「猫っぽカップルの気まま暮らしが叶う部屋」って?
デベロッパーの伊藤忠都市開発と新婚情報サービス『ゼクシィ』編集部の異色コラボが話題を呼んでいる。
この2社が共同で、「理想の新婚部屋」が、新築賃貸マンション「クレヴィアリグゼ門前仲町」(2020年2月竣工済、総戸数79戸)の一部住戸で実現したからだ。
最近では「友達夫婦」や「週末婚」など新婚生活のマインドも多様化しているが、両社が考案したのは「猫っぽカップルの気まま暮らしが叶う部屋」と「七夕カップルの愛ある家庭内週末婚が叶う部屋」。
ゼクシィとともに、デベロッパーとしては極めて野心的な取組みをした伊藤忠都市開発株式会社 総合開発本部 賃貸住宅事業部の見塩伸子さんに話を聞いた
デベロッパーの既成概念を打ち破る
――「理想の新婚部屋」をつくろうと思った経緯は?
見塩伸子さん 今、顧客のニーズは多様化しています。その中でも、とくに新生活を始める新婚夫婦の家庭内での過ごし方は夫婦ごとに大きく異なり、結婚観の変化から「友達夫婦」や「週末婚」など夫婦が求める生活のスタイルやマインドは様々です。
最近ではふたりで暮らす間取りから構成するコンパクトマンションが流行っています。ですが、デベロッパーとして開発の既成概念を破り、より新婚夫婦の願望にこたえる部屋を提案するために、結婚情報誌の「ゼクシィ」編集部さんにお声がけをしました。ちょうどゼクシィさんも式後の新婚ライフスタイル調査について取り組まれていたとのことで、今回のコラボに至った形です。
見塩伸子さん(伊藤忠都市開発株式会社 総合開発本部 賃貸住宅事業部)
――どのように新婚生活が変わってきている?
見塩さん 典型的な新婚像には、夫婦ふたりがいつも一緒にいるようなイメージがあると思います。しかし、ゼクシィさんいわく、世間が考えている以上に最近の新婚生活は変わってきているとのことでした。花嫁へのアンケートから新婚夫婦のライフスタイルを分析すると、大きく4つのタイプがあることが判明したんです。その4つのタイプごとに、理想の間取りを図面化し、人気投票(総数2,614票)を行った結果、1位と2位の2プランを新築賃貸マンションの一部住戸に採用し、このほど完成しました。
クレヴィアリグゼ門前仲町
「ボクは彼女とこんな感じで生活してみたい」
――設計での工夫は?
見塩さん 通常、マンションプランの会議の際は数字を積み重ねて検討するのですが、今回はゼクシィさんからいただいた夫婦のスタイルや熱い気持ちを企画に投影しています。「ボクは彼女とこんな感じで生活してみたい」だったり、「夫とこれが一緒だと喧嘩になるから分けて欲しい」などなど、プライベートでの経験を両社が共有したんです。普段、夫婦の話って職場ではお互いに照れて話さないけど、こういうチームでの会議だから「こんな場所があったら”ありがとう”とか素直に言えるかもしれないね」・・・というような踏み込んだ話もしましたね。
そして出来上がった「理想の新婚部屋」は、一般的な1LDKや2LDKと異なり、想定している夫婦にあった生活シーンを再現できるよう、空間の面白さをあえて一般化させずにつくることを大事にしました。そうしないと、普通のコンパクトマンションとの差がなくなるからです。
例えば、「猫っぽカップルの気まま暮らし」は、相手が見え隠れするオープンシェルフで囲まれた寝室、腰かけてちょっと会話したり本を読んだりに使える「小上がり」など、さりげなく相手の存在を感じられる仕掛けを随所に施しています。
「猫っぽカップルの気まま暮らし」の室内
他にも、並んで朝の身支度ができるふたつの洗面化粧台やふたり一緒の料理時間を盛り上げてくれる一段高く設けた「ステージキッチン」、仕事や勉強に没頭できて、かつケンカの後にはクールダウンもできる「おこもりDEN」や、時には一人を楽しむ約8.5帖のロフトなど、ふたりがお互いに目が届くという程よい距離感になっています。
また、「七夕カップルの愛ある家庭内週末婚」では、それぞれの相手に気兼ねなく過ごせるように、新婚なのに寝室はあえて分けています。各自専用の洗面台、収納、下足入も平等に設置、各自専用のロフトもあり、お互いの空間を、いつもは1LDKの部屋に帰るような感覚の構成にし、貴重なふたり同時の休日には、LDKのリビングベッドでゆったりできます。これなら趣味の道具を広げっぱなしにしていても、ケンカの種になりませんよ。
『七夕カップルの愛ある家庭内週末婚』が叶う部屋
今後はどことコラボする?
――苦労された点は?
見塩さん 「猫っぽカップルの気まま暮らし」の丸い飾り棚をご覧になったと思いますが、設計・施工ともに苦労しましたね。寝室は天井高をきちんと確保して、2階の寝室部分を居室扱いしました。そうすると、床や階段を耐火構造とする必要があり、木造の使用が難しく、最終的にはコンクリートで造りました。
ロフトも積極的に活用していけるスペースにしようと考えたのですが、東京都・江東区のロフトの考え方を調べていくと、「階段での昇降だとロフトと認めてくれない」などいろんな制約があったんです。最終的にはキャットウォークでつなげました。また、キッチンも丸みを帯びた構造としましたが、これも施工は大変で最終的に家具屋さんにお願いしました。
――反響は?
見塩さん 「猫っぽカップルの気まま暮らし」はモニター募集をし、総数168通の応募がありました。この4月から実際に住んでいただき、ブログ作成、取材などの対応もしていただいています。
――「理想の新婚部屋」は、今後も供給していく?
見塩さん 今回の2部屋はコンセプトに忠実なカタチで、空間をつくりました。今後は、この要素を一般的な空間にどう落とし込むかを考えた上で、これから供給するコンパクトマンションのなかに入れ込んでいきたいと思っています。
――今後も異業種とコラボする可能性は?
見塩さん ありえますよ。具体的にはお話しすることはできませんが、今後も異業種とのコラボは積極的に進めていきたいですね。