工程どおりに進まなすぎ! 土木現場の執行力が低下中

1年という単位で遅れていく工期

今、私は規模が大きめの道路工事現場で、施工管理や工務業務、計画業務に従事している。派遣社員の立場である。元請のゼネコンは某有名建設会社。歴史もあり実績も豊富である。個人的には赴任する前まで、かなりレベルの高い人がたくさんいるイメージを持っていた。

赴任後も、技術力という点ではレベルがとても高いと感じているのだが、一方で執行する力というか、マネジメントの力がとても低レベルだと痛感している。

施工計画を立案し、工程を組み立てるまではいいのだが、その工程通りに間違いなく進まない。見事に計画工程からどんどん遅れていく。それも数週間とか一ヶ月というレベルではない。半年とか1年という単位で遅れていくのだ。道路の供用開始目標が世間にも公表されているのに、この有様である。

当初はこの夏頃に完成形で供用開始予定としていたのだが、昨年末に暫定供用開始予定と訂正された。しかし、現在はそれすらも危うくなりつつある。


無意識な期限無し=誰も期限を意識していない

現場事務所で上司や職員たちの会話を聞いていると、気になることがたくさんある。特に強く気になっているのが、「無意識な期限無し」ともいうべき、期限をまったく考慮しない行動だ。

たとえば道路工事の場合、擁壁やカルバートなどの構造物を2020年3月末までに終わらせ、盛土工事は2020年9月末までに完了させ、ついで排水工を2020年末までにやり・・・という具合に、工程を立てて期限を設定し、所内に周知を図り、徹底させるのが常だろう。

ところがこの現場では、その期限設定はあるのだが、周知されることもなければ徹底されることもないまま進んでいる。上で決めるのはいいのだが、上だけで共有され、職員や派遣社員の現場担当者まで周知が図れていないのだ。周知されていないから、現場担当は徹底しようもない。

しかし大きく遅れてくると、現場担当は上の主任技術者や監理技術者、あるいは現場代理人から叱責を受ける。なんでこんなに遅れるんだ!?と詰められる。

こんな風景が、これまで赴任したいろいろな現場や職場で繰り広げられてきた。今の現場でも同じ光景を何度も見ていて「またかよ」となるし、思わず笑い出しそうになってしまったこともある。

今の現場だけではなく、これまで赴任したいくつかの現場や職場でも同じことを実感している。どこも「期限を意識しない」ことが、面白いくらい共通していた。


発注側の執行力も低下中?

受注者側だけではない。発注者側も執行力が落ちているのでは?と思うことがあった。

今いる現場では、発注機関の技術者と委託を請けている建設コンサルタントがいるが、こちらも期限を意識していない。関係機関との調整がなかなか進まないのだ。というより、やろうとしてくれない。作業ヤードとして借地したいところがあるのに、動いてくれない。そのため、あるエリアの着工がどんどんずれ込んでいるのに・・・。材料も手配できず、担当者はほとほと困り果てている状況だ。

さらに、設計変更が生じたのに指示書をなかなか出してくれないのも、問題だ。指示書が出ないので工事にかかれない。工程計画を立てていて発注者からも承認してもらっているのに、指示書が無いばかりに、こちらもどんどんずれ込んでいる。

また、ある出先機関では適当に受注者や建設コンサルタントに指示を出し、その指示が間違っているのに不当に受注者や建設コンサルタントに噛み付く人が多かった。

PM業務やCM業務など事業監理系の業務が増加

ここ数年、事業監理系の業務が少しずつ増えている。国交省や自治体などからPM業務やCM業務が発注されているのだ。発注側の技術者不足が背景にあるのだろうが、執行が難しくなっている側面もあるのではないか。特にマネジメントや技術的問題の解決に際しては、専門家に入ってもらったほうがよいと考えているのかもしれない。

ところが、民間も執行が難しくなっている状況がそこかしこに散見されている。技術力が高いとか知識が豊富だという以前に、マネジメント力が不足していると思わざるを得ない場面がとても増えている。特に現場に身をおくと、それがよくわかる。実感しておられる技術者は多いのではないだろうか。

発注側の方々を見ていると、技術的な仕事やマネジメント的な仕事から手を引こうとしているフシが見受けられる。執行が難しくなっているからか、人手不足からなのか、それはわからない。ただ、これから今まで以上に、事業マネジメントや工事マネジメントのスキルが求められていくのではないだろうか。

ピックアップコメント

大手ゼネコンが年単位の工期遅れをだらしないだけで起こすとは思えない。元請職員のチームワークがない・だらしない事に起因する遅延は多々あるが下請けが圧迫される程度で解決する事が多い気がします。それだけ遅れると間接費だけでもとんでもない金額になるので会社も黙ってないでしょう。筆者さんの言ってる事はあってる部分も多いですけどね。ちょっと飛躍してるなぁと地方の話ですが、一昔前は工期延期はまかり成らん!と言う風潮があったが最近はそうでもなく、繰り越しも当たり前になって来ています。それと同士に発注者の事前協議や準備も疎かになり工事がスタート出来ずに工期延期のパターンが増えてます。もう少し危機感、責任感をもって貰いたい。

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大手建設会社に勤務する30代の建設技術者。 工事費1000億円超の現場で、計画・設計等を担当しています。
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