブルーシートを貼って、仮縦排水溝を設置すれば養生完了」なんていうのは、ひと昔前の時代の対策だ。

特に、既設の法枠が存在する場合、元々の排水経路から雨水が大量に施工切土に流れ込み、崩壊を起こす可能性が考えられる。台風などによる大量の降水量が予想される場合は尚更だ。

この場合、まずは施工計画の段階で排水箇所を徹底的に洗い出さなければならない。雨が降れば、どこから排水しているのか。どこへ流末があり、最終的にどこへ排水されているのかを確認する必要がある。

時には、民家からの生活排水が流れている現場もある。すると、生活排水と急傾斜地の排水路を別に設ける計画も必要になってくる。

法枠の水路に必要以上の流量が流れないかを確認し、工事中の仮排水計画を実施することが本当の意味での台風養生だ。

特に、法面工事では縦排水が重要だ。水が切土表面を流れることによって亀裂が発生し、そこから一気に崩壊する。横の排水が出来ていても、結局は縦の排水が重要となる。おろそかにしていると、現場の崩壊につながる。

当たり前と思うかもしれないが、私が見る限り、仮排水の計画が甘い現場は非常に多い。二次災害に繋がっていないのがラッキーな現場も存在する。

豪雨の発生回数が年々増える現代において、仮排水の計画を怠ることは自殺行為と言っていい。

強風が及ぼす影響を把握しているか?

雨だけでなく、風も安全管理上重視される管理項目だ。足場作業では説明の必要もなく、強風時の作業は行ってはならないというのは常識である。

しかし、台風などの強風に対しては、さらに構造物の力学的な条件も考慮する必要がある。

風が吹くと、現場で飛散する可能性のある道具類や現場事務所の養生などが重要視されてきた。だが、それと同時に土木現場の構造物が風による外力によりどのように変形するか、振動するか。風の力がどのように加わることで崩壊が起き、どのような危険が予想されるのかといったKY活動も重要となる。

構造物の設計上、風に対する安定計算は当然考慮されているが、施工管理側の私たちが風によって引き起こされる構造物への影響について考える機会は非常に少ない。

擁壁の施工の際、風による影響を考えたことがあるだろうか? 異常気象が頻繁に発生している今、飛来物が擁壁に激突した際の耐久性など、これまで以上に風を考慮しながら施工する必要がある。

また、施工箇所周辺の地盤対策もこれまで以上に慎重さが求められる。安定計算上の数値だけでなく、台風による影響を現場ごとに見極め、適切な対処を行う必要がある。あらかじめ台風の雨量を考慮した地盤調査や改良方法も必要になるかもしれない。

自然環境の変化に合わせた施工管理を

いずれにせよ、台風をはじめ頻発する自然災害によって、これまで建てられた構造物が崩壊している以上、今までと同じ対策というわけにはいかない。

自然環境が変化している今、自然災害に対する対策も同じように進歩していかなければならない。

そんな状況で私たち施工管理技士にできることは、これまでよりも具体的な仮排水計画の実行や構造物の安定計算の数値など、根拠を徹底的に示すことだ。

もっと言ってしまえば、コンサルタントと対等な立場で具体的な設計の話をできるレベルにならないといけないと感じている。

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