赤字になった民間工事の失敗事例
私は主に国の法面の公共工事に携わっていますが、たまに民間工事を請け負うこともあります。その中で気が付いたら、赤字になっていた民間工事がありました。
なぜその工事が赤字になってしまったのか、建設業に携わる方にお役立つものもあると思い、紹介させて頂きます。
海の潮で劣化した牡蠣工場の鉄製スラブ
まず、赤字になってしまった理由として、3つの要因が考えられます。
その1つ目の要因は、現場が海だった点です。この工事の施工内容は、牡蠣屋の工場の「鉄製スラブの下の柱補強工事」と聞いていました。しかし、実際に現場を見に行ってみると、海の潮のせいで柱を補強しても、鉄製スラブの方が朽ちて劣化している状態でした。
柱の補強工事と聞いており、柱をどうやって補強するかという事しか考えていなかったので、ものすごく頭を捻りました。「鉄製スラブを一旦撤去してやりかえれば良いだろ」と思う技術者もいるかもしれませんが、このスラブと柱の上には、牡蠣の搬出に使う非常に大きな機械が設置してあり、鉄製スラブを全て撤去できる状況ではありませんでした。
結局、頭を捻って出した施工方法は、柱を補強するのではなく、新しい柱を既存の柱の間に設置するというものでした。これなら鉄製スラブを新しく設置するときに、その柱を活かして設置することもできると考えました。
潮間なので柱設置工事が進まない
しかし、柱の設置にあたって一番の問題は、その場所が潮間だという事でした。作業できる時間は干潮のとき。干潮が始まる前後1時間を見ても、作業時間は1日5〜6時間が限界です。当然、1日に設置できる柱の数も少なくなります。
柱に使う鉄筋を、長い間、海にさらすわけにもいきません。それなら上で鉄筋を組んでおいて、牡蠣屋にもともとあったホイストを借りて、下におろしてすぐに枠を組んでしまった方が良いと考えました。
しかし、この工事で設置する予定だった柱の数は全部で9本、1日で組める柱1本分の鉄筋の数は作業員の数を考えても2本分が限界でした。なおかつ1日の作業時間が5〜6時間では、海の潮間で組める型枠の数は1日、1本分でした。この民間工事で儲けが出なかった最大要因は、潮間の時間のせいで、作業効率が伸びなかったことだと考えられます。