東洋・みらい・あおみJV 高知新港作業所現場代理人 岡本浩典氏にインタビュー
国土交通省四国地方整備局では現在、南海トラフ巨大地震による津波に備え、高知新港の防波堤工事を進めています。
そのうち、高知港三里地区防波堤(東第一)築造工事で現場代理人を務めるのが、東洋建設株式会社の岡本浩典さんです。
今回、岡本さんの土木技術者としてのキャリア、マリコン(海洋土木)の魅力などについて、お話を伺いました。
マリコン一筋24年、海・湾岸の土木現場での仕事とは

東洋・みらい・あおみJV 高知新港作業所 現場代理人 岡本浩典氏
施工の神様(以下、施工):土木の世界に入ったきっかけは?
岡本浩典(以下、岡本):もともと理数系が得意で、ものを作ったりするのも好きで、興味があったので、大学に進むときに、土木系の建設工学科を選びました。ゼミでは構造力学を勉強しました。
施工:東洋建設を選んだ理由は?
岡本:土木には、大きく分けると、陸の土木のゼネコンと、海の土木のマリコンがありますが、私の場合は、マリコンをやりたいという気持ちがありました。それで、マリコンを何社か受けて、東洋建設に入社しました。今年で24年目になります。
施工:これまでどんな現場を経験しましたか?
岡本:最初は、中国地方の現場で10年ぐらい仕事をしました。その後、四国に転勤になりました。今年で14年目ぐらいですね。その間、九州の現場も経験しています。その多くは、港湾現場での仕事でした。
台風急接近の中、汚濁防止膜を撤去
施工:印象に残っている仕事は?
岡本:最初の現場ですね。山口県防府市の港での浚渫の工事現場です。浚渫船の運用管理業務などを担当していましたが、当時は、上司から何か指示されても、どういう意味なのか分からないまま、動いている状態でした。
台風が来たので、汚濁防止膜を撤去するよう指示があったのですが、波が上がっているので、その作業は危ないんじゃないか、と当時の私は思っていたんです。膜が台風で流れてしまうと、一般の船舶がプロペラに巻き込むリスクがある、でも「どうしてもやれ」と言われました。今となっては、上司の指示の意味は、良くわかるのですが、当時はわからなかった。勉強になったという意味で、印象に残っています。
施工:イレギュラーな指示だった?
岡本:そうですね。台風が来たから、膜を撤去するというイレギュラーな指示だったので、良くわからないところがありましたね。
施工:国発注の現場が多かったですか?
岡本:そうですね。昔は市発注の仕事もありましたけれども。最近は民間発注の仕事が増えていますね。
施工:西日本各地の現場を転勤するのは、平気でしたか?
岡本:いろいろなところに行けるので、むしろ楽しかったですね。
施工:ご出身は?
岡本:高知です。平成17年からは、ずっと高知の現場をやっています。
施工:初めての現場代理人は?
岡本:小さな現場でしたけど、入社して4年目ぐらいです。1級土木施工管理技士の資格を取得後、すぐでした。
施工:現場代理人の仕事で心がけていることは?
岡本:発注者などとのコミュニケーションですね。
港湾の仕事ならでは。波のうねりで、1ヶ月間作業がストップ
施工:仕事で失敗したことは?
岡本:仕事の失敗ではありませんが、どうしようもなかったことはあります。国発注の案件で、高知県の室戸岬での防波堤の仕事だったのですが、海象条件があまり良くない現場だったんです。ケーソンを据え付けるため、大阪から船を引っ張って来たのですが、天気や海の条件が悪くて、なかなか業務ができないということがありました。1ヶ月ぐらい待ったのですが、結局、その時は据え付け業務ができませんでした。船は、その間、須崎の港でずっと待機していました。
港湾の仕事は、現場の天候や海の条件に左右されて、そういうことがあります。波のうねりは、なかなか読めないところがあります。うねりが大きいと、ケーソンを吊るすワイヤーが3メートルほど揺れますので。
施工:マリコンならではの大変さですか?
岡本:工期に間に合うように、作業を組み合わせながら、完成させるのは、やはり達成感があります。

防波堤での消波ブロック据付作業。見づらいですが、船の前方で、潜水服を着た作業員が指示を出しています。クレーン船と潜水士の息の合った見事な仕事ぶりです。
湾岸に欠かせない防波堤。工事で「粘り強い化」を
施工:今の現場はどうですか?
岡本:この現場でやっている防波堤工事は、当初は、高知新港入り口付近の波のうねりを抑え、船の出入りをしやすくする目的で始まったものですが、南海トラフ巨大地震による津波を低減するという役割も担っています。防波堤の「粘り強い化」が計画されています。
施工:防波堤によって、命が守られるということはあるのでしょうか?
岡本:どこの港だったか忘れましたが、防波堤により、数秒間津波の接近が遅れたことにより、命が助かったという話があります。防波堤で完全に波を防ぐのは、現実的ではないですが、何も備えがないよりは、ちゃんと防波堤を造っておくことによって、命が守られることは当然あると思います。
施工:マリコンの世界でi-Construction導入の可能性は?
岡本:部分的には可能だと思います。例えば、マリコンでは、海底の深さを測定し、海底面を図面に落としていく作業がありますが、今は技術が進んで、海底面の高さのデータを取って、画面上で海底の形を見られるようになっており、それを断面図にすることもできるようになっています。機械化施工は、昔からいろいろありますが、使えるところから使っていくということだと思っています。
ただ、その技術が使えるかどうかとか、波のうねりなどの施工環境の判断については、しばらくは現場経験豊富な施工管理技士がやらなければいけないでしょう。

工事現場の防波堤まで、船で向かうマリコンならではの光景
マリコンの魅力はスケールの大きさ。3000トンのケーソンを吊り上げる
施工:マリコンの魅力は?
岡本:港湾工事で使うケーソンは、3000トンほどの重量がありますが、これだけの重量物を据え付けることは、陸上の土木ではあり得ません。マリコンならではといえます。マリコンは、仕事のスケールの大きさ、ダイナミックさがマリコン・海洋土木の魅力ですかね。
施工:こういう現場や仕事をやってみたいというのはありますか?
岡本:個人的には、いろいろな仕事ができれば良いのかなと思っています。これまで防波堤工事などマリコンの世界で長く経験を積ませてもらったという思いがあるので、若い人間を育てていくのが、これからの私の仕事なのかなと考えています。一人ではなかなかできないところがあるので、その辺を手助けしていきたいですね。
以前、若い人間が現場代理人をやる際に、私も一緒に行って、発注者などとの接し方、話し方はこういう風にやるんだよ、ということを実際にやって見せた後、若い人間のコミュニケーションの取り方をチェックしたりしたことはあります。ただ、最終的には、経験を積んでもらうしかありません。若い人間に経験を積んでもらうため、できるだけチャンスを与えていきたいと思っています。
土木工事現場の取材で、船に乗って、海に出るのは初めての経験でした。海の現場では、周辺住民からのクレームはなさそうですが、波のうねりなどによって、工事が長期間ストップするリスクがあるというお話を聞いて、陸でも海でも現場代理人のお仕事は大変なんだな、という思いを強くしました。消波ブロックの据付作業を間近で見ましたが、あれだけの質量の物体が移動する様子は圧巻でした。岡本さんの言う「マリコンのダイナミックな魅力」を垣間見た気がします。
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地元建設会社から技術士を取得しスーパーゼネコンに転職した技術者です。
地元の頃、宮崎県出身の福嶋さんという所長さんに色々とご教授頂きました。もう70歳ぐらいで引退されていると思いますが。
そのせいか、東洋さんはマリコン3番手の割に偉そうな感じを醸し出す職員さんが少なく良い印象です。
東洋さんとは、どっかで一緒に仕事が出来たらいいなぁと思ってます。