熱膨張率”以外”に、鋼製スペーサーを使うべき意外な理由

代表的な材料の熱膨張係数

以前、鉄製のスペーサー(PCスペーサー)を使用するのは、何か理由があるのか?

ということで、資料を作ったんです。

「熱膨張率が違うからクラックの入りが少ないですよ」

っていうのを表にしただけなんですが、役所はよく分かってくれたようです。

代表的な材料の熱膨張係数一覧

この表にあるように、鉄とポリエチレンの差が大きいですよね?

モルタル面にバキバキにクラックが入る理由はコレです。

「モルタルがポリエチレンに負けるわけない」っと思われるでしょうが、木の根にも負けるモルタルです。

ポリエチレンに勝てるわけがないんですよ(吹付のモルタルは薄いので特に)。

まぁ、経年で暑さ寒さを常に受けるわけですから。

材料の引張応力と膨張率

ではなぜ、鉄だと問題ないかと言いますと、熱膨張率がコンクリートとほぼ同じなんです。

だからラス網も相性が良いことがよく分かります。

材料の引張応力と膨張率一覧

品名 単位 引張強さ 品名 単位 熱膨張係数 備考
ポリエチレン kgf・㎜2 0.42~1.61 ポリエチレン ×10-6/K 180 高密度PE
kgf・㎜2 35~50 ×10-6/K 11.7
PCスペーサー kgf・㎜2 284~304 PCスペーサー ×10-6/K 11.7 引張強さはJIS G3522参照
コンクリート kgf・㎜2 発生強度1/10 コンクリート ×10-6/K 11.7 膨張率は鉄とほぼ同等

表にするとこんな感じです。

モルタルの中でポリエチレンスペーサーが熱膨張しているのがよく分かります。

モルタルが引張強さに弱いことはよく知られた周知の事実です。ポリエチレン製スペーサーがモルタル内部で膨張した際に、内部から押されるため簡単にパカッと割れるのがクラックです。

躯体などの重要構造物でポリエチレン製のスペーサーを使用しているところはまずありません。特に、熱の影響を受けるような場所では。数値的に見るとよく分かります。

鋼製スペーサーを使う真の理由

と言っても、私が一番鋼製スペーサーを使用する理由は、別にあるんです。

現場で余っても売れる!(笑)

ココです!

現場で余って持って帰ってきても、鉄屋に持っていけば微々たる金額ですが売れます(実際は他の鉄ゴミと一緒に)。

プラゴミはお金払わないと持っていってくれません。

この差はデカいです!

現場で余って持って帰ってお金に換えれるモノと、そうで無いモノ。

最近では、マイクロプラスチック問題もありますしね。

法面のモルタル吹付の品質も大事ですが、コストと環境も大事です!

現場では、小さなコストを大事に拾っていきたいですね!

※書類はダウンロード出来るように、弊社ホームページに貼っておきます。

※この記事は『新エンタの法面管理塾』の記事を再編集したものです。

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大手法面専門建設会社に就職後、32歳で独立。あまりの暇さに「新エンタの法面管理塾」というブログを開設し、法面のノウハウを公開しています。
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