トンネル覆工コンクリートの自動打設システムを開発
鹿島建設は、岐阜工業株式会社、株式会社シンテックと共同で、トンネル覆工コンクリートの自動打設システムを開発した。
山岳トンネル工事における覆工コンクリート打設は、狭隘な作業空間でのコンクリート打ち込みやバイブレータを用いた人力による締固めなど、技能労働者の経験や技術に頼る作業が多い。作業環境も厳しいことから、鹿島は完全自動化できるシステムの開発を進めてきた。
同システムは、コンクリートポンプ車の圧送信号と配管の切り替えをリンクさせることで、打ち上げ高さを自動で調整しながら左右均等に全断面をコンクリート吹き上げ打設を行う。アジテータ車の入れ替え時以外は、人の手を全く介さない。省人化・省力化を図ることで、従来工法と同等のコストを実現するという。
新たな打設配管システムで、残コン処理や清掃が不要に
新たに開発されたのは、各打設口を一筆書きで接続する打設配管システム。最大の特長は、回転式の吹上打設口だ。打設時は吹上口が型枠表面からコンクリート内部へ突出しているが、打設が完了すると回転して型枠表面と同じ位置で蓋が閉まり、次の打設口への配管ルートを形成する仕組みだ。
打設配管システムの概要 / 鹿島建設株式会社（https://www.kajima.co.jp/news/press/202007/pdf/15c1-j.pdf）
これにより、打設中の残コンの回収や配管清掃が不要となる。さらには、ポンプ車でポンプを逆転、正転させることで、配管内の残コンを回収し、別の配管へ送るといった手法で残コンを減らすことも可能。
コンクリートは、同社開発の既製品を新たに改良した、締固めが不要なトンネル覆工用高流動コンクリートを使用する。従来、打設口の切り替えも含めた左右系統の切り替えに数十分かかっていたが、配管の分岐点に設置した高速配管切替装置により、左右系統の切り替えが打設口の切り替えを含めて約15秒で完了する。コンクリートの流動停止時間を短縮できるため、表面にできる流動停止の跡も防ぐことができる。
型枠表面にコンクリートの打ち上げ高さが確認できるセンサーを設置し、打設状況を見える化。さらに、ポンプ車と連動し、配管系統を自動で切り替え、左右の高低差を無くし均等に吹上打設を行う制御システムも開発した。詳細な打設計画をシステムに事前入力し、スタートボタンを押すだけで、自動で全断面が計画通りに打設される。打設履歴を記録できるため、改善分析にも活用することができる。鹿島は、2021年度の現場導入を目指している。